プロローグ
パンッ!!とスターターの渇いた音を合図にクラウチングの体勢からスタートする。
ぐんぐん速度を上げて競争相手たちを抜き去り、
少年は100メートルをあっという間に走りゴールのラインを通り過ぎた。
競技上の観客は沸き、少年の走りを誉め称える。
記録は前人未踏。
大会を制したこの日、少年、大伴快斗は高校最速の称号も手に入れた。
*
「大伴。お前に天城大学から推薦が来てるぞ」
陸上部の顧問からそう聞いたのは大会が終わってすぐ、七月の終わりのことだった。
大伴は思わず小踊りをしそうになる気持ちを抑え、職員室に早足で急いだ
スカウトの人間があの大会での俺の走り見たんだろう。と大伴は推測した。
前回の大会は市が主催するようなスケールの小さな大会だったが、
大伴の記録は全国に轟いていたからだ。
自分の存在を知らしめたと確信していた。
まぁ近いうちにスカウトは来るかと思っていたが、こんなに早く来るとは思わなかったが。
天城大学は日本有数のマンモス校である。
幼稚園から高校まで多数の付属学校を持ち、中でも大学は偏差値の高さもさることながら、
スポーツでも多くの有名人を輩出している。特に陸上のレベルの高さは際立っている。
そんな学校からの推薦だ。舞い上がらない方がおかしいだろう。
有頂天で職員室についた大伴は木造の扉をスライドさせ、
妙にコーヒー臭い職員室に入り、進路指導の教師の元に大股で歩く。
「先生!!推薦が来てるって聞いたんですけど!!」
「ああ、来ているよ。もう決定みたいなもんだ、おめでとう。だがなぁ……」
いい淀むような声。
なんだ?
せっかくの吉報なんだから一緒に喜んでくれてもいいじゃないか。と大伴は思う。
自分がこの大学にいけば来年の進学実績にスポーツの名門である大学の名前が載るのに、
この先生はなんで顔を曇らせているんだろう?
不信な顔を察知したのか、進路指導の教師はゆっくりと喋りだした。
「あのな、大伴。お前の進路は決まった、それはめでたいことだ。だが大学には高校の卒業資格を持つ人間がいく場所なんだ」
「し、知ってますよ。それぐらい」
「そ、そうか。じゃああのな、次のテストあるだろ。二学期の期末テストだ」
な、なぜ先生は俺から気まずそうに目を逸らすんだっ!?
なんか嫌な予感がする。
大伴は背中に嫌な汗が伝うのを感じる。
「お前はそのテストで全教科80点は取らないと、あー、その、なんだ……」
言い淀んだ教師は早口でボソッと
「……卒業できない」
「……はっ!?」
「待て待て!!いや、待ってください。卒業できない!?なんで!?」
「なんでって、大伴。お前成績悪いだろ……。定期テストはいつも赤点ギリギリか、ぶっちぎりの赤点のどっちか。はっきり言うと、お前はこれから一つでも80点以下を取ると留年だ」
「そんなぁ!!俺高校生で一番足速いんスよ!!どうにかならないんですか!!」
「勉強するんだ。地道に勉強すれば必ず結果が出る!!一時間でもいい、毎日続けろ!!」
「毎日一時間じゃ絶対間に合わねぇよ!!次のテストまで二週間ちょっとしかないんですよ!!」
「してもいないのに諦めるな!!二年生には全教科満点を出す女子もいるんだ。お前もやればできる!!」
「俺が全教科満点なんで取れるわけねぇだろぉが!!」
大伴の叫びが職員室に響き渡った。
そう彼は成績が、いや頭がスゴクスゴク悪かったのだ。
どうもこの作品を呼んでいただきありがとうございました
はじめに一言断っておくと
私は陸上未経験者ですので、色々矛盾が出てくるかもしれませんが
そこはご容赦くださいませ。
では




