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第21話 霊神人

 ティリスの姿が消えた後も、しばらくは呆然としていた。

 しかし、俺が勇者っていったい何の冗談だ?


 それに勇者候補の一人とはもう出会ってるらしいけど、後の二人はどこにいるのかすらわからない。


 そもそも俺が見た限りでは、この街は平和だ。

 本当に魔王軍が攻めて来てるのか?


「なぁ、アリシア?」


 アリシアは書類を手にしたまま、その場にへたり込んでいた。

 俺はそんな彼女に声を掛けた。


「えっ、ああ、どうしたの?」


「この世界って、本当に魔王軍が攻めて来てるのか?」


「そうね、この国は大陸の東の果てだから今は大丈夫だけど。西の方ではいくつかの国がすでに滅んでるわね」


 そういうことか、だから一見平和に見えたのか。

 つまり、平和なスローライフを送りたければ、魔王軍を何とかしなきゃいけないってことなんだな。


 それで……どうすればいいんだ?

 何から手をつければいいのか、まったくわからん。


「えっと、ティリスさまが王都に行けって言ってたけど、すぐに向かった方がいいのかな?」


「いいえ、準備ができたらって言ってたでしょ。だから、まずは準備をしなきゃ。それに勇者候補も探さないとね」


「それなんだけど、どうやって探せばいいんだ?」


「あなた鑑定持ってるでしょ? それを使って一人ずつステータスを見ていくしかないわね」


 そういえば加護を与えたとか言ってたな。

 なら、ステータスを見れば何か分かるかもしれないか。

 試しに、自分のステータスを確認してみることにした。


「《ステータス》」


【名前】キアラ

【種族】霊神人

【年齢】16歳

【職業】錬成師

【レベル】2

【ユニークスキル】神具創造Lv2

【付属スキル】鑑定Lv2 / アイテムボックスLv2

【スキル】錬金術Lv1 / 錬成Lv1

【魔法】火魔法Lv1

【状態】正常

【加護】女神ティリスの加護


「あれ? 神具創造がレベル2になってる。それに加護も付いてる」


 しかも鑑定とアイテムボックスも、レベルが2になってるじゃないか。

 これってセットだから同時にレベルアップしていくのかな?

 しかし、なんでレベル上がったんだろ?

 チーズ作ったからか?

 ……うーん、分からん。


「アリシア、これって……ん?」


 いつの間にかアリシアが俺の後ろに立ち、ステータスを覗き込み固まっていた。


「どうかしたか?」


「あなた……なんで霊神人になってるの?」


 アリシアは震える指で、ステータスの種族欄を指し示した。


「ああ、そうだ。それも聞きたかったんだよ。霊神人ってなんなんだ?」


「えっ、なんで? これも私のミスなの? でもちゃんと手順通り作ったのに……」


 アリシアはその後も、ブツブツと何かを呟いていた。


「作ったって。もしかしてだけど、俺の体ってアリシアが作ったの?」


「えっ、そうね」


「ちなみにどうやって作ったか聞いてもいい?」


 このポンコツ女神のことだ、なんだか嫌な予感がする。


「えっと、神界のマナをこうやってコネコネしてオドに変換して、それをなんやかんやして作ったのよ」


 アリシアは両手で何かをこねたり、叩きつけるような動作をした。


「なんやかんやってなんだよ? そんな適当な作り方でいいの? 俺の体大丈夫なのか?」


 ものすごく不安になってきた。欠陥とかないよな?

 思わず顔や体をペタペタと触って確かめる。

 うん、今のところ特におかしなところはない。


「大丈夫よ……たぶん」


「今、たぶんって言った?」


「そんなことより、今重要なのはあなたが霊神人になったってことなのよ」


「そんなことってなんだよ、めちゃくちゃ重要なことだろうが」


 この女神、人の体をなんだと思ってるんだ。

 とはいえ、霊神人も気になるのは確かだ。

 ひとまず先に聞いておくか。


「それで、霊神人ってのはなんなんだよ」


「一言でいえば、神格を持った人間ってことよ」


「えっ? 今なんて?」


「まだ完全な神ではないけど、神になる可能性を持っている存在なの。つまり、あなたは神の卵のような状態ってことよ」


 ちょっと待って、思考が追い付かないんだけど。

 しかし、アリシアは話を続けた。


「潜在能力も高いし。しかも、成長速度が普通の人間よりずっと早いの。神具創造のレベルが上がってたのもたぶんそのせいね」


 その話を聞いて、思い当たることもあった。

 ホーンラビット一匹倒しただけでレベルが上がったし。

 少し練習しただけで魔法も覚えた。

 森から四時間歩いた次の日も、筋肉痛になってなかった、

 それに、ギルドで最初から上位職を選べたのも霊神人だったからなのかな?


「じゃあ、俺って神さまになっちゃうの?」


「その可能性があるってだけで、まだ確定ではないわ」


「普通に人として生きるのも可能ってこと?」


「あら、意外ね。神になれるって聞いたら喜ぶ人も多いのに」


 それはまぁそうなんだろうけど、でも俺は神になんてなりたくない。

 あくまでも一人の人間、美少女としてのんびり生きていきたいんだ。


「でも、どうして霊神人になっちゃったのかしら?」


 アリシアはティリスに貰った書類をぺらぺらとめくりながら目を通していく。

 重要なことが書いてある書類なんだからもっとじっくりと読むべきなんじゃないのか? 


 そんなことを考えていたら。


「ああー!」


 突然アリシアが声を上げた。

 そして、へなへなとその場にしゃがみ込む。


「おい、どうしたんだ? 大丈夫か?」


 俺は慌てて歩み寄り、アリシアに手を差し出した。


「えっ、ああ、ありがとう」


「それで、どうしたんだよ急に」


「……私のせいじゃなかった」


 アリシアは涙目になりながらそう呟き、一枚の紙を俺に見せてきた。

 しかし、転生した時同様、なにが書いてあるのかさっぱり読めなかった。


「いや、読めないんだけど?」


「天界のシステムがあなたを勇者と判断して、私が作った肉体を霊神人に変換したって書いてあるのよ」


「えっ、そうなの?」


 いや、ちょっと待て。

 それって天界のシステムがこの肉体は問題ないと判断したってことだろ。

 これは俺にとっても朗報なのではないだろうか?

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