第6話 タクシーに乗ってGO
霧ンと志亜我は保健室で傷の手当てをするため一度校内へ引き返した
二人を見送ると純は切り出した
「凄い美人さんだったねあの人」
「轢かれた直後なんかは最高に美しかったね」
「狂さんってサディストだったの?」
首を横に振る狂ノ進
「いいや、好きな人の色々な側面を見たいと思うのは恋愛に於いて当然のことだと思わないかい?」
ややあって手当てを終えた二人が戻って来た
狂ノ進は両手を打ち鳴らした
「では、映画館に出発しましょうか!」
純は校門から出てきた霧ンをジトッと凝視していた
彼女を観察して素敵な所をトレースし自らの恋路に繋げる思惑で
純の視線に気がついた霧ンは不思議そうに純の顔を見た
純はやましさを感じ咄嗟に目を反らし取り繕う様に口を開いた
「どうやって行く?」
「僕の車は2人乗りだからな~」
テンションの上がった志亜我
「すごい!もしかしてスポーツカー?」
「まぁ広義のスポーツカー、狭義の軽トラですね」
純は誰にも聞こえない程の声量でいじけたようにボソリ溢す
「見栄はるなよベビーカーじゃん」
「丁度4人なのでタクシー捕まえますね」
そう言うと狂ノ進はメスのタクシーに紐をくくりつけた
「何してるの?」
「こうやるとオスのタクシーが寄ってくるので、そこを捕まえるんですよ」
「それはトンボの捕まえ方だろ」
狂ノ進の思し召しの通りものの数分でタクシーは捕まり一行はそれに乗り込んだ
人の良さそうな初老のタクシー運転手さんは威勢よく言った
「へい、らっしゃい!なに握りやしょう!」
困惑し顔を見合わせる4人
助手席に居座った狂ノ進が代表して返した
「すみません。握るって何ですか?」
大変動揺したように運転手さんは言う
「握る?アタクシ握る?って言いましたかね」
「はい。確かに」
「すいやせん。つい3日前まで寿司屋をしていたもので、つい出ちまいました
そいで、どこに行きましょうか?」
「左様ですか。TOTOシネマズまでお願いします」
「では発車しますねケッチケッチ」
タクシー緩やかに発進した
「お寿司屋さんはやめちゃったんですか?」
「はい。生中出しを提供していたのが保健所にバレまして
ケッチケッチ」
「炙り中出しならまだしも、生ですか」
「えぇ。それで今は反省して白タクをやってるんですよ。
最初は白バイをやろうと思ったんですけどバイクは寒いから嫌じゃないですか。ケッチケッチ」
「へぇ~弘法筆を選ばずですね」
「えぇ正に弘法にも筆の誤りといいますからね。
ケッチケッチ」
志亜我が声を上げた
「運転手さん、さっきからケッチケッチて言ってますけど何ですか?」
「ウィンカーが壊れてまして。精一杯のサービスとして口でやってるんですよケッチケッチ」
「真面目なんですね」
「えぇそれだけが取り柄なもんですから
到着しました日本海沖です」
「ありがとうございます。支払いは現金でいいですか?」
「はい。日本銀行券でお願いします。料金は6000円です」
狂ノ進は1000円札を3枚取り出し半分に千切って渡した
「これでお願いします」
運転手はそれを受け取った
「え~と1,2,3,4,5,6 確かに6000円頂戴いたしました
こちらサービスのガリと緑茶です
ご利用ありがとうございました」
タクシーから下車した一行
「じゃあ映画を観に行きましょうか」
霧ンは小さく手を挙げた
「ごめんなさい私は公園に行ってから映画館に向かうから皆さんで先に行っていて下さい」
そう言うや否や足早にその場を去った
志亜我が不思議そうに言う
「なんで公園に行ったんだろ?」
「急に滑り台したくなったんじゃないですか?」
「普通の女子高生は急に滑り台が恋しくなる瞬間なんて無いよ」
「じゃあ先に映画館に行ってましょうか」




