第12話 初めての報酬
無事に職業が決まると、すぐにギルドカードを発行してもらえた。
これは身分証明書としても使えるらしい。
ちなみに、登録料として五百ナール必要だったのだが、これもライアが立て替えてくれた。本当にありがたい。
そして今は、ギルド内のテーブルで査定が終わるのを待っているところだ。
「あっ、報酬はキアラにもちゃんと分けてあげるから安心してね」
「わぁ、ありがとうございます」
いくらもらえるかはわからないけど、とりあえず今日の食費と宿代だけでもあれば十分助かる。でも異世界に来て初めて自分で稼いだお金だ。
ワクワクしながらしばらく待っていると、エルナがトレーにお金を乗せて俺たちの所へやってきた。
「お待たせしました。薬草と月光草の採集とフォレストウルフの討伐の報酬、合わせて八万ナールです」
「「八万!?」」
金額を聞いてライアとミネッサが立ち上がった。
俺だけが状況を理解できず首を傾げる。
「えっ、そんなに高額になるの?」
一万ナールで一週間分の生活費って言ってたから……一人ならほぼ二か月暮らせる額ってこと?
目の前には、見たこともない硬貨が積まれている。
金貨に銀貨、十円玉みたいなのは銅貨だろうか?
これが、この世界のお金なんだ。
「はい、薬草も月光草もかなり品質が良かったので、少し上乗せさせていただきました」
「そっ、そうなんだ。ありがとう……」
ライアが信じられないといった表情でお金を眺めていた。
「あの、これってそんなにすごい額なんですか?」
「当たり前でしょ! 私たち中級冒険者が四人パーティで一日に稼げるのはどんなに多くても二万五千ナールくらいなのよ?」
「えっ……じゃあなんで今回はこんな金額に?」
思わずエルナに視線を向ける。
「内訳ですが、薬草が八百本で四万ナール。依頼達成報酬が五千ナール。月光草三本が三万ナール。フォレストウルフの討伐報酬が二千ナール。品質が良かったので三千ナール追加しています」
「薬草八百……そんなに採取してたのね」
ライアが頭を抱えた。
「当分ギルドから薬草採取依頼は出ないと思います」
エルナが苦笑しながらそう言った。
「でしょうね、薬草が絶滅しちゃうわ」
「あの……なんかすみません」
お金になると思ってつい採取しすぎてしまったようだ。
これからは気を付けよう。
やり過ぎてしまったことを反省していると、ライアがお金を分け始めた。
「はい、これがキアラの取り分。通行税と登録料、それから経費は引いてあるから二万五千ナールよ」
「えっ、そんなに貰っていいんですか?」
金額を聞いて驚いた。
それだとほぼ三等分じゃないか。
「いいわよ、キアラのアイテムボックスのおかげで稼げたんだから」
「うん、私たちも十分大儲け」
ライアとミネッサも満足そうな顔をしている。
でも本当にいいんだろうか?
命を救われた上に、通行税まで出してもらったのに。
むしろ俺の方がお礼をしなきゃいけない立場だ。
でも……今の俺にはお金が必要だ。
「分かりました。ではありがたく受け取ります」
しかし、二万五千ナールか。
この世界で初めて稼いだお金だ、大事に使わなきゃな。
そういえば俺、財布持ってないな。
仕方ないので、そのままアイテムボックスに収納した。
「あっ、そうだ。いろいろ助けてもらったお礼がしたいので、あとで食事でもご馳走させてください」
「別にお礼なんていいのに。でも、ここはお言葉に甘えようかしら、ね、ミネッサ?」
「うん、ごちになります」
ミネッサは即答だった。
「じゃあ、早速行きましょうか」
ライアが立ち上がろうとした時、ふとたくさんの紙が貼られている掲示板が見えた。あれって依頼なのかな? どんな依頼があるんだろう?
「あっ、その前に。エルナさん」
受付にいるエルナに声を掛けた。
「はい、どうしました?」
「あの、今ってどんな依頼があるんでしょうか?」
「そうですね、Fランクでしたら……あっ、これなんてどうでしょうか?」
そう言って一枚の紙を見せてきた。
「これは?」
「牧場のお手伝いの依頼です」
「えっ、牧場?」
Fランクの依頼といえば薬草採取や荷物運びは想像していたが、牧場の手伝いとは予想外だ。なんか地味な依頼だな。
「なんでも突然牛が大量の乳を出すようになって人手が足りないそうです」
「大量ってどのくらいなんですか?」
「この牧場は老夫婦と最近入ったお手伝いの女性しかいないそうで、搾っても搾っても終わらないそうなんです」
「はぁ? そんなことあるんですか?」
なにそれ、オカルト?
ちょっと怖いんですけど?
「うーん、そう言うのはちょっと」
「そうですか。ですがキアラさんはFランクですし、お一人なので街の外の依頼は受けられませんよ」
「えっ、そうなんですか?」
どうしようか迷っていたらライアが声を掛けてきた。
「本当はキアラにはうちのパーティーに入ってもらいたいんだけどね。アイテムボックス持ちなんて喉から手が出るほど欲しいし」
「えっ、俺がですか?」
「でもギルドの規則で加入できるのは一つ上のランクのパーティーまでしか無理なのよ」
なるほど、そんなルールがあったんだ。
「うん、キアラ可愛い。早くランク上げて、うちに入って」
ミネッサが俺の手を握ってそう言った。
「えっ、かわいい? そうですかぁ……えへへ」
可愛いと言われて思わずにやけてしまった。
しょうがないよな?
前世では一度も言われたことがない言葉だったんだから。
「まぁ依頼やパーティーの件は今すぐ決めなくてもいいでしょ」
「あっ、そうですね」
確かに今は考えても仕方ないか。
明日にはまた別の依頼があるかもしれないし。
「じゃあ、とりあえずご飯行きましょ。安くておいしいお店教えてあげるわ」
「わぁ、それ凄く嬉しい。あっ、後で安い宿も教えてください」
「ふふっ、わかったわ」
そうして、俺たちはギルドを後にし賑やかな夜の街へと歩き出した。




