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冬の国侵攻②

サァアアアッ


秋が近づき黄金色に染まった小麦が穂を垂れて風に揺れている。


「そろそろ、刈る時だと言っていたわぁ」


「そうか」


小麦の収穫時期が近づいてきたとサリーナから報告を受ける。


「水車式製粉機の出番だな」


湖へと流れ込む水の力を利用した水車、その回転力を連動させて自動的に小麦から小麦粉を製粉する小屋。


ドワーフたちの力を借りて夏の間に完成させていた。


それ以外の目的で人間に友好的な種族が魔王城前へと訪れだした。


最初は人間達も恐れていたが、付き合いが始まると慣れてきていた。


他種族が増えて城下町へと発展していく。


交流の無い種族同士が人間という種族を橋掛けに今までにない考え方がぶつかり合い、良い所が重なり合う。


「収穫せよ」


広大な土地を覆い尽くす小麦を一斉に狩り始める。


風魔法による広範囲収穫が行われて小麦束が次々に作り出されていく。


藁木と呼ばれる物に掛けて一旦乾燥させる。


麦穂から小麦を採取して水車式製粉機へと運ばせて小麦粉を大量に作り出す。


1年を通して作り出した小麦粉は冬を越すには十分な量が作り出された。


「よくぞ集まってくれた」


準備が整い周囲へと集結するように連絡を入れた。


収穫後の畑跡に前回の非にならない程の魔族が集まった。


「進軍開始」


種族も武器防具の質も揃えて人間領へと向けて動く。


アーガルム砦を通り抜けて進んでいく。


魔王領へ避難していきた村人たちの住まう村には新しい人が入っていた。


「殲滅せよ」


今回は降伏を受け入れず本能の赴くままに進ませる。


村や町を破壊し使えそうな物資を奪っていく。


軍規模の拡大に加え戦術の選択肢が増えたお陰で苦も無く王城へとたどり着く。


「迎え討つか」


魔王軍よりも多い人数で王城前に陣を敷き待ち構えていた。


「エルフ部隊、前へ」


長弓を持つエルフ達を前に押し出して弓を放たせる。


ヒュンヒュンヒュンヒュンッ


お互いに矢の雨を降らせるが人間側の飛距離が短く、腕の立つ数十名程しか届かない。


「ジャイアント部隊、防御だ」


高さ5mはありそうな分厚い盾を掲げて矢を防御する。


「伝令だ」


サキュバス伝令隊に指示を伝え、報告を受けとる。


「投石器を出せ」


ゴロゴロゴロ


20台ほどしか用意できなかったが投石器を押し出す。


「放て」


ゴォオオッ


ドゴオォオン


人間達の軍中心部に大岩が放り込まれ大混乱を巻き起こす。


「ドラゴン部隊」


ギャォオオンッ


前回と同様、山から切り取った岩を上空から落とす作戦を実行する。


更にドラゴニュート、サキュバス混成部隊にも石礫を入れた袋を同じ高さから落とす。


大小様々な石が自由落下で人を殺す威力を持って降りかかる。


「ガルゥ、ミーノン突っ込め」


「おっしゃぁあ!」


「行くブモォ!」


近接が得意なガルゥやミーノン部隊を突っ込ませる。


「竜王!」


「うむ。武技アーツ:激竜破」


前回と同じく防げるなら防ぐがいい。


ドォオオッ


黒き奔流が軍を薙ぎ払う。


「今回は防がれぬか」


「結界師不足か?」


あっさりと激竜破が通ってしまった。


「報告、敵将を発見」


「何処だ!」


「あそこです!」


サキュバスの指さす先には身なりのいい鎧に身を包む人物が馬に跨っていた。


ここから1㎞と離れている。


竜王の激竜破でも500m位が射程範囲だ。


「俺がやる。ターゲット固定!」


キィインッ


網膜にポインターが映り込む。


「マナライン接続!」


魔力で出来た細い線が一直線に伸びる。


ピッ


自身に着いたマナラインに気づかない。


「ブラッドバリスタ、ブースト!」


ヒュオッ


矢の数倍はあるバリスタの矢を魔力と血で作り出す。


「インパクトカノン!」


ドゴォオオンッ


