第27話 女神はチートでした
「いせかいじん? それってなんですか?」
私の言葉を聞いても、シルファはよく分からなかったようだ。
まぁ、しょうがないよな。
そもそも、この世界に異世界って概念があるのかも分からないし。
「えっと、私はもともと、ここじゃない別の世界にいたんだよ」
「別の世界? 物語とかに出てくるようなお話でしょうか?」
「そんな感じだけど、そうじゃなくって。私は別の世界で死んで、女神さまにこの世界に転生させてもらったんだよ」
「転生ですか……たしか少し前に現れた勇者さまがそんなことを言ってたとか聞きましたけど」
そういえば、以前にもアリシアが転生させた勇者がいたんだった。
……一週間で死んだらしいけど。
シルファがその話を知ってるなら説明しやすいかも。
あっ、でも前世が男だったことは言わない方がいいだろうな。
うん、黙っていよう。
「そう。私もその勇者と同じで、別の世界から転生してきたんだよ」
「えっ、もしかしてキアラって勇者さまだったんですか?」
「うん、一応勇者に選ばれたみたいなんだよね」
「すごい! 私、物語に出てくる勇者さまに憧れて剣士になったんですよ」
おっ、もしかして勇者になりたかったの?
それなら、話を聞いてもらいやすいかもしれない。
ただ、憧れることと、実際に自分が勇者候補になることは別だ。
いきなり受け入れてもらえるとは限らないだろう。
「それでね、ステータスに書いてあった女神ティリスの加護っていうのは、勇者候補の証みたいなものなんだよ」
「勇者候補……私がですか?」
「実は、この世界には三人の勇者候補がいるんだよ。シルファはその一人みたい」
そう説明すると、シルファは考え込むようにうつむいた。
「えっと、やっぱり急にこんな話しても信じられないかな?」
「そう……ですね、もう少し詳しくお話を聞いてもいいですか?」
「うん、わかった」
私は、転生した経緯とティリスさまから託された使命を順番に説明した。
「つまり、勇者候補の三人を探し出して、魔王軍と戦う準備をするということですか?」
「そうだね。私は直接戦うというより、みんなをサポートするのが役目みたいだけど」
「なるほど、にわかには信じられませんが、お話は分かりました」
そうは言いながらも、シルファは半信半疑と言った様子だった。
だったら――。
「あっ、それからそこにいる麦わら帽子の彼女が女神アリシアだからね」
「「えっ!?」」
シルファだけでなく、なぜかアリシアまで驚いていた。
もしかして、言っちゃダメだったのかな?
「ちょっと、私の正体をそんなあっさりばらさないで欲しいんだけど」
「あれ? 勇者候補にもバレちゃダメなの?」
「まぁ、勇者候補なら別にいいんだけど、もうちょっと紹介の仕方ってものがあるでしょうに。もっとこう、敬意を払ってもらわないと」
いや、知らんがな。
私の中にアリシアに対する敬意なんて欠片も残ってないよ。
「あの……今の話は本当なんですか?」
シルファが私とアリシアを交互に見て、恐る恐る口を開いた。
「ふふっ、そうなのよ。突然魔王軍と戦えなんて言われても不安よね。でも大丈夫! あなたたちにはこの女神アリシアがついてるわ」
そんなシルファを見てアリシアが憎たらしい笑みを浮かべて胸を張った。
ものすごいドヤ顔で言ってるけど、信用していいんだろうか?
そもそもこいつって戦えるのか? たしかティリスさまが女神としての能力を一部開放するとか言ってたけど、どんな能力なんだ?
「なぁ、アリシア。一つ聞きたいんだけど、お前って戦えるの?」
「はぁ? 私は女神よ、人を癒すことはできるけど、戦ったりなんてするわけないじゃない!」
言い切りやがったよ。
あれ? でも今、人を癒せるって言ったよな?
つまりヒーラーなのか?
そういえばこいつのステータスも見てなかったな。
一応見てみるか。
「《鑑定》」
『閲覧不可』
しかし、そんな文字が表示された。
「えっ、なんで見れないんだ?」
「なに? もしかして鑑定したの?」
「うん、でも閲覧不可ってでたんだけど……」
「そりゃそうでしょ。レベル差がありすぎるのよ。しょうがないわね。ほら、あなたも見ていいわよ。《ステータス》」
アリシアはステータスを開き、シルファにも見るように促した。
「あっ、はい。では失礼します」
シルファと二人でステータスを覗き込む。
ふむ、女神のステータスか、どんなもんなんだろう?
【名前】アリシア
【種族】女神
【年齢】不明
【レベル】130
【ユニークスキル】神域展開Lv6
【スキル】神威Lv4 / 祝福Lv6 / 神託Lv6 / 牧畜Lv4
【魔法】天聖魔法Lv6
【状態】正常
【加護】女神ティリスの加護
「へっ? レベル130?」
私はリバークラブと必死に戦って、ようやくレベル7になったのに、この差はなんなの? ちょっとチートすぎないか?
それにスキルもなんだか凄そうなのが並んでる。
神域とか神威とか、やっぱりこいつ本当に女神なんだな。
……ん?
「なぁ、牧畜ってなに?」
「ああ、それは牧場で働いてるうちに覚えたスキルよ」
なんで女神がそんなスキル覚えてるんだよ。
それにしても、レベル4になるまで働いてたのか。
ある意味凄いな。
「ほ、本当に女神さまなんですね……」
ステータスを見ながら、シルファがプルプルと震えていた。
「シルファ? どうしたの?」
「キアラはなんでそんなに落ち着いてるんですか! 女神さまが目の前にいるんですよ」
シルファが珍しく取り乱していた。
アリシアってこの世界ではそんなに凄い女神なのか?
「まあまあ、シルファ。一旦落ち着こうか? アリシア、牛乳を三人分もらっていいかな?」
牛乳を飲めば、少しは気持ちが落ち着くはずだ。
……まぁ、私もここの牛乳が飲みたいだけなんだけど。
後で何本か買っておこうかな?
「ええ、いいわよ」
アリシアが三つのコップに牛乳を注いだ。
それから私にコップを差し出し、にっこりと笑った。
「はい、二百ナールね」
「お金取るんだ……」
「だってこれ売り物だもん」
余りがなかったので、商品をコップに注いだらしい。
「ってか、その牛乳一本で二百ナールだよな? ってことは私が三人分払うの?」
「ごちになりまーす」
「あっ、すみません。いただきます」
シルファまで……。
まぁ、そのやり取りを見てちょっと落ち着いたみたいだからいいか。
私はアイテムボックスからお金を取り出し、アリシアに渡した。
ふと見ると、牛乳の瓶にはまだ半分ほど残っていた。
「じゃあ、残りももらっていくね。《収納》」
「毎度ありー!」
アリシアはとてもいい笑顔だった。




