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第9話 薬草探し

 薬草を探しに歩き出そうとしたら、倒したフォレストウルフをミネッサがじっと見つめていた。


「もったいない」


 そう呟くミネッサの肩にライアがぽんと手を置く。


「仕方ないわよ、今はポーターもいないし持って帰るのは無理よ」


「……うん」


 ポーターって確かに荷物持ちみたいな人のことだっけ?


「あの、このフォレストウルフって持って帰った方がいいんですか?」


「ええ、肉や皮なんかもお金になるからね。でも私たちだけじゃ運べないわよ」


「じゃあ、俺のアイテムボックスに入れて持って行きましょうか?」


「「ええっ!」」


 ライアだけでなく無口なミネッサまで声を上げて驚いていた。

 しまった、この反応。

 アイテムボックスもレアスキルなのか?


「キアラ……あなたアイテムボックスまで持ってるの?」


「えーと、はい。持っちゃってます」


 俺は目を泳がせながらそう答えた。


「すごいわね。鑑定だけでも珍しいのに、アイテムボックスまで持ってるなんて」


 これはちょっとまずいかも。

 初めて異世界人に会えたのが嬉しくて気が緩んでいた。

 レアスキル二つも持ってるなんて知れたら面倒な事になるかもしれない。


「これって、もしかしてかなり珍しいことなんでしょうか?」


「どちらか片方ならともかく両方持ってる人なんて初めて聞いたわよ」


「……このことって秘密にしてもらえませんか?」


「もちろんよ、他人のスキルの事をべらべら話すなんて冒険者失格だもの」


「うん、大丈夫。秘密は守る」


 良かった。二人とも、かなりいい人みたいだ。


「むしろそれはあまり人に言わない方がいいわよ」


「やっぱり、言ったらまずいですかね?」


 恐る恐る尋ねてみた。


「そうね。冒険者パーティから勧誘されたり、商会や貴族から声を掛けられたりするかもしれないわね」


「ええー!」


 そんな有名人みたいな扱いになるのか。

 それは嫌だな。


 俺は目立たず、美少女としてのんびり生きていきたいんだ。

 これからはスキルのことを軽々しく話さないように気を付けよう。

 特に……神具創造のことだけは絶対に秘密にしないと。


「じゃあ、入れちゃいます《収納》」


 すると、フォレストウルフが一瞬で消えた。


「すごい……本当に入ったわ」


「おお、便利」


 二人ともそう呟き、目を丸くしていた。


「あはは、これなら運ぶのも楽ですよね」


「え、ええ。そうね」


 それから俺たちはそのまま薬草探しを始めた。

 しばらく捜索していると、ミネッサが立ち止まった。


「あそこ」


 指をさした方向を見ると、アロエのような植物があった。


「たぶんこれが薬草よね。キアラ、一応鑑定してもらっていい?」


「はい――《鑑定》」


【薬草】

『傷薬。初級ポーションの材料』


「うん、間違いなくこれが薬草ですね」


 よく見ると周囲には同じ草がたくさん生えていた。


「うわぁ、いっぱい生えてますね」


「ここ群生地みたいね、これは大当たりよ」


 ライアが嬉しそうにニコッと笑った。


「うん、いっぱい持って帰る。大儲け」


 ミネッサはそう呟いて静かに頷いていた。


「ふふっ。まぁ、大儲けとまでは行かないけどそれなりの稼ぎにはなりそうね」


 その言葉に思わず反応してしまった。


 今の俺は一文無しだ。

 この先お金は絶対必要になる。

 せっかくだし自分の分も集めておこう。


「じゃあ採取しちゃいましょう」


 そうして、俺たちは手分けして薬草を採取した。

 これはお金、これはお金。


 採っても採っても薬草が生えているので、そんな風に思いながら次々と採取していった。すると、緑の薬草の中に白い花がぽつんと咲いているのが見えた。


「あれ? なんか違う花があるな」


 俺が指差すと、ライアとミネッサもそちらを見る。


「何か見つけたの?」


「いや、なんか白い花があるんですけど」


「……ああ、あれ? 綺麗だけど、普通の花じゃない?」


「ちょっと待ってください。鑑定してみます」


 白い花びらが、森の木漏れ日を受けて淡く輝いていた。

 普通の花にしては少しだけ違和感がある。

 そう思ったので花に近づき手をかざす。


「《鑑定》」


【月光草】

『希少な薬草。上級ポーションの材料』


「えっ、上級ポーション?」


 思わず声を上げた。

 なんか凄そうだけど、どのくらいすごいんだこれ?


「キアラ、どうしたの?」


「あのこれ、月光草っていう名前みたいなんですけど」


「月光草? それ上級ポーションの材料じゃない」


「ギルドに持って行けば一万ナールで買い取ってもらえる。キアラ、グッジョブ!」


 ライアの後ろからミネッサがひょこっと顔を出した。


「一万ナール?」


 ナールってのはこの世界の通貨なのかな?


「あの、それってどのくらいの価値なんでしょうか?」


「えっ? もしかしてお金知らないの?」


「あっ、はい。ずっと山奥で暮らしてたもので」


 異世界から来たとは言えないのでそんなふうに誤魔化してみた。


「そうなんだ、一万ナールあれば一週間は宿と食事に困らないわね」


 ライアは俺の話を信じたのか、それとも何か察したのかは分からない。

 それでも深く追及せず説明してくれた。

 物価がわからないから何とも言えないけど、前世の感覚だと数万円ってとこなのかな?


「えっ、これ一本で?」


 俺は月光草をまじまじと見つめた。

 ただの白い花にしか見えないのに、これが一週間分の生活費になるのか。


「じゃあ、これも採っておきますね」


「ええ、ついでに他にもないか探してみましょう」


 そうして周囲をくまなく探し回った結果、月光草をさらに二本見つけた。

 たくさんの薬草と一緒に、アイテムボックスに収納する。


「すごいわ、今回の採取は大成功ね」


「うん、大当たり」


「でも一番の収穫はキアラに出会えたことかもね」


「えっ?」


「手伝ってくれてありがとう、キアラ」


「キアラ、優秀」


「いえいえ。命を救って貰ったんですから、これくらいは当然ですよ」


「ふふっ、謙虚なのね。さて、じゃあ街に戻りましょうか」


「街!?」


 つい声が出てしまった。

 ようやく人のいる街に行けるんだ。

 異世界の街か、想像するだけでワクワクする。


「ちなみに街まではどのくらいかかるんでしょうか?」


「そうね、ここからだと四時間くらいかしら?」


「へっ?」


 四時間も歩くの?

 それを聞いて、俺はここが異世界なんだと心の底から実感した。

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