手元の衝撃が周囲にまき散らされた。


「キャアァア」


「うぉおおお!」


「グォオオオ」


周囲にいた魔族達が巻き込まれて吹き飛ばされていく。


グシャッ


土煙が上がる中、マナラインと繋がっていた人物が血飛沫を上げて倒れる様子が見えた。


ザワッ


人間達の動きが鈍くなり始める。


「一気に叩き込め」


全魔族達が一斉に動き始めた。


至る所で怒号、剣戟、悲鳴、血飛沫がまき散らされる。


ゴォオオオオ


ドラゴン達のブレスが地上を焼き尽くしていく。


「この身なり、こいつが最高司令官だったんだろうな」


1㎞先にいた人間が倒れた場所で死体を見下ろしていた。


「報告、門が閉じられて侵攻が困難になりました」


「空からはどうだ?」


「複数台のバリスタで近づけません」


やはり王都の守りは固い・・・城壁も40mはある。


「砦攻略法は使え無さそうだ」


城壁には砦とは比べ物にならない程の弓兵が配置されていた。


「今日は激竜破も撃てん」


「残るは俺の天竜波か・・・」


ゴロゴロゴロゴロッ


俺達の背後から重い物を転がす音が聞こえてきた。


「魔王様、完成したわぁ」


砦攻略時に使った破城槌を強固にした鋼鉄製の破城槌が運ばれてきた。


「ドワーフたちが連日連夜徹夜して作ってくれたわよぉ」


「これで活路が開ける」


ミノタウロス等が中に入りゆっくりと城門へと着く。


矢だろうがバリスタだろうが関係なく突き進んでいく。


ゴォオオンッ


ゴォオオン


破城槌が城門をこじ開けようと金属音を鳴らし続ける。


モコモコモコッ


近くの土が膨れ上がってきた。


ズボッ


「魔王様、いくつか穴を付けました」


「ご苦労」


モグラに似た魔族達には土の下から王都内部へと侵入する穴を掘って貰っていた。


「ガルゥ!」


「ここに!」


「お前達はコイツ等の後ろに着いていき内部へ入れ」


「任せておけよぉ。行くぞ野郎ども」


ガルゥ達、獣系の魔族達が穴の中へと入っていく。


「ドラゴニュート、サキュバス、ドラゴン達は上空にて待機」


バサバサバサッ


地上で休憩をしていた空襲部隊が飛び立つ。


俺達の動きの変化で城壁の弓兵たちも慌ただしく動き出す。


「ブラッドレイン!」


ブワァアアアァアッ


王都上空に血の雨を降らす。


「報告、弓兵の動きが弱まりました」


「突撃しろ」


ドガォォンッ


内部に侵入したガルゥ達が大暴れし、城門を破城槌でこじ開けて魔族達が中へと殺到する。


王都へと逃げ延びていた兵士達が抵抗するが飲まれていった。


「王城へ急げ、頭を押さえるぞ!!」


王都内の詮索は後にして万の軍勢が王城へと進ませる。


「人の気配が全くしない・・・まさか!?」


ドゴォンッ


ドガァアン


城を支えている柱が次々と爆発する音が轟いた。


「全員、逃げるんだ」


去年と同じ罠に掛かってしまった。


まさか城を破壊して侵入者毎潰すとは思わなかった。


ゴゴゴゴッゴゴッ


ドグシャァアッ


「被害報告!」


「分かりません!」


「現在、確認中です!」


サキュバスやハルピュイア達に崩れ去った城から生存者を探させる。


「動けるものは怪我人を連れて外へ出るぞ。ここもあり得る」


城とは限らない・・・王都全体が罠の可能性があった。


ドゴォオンッ


ドガァアンッ


今度は王都を守る壁から爆発音が轟いて内側に向けて倒れ始める。


人間達は王都を捨てて魔族を一網打尽にする罠にしたという事か。


「報告、被害は3割にも及びました」


「くっ、3割か」


戦争で3割の消失は惨敗したと言われている。


「撤退するぞ」


「そんな、馬鹿な!? また、逃げ帰るのかよ」


「王都が再起不能になっただけでも良しとするしかない」


ゴゴゴゴッ


ドガァアンッ


俺達は崩れ去っていく王都を後ろ目に引き返す事にした。

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