44:内部対立最大
外敵は、分かりやすい。
本当に危険なのは――内側だ。
教国・聖都リュミナ。
大聖堂、広間。
ざわめき。
信徒が集まっている。
だが。
いつもの祈りではない。
「……なぜ止める」
声が上がる。
初めて。
明確に。
「外に行くなと言うのか」
「働くなと言うのか」
怒りではない。
困惑。
混乱。
そして。
“疑問”。
司祭が前に出る。
「神の導きに従え」
いつもの言葉。
だが。
通じない。
「……それで、足りないからだ」
誰かが言う。
小さく。
だが。
消えない。
「……外では食える」
「動けば、食える」
現実。
それが、全てを壊す。
「……ならば、なぜ祈る」
その一言で。
空気が凍る。
禁忌。
だが。
止まらない。
「神は、救ってくれるのではないのか」
問い。
純粋な。
だからこそ、強い。
司祭が言葉を失う。
答えはある。
だが。
届かない。
その瞬間。
別の声が上がる。
「黙れ!」
怒声。
信徒の一人。
「疑うな!」
「信じろ!」
それが“正しい”側。
だが。
「……信じて、何が変わった」
返される。
静かに。
鋭く。
ぶつかる。
信者同士で。
それが。
内部対立。
最大化する。
大聖堂は、祈りの場ではなくなる。
“議論”の場になる。
いや。
“衝突”だ。
森の拠点。
「……来たわね」
エルディア・ヴァレンティナが言う。
帳面を見ながら。
「内部対立、発生」
「規模、拡大中」
マリナ・ルクレツィアが静かに頷く。
「ええ」
「分断が“内部”に入りましたわ」
外ではない。
中だ。
それが、致命的。
レオニア・アルディウスが笑う。
「……もう止まらねえな」
確信。
エルディアは、冷静に言う。
「まだ止まる可能性はある」
「統制が効けば」
だが。
「効かねえだろ」
レオニアが即答。
「もう“見ちまった”んだ」
一拍。
「外の現実を」
それが、全て。
マリナが言う。
「ええ」
「比較が生まれた時点で、終わりですわ」
信仰は、絶対であることが前提。
だが。
今は違う。
“別の選択肢”がある。
それが、壊す。
エルガード・カウフマンは、火を見る。
揺れている。
だが。
強い。
「……どうなる」
エルディアが問う。
珍しく。
未来を。
エルガードは、少し考える。
「……割れる」
短い。
「完全に?」
マリナが問う。
「時間の問題だ」
即答。
「どっちが残る」
レオニアが問う。
一瞬。
沈黙。
エルガードは、火を見る。
そして。
「分からない」
正直な答え。
「でも」
一拍。
「変わる」
それは確実。
教国・大聖堂。
声がぶつかる。
「信じろ!」
「現実を見ろ!」
「神はいる!」
「なら、なぜ救われない!」
衝突。
止まらない。
司祭たちは、統制を取れない。
命令は届かない。
信仰が、分裂している。
それは。
構造の崩壊ではない。
“人”の崩壊。
最も深い部分。
最も、戻らない部分。
森の拠点。
エルガードは、火を見る。
揺れている。
だが。
消えない。
内部対立。
それは、終わりの始まり。
だが。
同時に。
新しい始まりでもある。
壊れる。
だが。
生まれる。
その両方が。
同時に進む。
それが。
今の世界だった。




