第8話 男は車道側を歩くべし
エンドロールが流れ終わり劇場内が明るくなった
志亜我が叫ぶ
「うわー!世界が下に流れてく!」
「結構面白かったですね!」
「アーニャが初めてピーナッツを万引きするシーンなんて最高でしたね!」
「クソ映画じゃねぇか」
狂ノ進はジュースとポップコーンの容器を扉の前に用意されたゴミ箱に捨てた
「この後どうしますか?特に無ければ解散しようと思うんですけど」
霧ンがおずおずと手を挙げた
「もしよかったら教会に行きませんか?」
「さんせ~い!懺悔室でペヤング食べよっと」
「良いですね!じゃあ僕はユダでシコろうかな」
「あんたら教会をなんだと思ってんの?」
「近くにあるみたいなので歩いて行きましょうか」
黄昏時の人気の無い道を4人は歩いた
狂ノ進は父親の教えに従いきちんと車道側を歩いていた
「そういえば、どうして霧ンさんは朝に轢いた時に逃げたんですか?」
「今年は公務員と会わないことを目標にしているの」
狂ノ進はその事も無げな霧ンの返答に胸を高鳴らせた
志亜我は二人に割り込んだ
「え~勿体ないな~賠償金請求しておけばよかったのに~
もう時効だよ」
「じゃ末長く裁判 in 裁判しようかしら」
その逆プロポーズともとれる霧ンの言葉に狂ノ進はサイレントに絶頂した
その様子を一歩引いた場所で眺めながら純は声を押し殺し自らの耳たぶを引っ張った
これは純が心を落ち着けるためにする癖であり物心ついてからの賜物である
霧ンは地図アプリを開いた
「ここの信号を渡った先ですね」
霧ンが示した横断歩道は中間に中央分離帯が挟まる大きめのものだった
信号は青だったのでこれ幸いと4人は渡り始めたがその瞬間に青信号が点滅し始めた
「中央分離帯まで行ったら一旦待ちましょうか」
「そうですね」
全員が中央分離帯まで達すると狂ノ進は暴力に訴え出て3人を張り倒した
「キャッ!」
「うわっ!」
「はぁ?」
そして地面に転がった純を抱え上げお姫様抱っこした
「えっ♡」
突然の思い人からの憧れのシチュエーションのときめく乙女心
だが狂ノ進は無情にも純を霧ンと志亜我の上に放り投げた
「ぐはっ!」
「カハッ!」
「ズッス!」
三者三様の呻き声
狂ノ進の手によって配置された3名はドラえもんの空き地にある土管のようになっていた
そして狂ノ進は3人が自分の体の内側に収まるようにブリッジをした
狂ノ進のブリッジの内側で純が抗議する
「ちょっと狂さんいきなりどういうこと!!!」
「いえいえ男として当たり前のことですから」
これこそが狂ノ進が父親から教えられた13の技能のうちの一つ"男車道側歩きで"ある
その教えを忠実に守った結果、中央分離帯ではこうするより他にないと狂ノ進は考えたのである
ただ3人のうち霧ンだけは、この陣形に少しの温かさを覚えていた
一人っ子であり両親が家を空けがちな霧ンにとってはこの頓痴気な状況であっても想像以上に嬉しかったのだ
狂ノ進はゾンビのように体勢を起こし3人に手を貸した
「よし青になったので行きましょうか!」
「教会はそこを曲がってすぐですね」




