第4話 殺し屋YAZAWA
ベビカ150から1.5km離れたビルの屋上に一人のお爺さんがうつ伏せに寝転んでいた
年齢は70代くらい、革ジャン革パンに地肌の上に着用し真っ黒のサングラス
身動ぎする度に革ジャンがブリブリと音を立てる
その老人は人生の終盤に差し掛かったとは思えないくらいの存在感を発していた
彼の高すぎる体温は汗を蒸発させ全身から湯気を揺らめかせていた
そうそれはまるでスキー場でするおしっこかのように
彼の名前はYAZAWA
とある自動車メーカーに雇われた凄腕の殺し屋だ
YAZAWAはスコープを覗き対象に狙いを付ける
今回のターゲットは新技術を発明した中学生らしい
子供相手に躍起になる自分の依頼人を軽蔑するが、それはそれとして彼は仕事をこなす
依頼の達成こそが彼の唯一にして僅かな喜びであり生活を送る意味なのだ
老境に達しこれ迄の人生の閃きを総合したその結果
YAZAWAの殺しの腕は肉体の全盛期を遥かに凌いで研ぎ澄まされていた
YAZAWA は思う
狙撃に於いて揺らぎが仇となる
肉体の揺らぎ
YAZAWA は息を止め、心臓を止め、血流を制限した
精神の揺らぎ
YAZAWA は孤独な少女と出会い自らの暗殺の技術を教え心を通わせていく妄想した
つまりレオンである
この妄想をすると良い具合に頭が空っぽになる
ターゲットを始末しようとは考えてはいけない
考えてしまうと力みが生じ世界にバレてしまうのだ
暗殺というのはその行為が達成される迄、誰にも何にも悟られてはならない
狂ノ進へと引き金を引いたYAZAWA はようやく緊張から解放され呟いた
「殺っちゃえ。ニッサン」




