↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/22

第6話 初めてのサバイバル

 その後、解体するために石で小型のナイフを作った。

 そしてホーンラビットの首の付け根に小さく刃を入れる。


「うっ、ごめんね」


 前世で動画か何かで見た記憶を頼りに、なんとか血抜きだけは済ませる。


「さて、この後はどうするんだっけ?」


 解体も動画で見た気もするが、細かい手順までは思い出せない。


「もしかして、これも神具創造でできたりしないかな?」


 期待を胸にホーンラビットに手を向ける。


「解体してくれ、《神具創造》」


 しかし――。


『レベルが足りません』


「うん、ですよねー」


 そんなに都合よくは行かないか、地道にレベルを上げていくしかないな。

 仕方ないので自分でやってみることにした。


「えーと、まずは洗浄するんだっけ?」


 うろ覚えのまま川で軽く洗う。


「次は腹を開いて……だったよな?」


 恐る恐るナイフを入れる。


「うわ、グロッ」


 これ絶対モザイクが必要な奴だよ。

 動画で見た時は平気だったけど、実際やるとなると全然違う。

 思わず顔を背けそうになったが、ここでやめるわけにもいかない。

 とはいえ生暖かい感触が手に伝わり、思わず鳥肌が立った。


「む、無理かもしれない……」


 そう呟きながらも、食べるためだと自分に言い聞かせて作業を続けた。

 何とか内臓を取り出し、大きく息を吐く。


「後は皮を剥いで、食べられる部分を切り分けるんだったよな?」


 悪戦苦闘しながらもなんとか皮を剥ぎ、肉を切り分ける。


「はぁ、やっと出来た」


 そこでふと気が付いた。


「これ……どうやって食べるんだ?」


 焼くにしても煮るにしても火がないとどうしようもない。


「《収納》」


 俺はひとまず肉を木で作ったお皿に乗せ、アイテムボックスに収納した。この中って時間が止まるのかは分からないけど、その辺に放置するよりはマシだろう。


「火も神具創造で何とかならないかな?」


 ライターはさすがに無理だろうけど、マッチとかどうだ?

 そんなことを考えていたら、ふとあることを思いついた。


「ここって異世界だよな? 俺、魔法とか使えないのかな?」


 ステータスには書いてなかったけど、異世界人なら魔法くらい使えてもいいと思う。というか使えてください、お願いします。


 俺は立ち上がり、大きな岩に向かって手をかざす。

 そして目を閉じ、炎の球をイメージする。


「よし、来い! 《ファイアボール》」


 しーん。


「あれ?」


 やばい、めっちゃ恥ずかしいんだけど。 

 思わずきょろきょろと周囲を確認する。


「うん、誰にも見られてないな」

 

 でも、やっぱり俺って魔法は使えないのか?


「いや、もう少し試してみたい」


 そう思い、火だけじゃなく他の属性もイメージしてみる。

 何度か試したが、結果は変わらなかった。


「はぁ、これは本当に魔法の才能がないのかな……俺」


 がっくりと肩を落とす。

 だが、今は落ち込んでいる場合ではない。


「最後に一回試して駄目だったら他の方法を考えよう」


 一度息を吐き、深く集中する。

 巨大な火の玉ではなく、夜空で弾ける花火を思い浮かべる。


「《ファイア》」


 ――パチッ。


「えっ?」


 指先から小さな火花が飛んだ。


「出た? 今出たよな?」


 小さいけど、確かに火花がパチッって出た!

 もう一度試してみる。


 ――パチッ。

 今度も成功した。


「うぉー! やったぁー! 俺にも魔法が使えた」


 まぁ、小さいけど最初はこんなもんだろう。

 もっとしっかり練習すれば、そのうちファイアボールくらい撃てるようになるはずだ。……たぶん。


 ともあれ今は火を起こさないと。空を見ると、すでに日が傾き始めていた。


「急いだほうがいいな」


 枯れ枝を集めて焚火の準備をする。


「よし、じゃあ行くぞー。《ファイア》」


 ――パチッ。


「あれ? おかしい、火がつかない……」


 もう一度試してみる。

 しかし、何度試しても結果は同じだった。


「駄目だ、着かない……」


 ふむ、花火程度の火力じゃ焚火は無理か。


「着火剤のようなものでもあればいいんだけど、それから燃えやすそうなもの……あっ、枯草とかならいけるかも」


 そう思い、周囲から草を集める。

 青々とした草なので、このままでは燃えないだろう。


 俺は足元の草履を見る。草から草履が作れたんだ。

 だったら同じ草を乾燥させただけの枯草なら、もっと簡単に作れるはずだ。


「この草を枯草に変えるイメージで……《神具創造》」


 すると、思った通り枯草が出来ていた。


「よっしゃー! これで焚火ができるぞ」


 早速出来た枯草に火を着ける。

 

「《ファイア》」


 ――ボウ!


「おお、火がついた」


 枯草の先で、小さな炎が揺れる。

 思わず拳を握りしめ、天に突き上げた。


「やった……!」


 異世界に来て初めて、自分の力で火を起こせたのだ。


「何かが出来るようになるのって、こんなに嬉しいんだな」


 目の前で小さく揺れる炎、その温かさが妙に心地よかった。


「よし、じゃあさっきの肉を串に刺して焼いてみるか」


 俺はアイテムボックスからホーンラビットの肉を取り出し、木の串に刺して焚火のそばに立てかけた。


 しばらく待っていると、肉の焼ける香ばしい匂いが漂ってきた。

 じっと眺めていたらお腹が、ぐぅと鳴った。


「あっ……」


 思わずお腹を押さえた。

 何も食べずに数時間も森の中を歩き回ったんだ。そりゃお腹も空くよな。

 それにしても、初めて焼いたにしては意外と上手くいっている気がする。


「これ、結構うまそうじゃないか?」


 そして、数分後。


「そろそろいいかな?」


 俺は串を手に取り、肉にガブッとかぶりつく。


「あっつ! はふはふっ」


 焼きたての肉に慌てて息を吹きかけながら、噛みしめる。


「うん、うまい」


 いや、正直に言えば特別おいしいわけじゃない。

 臭みもなく、あっさりした鶏肉のような味なのだが。

 味付けもしていないから、かなり薄味だった。


 それでも――。

 空腹は最大の調味料とは、よく言ったものである。

 火を起こすために悪戦苦闘した苦労も含めて、この肉は十分うまいと思えた。


「……異世界生活、悪くないかもな」


 俺は焚き火を眺めながら、残った肉をゆっくりと食べた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。