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第23話 依頼完了と討伐依頼

 その後、私はアリシアと一緒に牛舎を掃除したり、牛に餌をあげたりして過ごした。そして、夕方もう一度乳しぼりをした。


 再び余った牛乳をチーズに加工してあげると、おじいさんは大喜びだった。

 昼に来た商人が、チーズとバターを高く買ってくれたらしい。

 依頼はここまでなので、サインを貰おうと依頼書を手渡す。

 すると、おじいさんは快くサインしてくれた。


「今日は本当に助かったよ、ありがとうねぇ。追加報酬として千五百ナール上乗せしておくよ」


「うわぁ、ありがとうございます。すごく嬉しいです」


 ってことは今回の報酬は合計六千ナールだ。

 本当にありがたい。


「じゃあ出口まで送って行くわね」

 牛に与えた祝福はあと数日で切れるので、彼女はそれまでこの牧場で働くそうだ。私はその間に、レベル上げをしながら勇者候補を探さなくてはならない。


「王都へ行くのはもう少し先でも大丈夫なんだよな?」


「そうね、今は前線でイオニアス帝国やマルニア王国が魔王軍を食い止めているから、まだ時間に余裕はあるはずよ」


「いお……にあす?」


「イオニアス帝国よ、大陸最大の軍事国家だから簡単に落とされたりはしないわよ」


「なるほど……でもそれって逆にその国を落とされたらかなりまずいってことだよな?」


「まぁ、そうだけど。大丈夫よ、あの国は本当に強いから」


 うーん、なんだかフラグっぽいなそれ。

 少し不安になってきた。

 スローライフが実現する前に世界が滅んだらシャレにならない。

 明日から頑張ってレベル上げしよう。


「じゃあここまででいいよ」


 入り口に到着したのでアリシアにそう告げた。


「ええ、一週間もしたら私も冒険者ギルドに行くから」


「わかった、私もそれまでには勇者候補見つけとくよ」


 私がそういうと、アリシアはニヤッと笑った。


「ふふっ、やっぱり『私』っていう方が可愛いわね。キアラちゃんって呼んだ方がいいかしら?」


「うるさい。普通にキアラでいいんだよ。じゃあな!」


「はーい、またねー。キアラちゃーん!」


 こうして私は、飛び跳ねながら手を振るアリシアと別れギルドに向かった。

 ちなみに、キアラちゃんと呼ばれるのは、実はちょっとだけ嬉しかった。

 いや、絶対口には出さないけどね。


 ◇ ◇ ◇


 夕日に染まった大通りをしばらく歩き、ギルドに到着した。

 扉を開けて中を覗き込む。

 どうやら、四花の輝石のみんなはまだ戻ってないようだ。


 いや、戻ってからどこかへ出かけた可能性もあるけど、とにかくギルド内に姿はなかった。それでも数人の冒険者が依頼の報告をしたり、テーブル席で打ち合わせをしたりしている。


 そうだ。今ここにいる人の中に、勇者候補がいるかもしれない。

 そう思った私は、ギルド内にいた数人の冒険者たちを鑑定してみた。

 しかし、残念ながら女神ティリスの加護を持ったものはいなかった。


「まぁ、そんなすぐに見つかるはずもないか。まずは私も依頼の報告をしに行こう」


 ひとまず勇者候補探しを切り上げ、受付のエルナの元へ向かった。


「エルナさん、依頼完了しました」


「あら、キアラさん。お疲れ様です。はい、サインも間違いなく。では報酬をご用意しますので少しお待ちください」


「はい、お願いします」


 受付の前で待っていると、ギルドの扉が開く音が聞こえた。

 入ってきたのは、短い金髪の可愛らしい少女。

 宿屋の娘である、シルファだ。


「あれ? シルファさん。どうしたんですか?」


「あっ、キアラさん。こんにちは」


 そういえばシルファも冒険者だったな。


「シルファさんもなにか依頼を受けてたんですか?」


「いえ、リバークラブの討伐依頼を受けたんですけど。ポーターを探してもらおうと思って来たんですよ」


 リバークラブ?

 名前からして蟹の魔物なんだろうか?


「あの、それってどんな魔物なんですか?」


「えっとですね――」


 詳しく聞いてみると、リバークラブとはその名のとおり蟹の魔物らしい。

 体長は普通の蟹より少し大きい程度だが、百匹近い群れで行動するそうだ。


 動きも素早く、大きなハサミで攻撃してくる厄介な魔物らしい。

 しかも食用で、とてもおいしいそうだ。


 ふむ、百匹の蟹か。

 私は、ふと思った。

 それって経験値稼ぎになるのでは?


 小さい蟹くらいなら私でも勝てるかもしれないし、初めての討伐依頼にはちょうどいいんじゃないか?


「それってシルファさん一人で討伐するんですか?」


「ええ、リバークラブ百匹くらいなら私一人で倒せますから。ただやっぱり運んでくれる人がいた方がいいかな、と思ってきたんです」


 なるほど、シルファ一人でも倒せるのか。

 だったら私でいけるんじゃないか?

 根拠もなくそう考えた私は、勢いよくシルファの両肩を掴んだ。


「あの、シルファさん。私をポーターとして連れて行ってもらえませんか?」


「えっ?」


 シルファは驚いたように目を丸くした。


「キアラさんがですか? でも、リバークラブの討伐ですよ?」


「うん。ちょうどレベル上げをしたいと思ってたんですよ」


「そうなんですね……。いやでも、リバークラブは数が多いですし、ハサミも結構危ないんですよ?」


 シルファは困ったような顔で、私を見つめた。

 私を心配してくれてるんだろうけど、ここで引くわけにはいかない。

 王都に向かう前に出来れば私自身がレベル10以上にはなっておきたい。

 だからこの依頼はどうしても受けたいのだ。


 できればアイテムボックスのことはあまり人に知られたくないんだけど、今回は仕方ない。


 シルファは優しい子だし、信用していいだろう。

 私はシルファの耳元でこっそりと囁く。


「あの、実は私、アイテムボックス持ってるんです」


「ええっ、本当なんですか?」


「はい、なので倒したリバークラブ全部持って帰れます」


「でも、危険ですよ?」


「大丈夫です、危なくなったら逃げますから!」


「うーん……。わかりました。それじゃあ、一緒に行きましょうか」


「ありがとう! じゃあ早速行きましょう」


「いえ、行くのは明日の朝ですよ」


「あっ、そうなんだ!?」


 まぁ、確かにもう日も暮れてるもんね。

 勢いで参加させてもらったけど、さすがに今から出発するのは無理か。

 その後、ポーターとしてシルファに同行する手続きをエルナさんにお願いした。


 よし、これで討伐依頼に行けるんだ。

 待ってろよ、リバークラブ。

 経験値も蟹も、まとめていただいてやる!

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