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アーガルム砦

魔王領と人間領を繋ぐ橋を渡って南下していけば巨大で堅牢の要塞が待ち構えていた。


「報告、砦にはバリスタおよび弓兵が待ち構えています」


「報告、迂回路などは見当たらず」


「報告、城壁の内部には数千人が立てこもっている模様」


空からの偵察を終えた魔族達から次々に報告を受ける。


今にも飛び出していきそうな徒歩の魔族達には押さえて貰っている。


「この山脈さえなければ」


巨大な要塞の左右には標高2000mはありそうな山脈が広がっていた。


山脈には野生のワイバーンの住処となっており魔王軍とて迂闊には超えようとは出来ない。


「如何いたしますかな?」


「あの武技アーツは使えないの?」


「天竜波は魔力消費が激しいからそう連発出来ない」


「そんな制約が・・・」


「先代魔王が攻めあぐねていた理由はアレだったか」


「アーガルム砦を突破するのは容易では御座らん」


「俺様でも難しいぜ」


「万策尽きたわぁ」


「引き下がるしかないブモォ?」


四天王達もあの砦を落とすには難しいと音を上げる。


「いや、待てよ・・・人間として考えていたな」


周囲を見渡せば人ならざる者達が集まっている。


知能は足りないが、巨大で怪力自慢のミノタウロス、サイクロプス、ジャイアント。空を自由自在に飛べるドラゴン、ドラゴニュート、サキュバス。


壁を物ともせず駆け巡れるアラクネ。


人間にない最初から備わっている強みを生かそうとしていなかった。


「最小人数だけ残して下がるぞ」


「「「「はっ」」」」


人間達が打って出ても対応できる人数だけを残して魔王領へと戻る。


「木を倒せ!」


橋の近くにある森へと下がってきて魔族達は俺の命令に従い木を倒し始める。


ブモォオオ


ゴアァアア


怪力自慢達が木々を瞬く間に倒していく。


「魔王様、コレは何を作っているのかしらぁ?」


「大型の破城槌だ。この中にいれば矢だろうがバリスタだろうが気にせず突っ込んで門を破壊する」


ミノタウロス達が中に入っても問題ないように巨大な囲いを木々で作り上げる。


中央には先端を尖らせた丸太が括り付けられている。


木で出来た車輪を作り出して移動可能にする。


「出来ましたぜ」


手先の器用なドワーフ達が次々に思い描く形に仕上げていく。


たとえ規格外に重くなったとしてもあの橋は耐えてくれるだろう。


横幅25m、奥行き10m、高さ5mの木の家を模して作り、中心部には先端を鉄でコーティングした太い丸太を吊るした。


「血化粧!」


ビシャァアッ


最後には俺の魔力と血でコーティングして全体が深紅に染まる。


「魔法を撃たれても多少は持ってくれるな。コレを後2台、3台作ってくれ。後、これらもな」


20mはある堅牢の壁を登る為の移動式の櫓である攻城塔も作るように指示を出す。


魔族達の特性は此処の備わっている・・・それを活用できなければ攻略は無理だろう。


「ドラゴン達やサキュバス達にも仕事はあるぞ」


空を飛べるのだからな近くの山へ行く。


「ここなら・・・天竜牙」


ヒィイイッ


「はっ!」


スパッ


固い岩肌が豆腐を切るように簡単に刃が入る。


シャシャシャシャシャッ


次々に切り込みを入れる。


「ショックウェーブ」


ブブブブブッ


ドドォンッ


岩がサイコロ状に崩れる。


「コレを上空から砦に投げ入れるんだ。サキュバス達は細かい破片を袋に入れて同じく上空から投げ入れろ」


自由落下してきた岩や石は凄まじい破壊力を持つ。


短時間で準備は整い再び砦へと戻る。


・・・


「お、おい。アレ」


魔族達が退いていき人間達の緊張感が薄れていた時、見張りの兵士が橋の方を見て指さす。


「敵襲!!」


カンカンカンカンッ


けたたましく鐘を鳴らして周囲へと知らせる。


「魔族達は見たこともない物を作りだしてきたぞぉおお」


破城槌、攻城塔をサイクロプス達に押させて橋を渡り切る。


「陣を敷く」


1万の軍勢を動かして陣形を作り出す。


「個々で突っ込んでいっても無駄死にするぞ。敵の攻撃が当たらない所まで前進」


ザザザッ


ゆっくりと着実に魔族達が一致団結して前へと進む。


ゴロゴロゴロゴロッ


中央には破城槌、左右には壁を登る為の攻城塔が複数台一緒に進む。


バババババッ


砦からは大量の矢が降り注いだ。


「盾、構え!」


一名一名に簡易的な木の盾を持たせて頭上へ掲げさせる。


バキィッ


流石に鉄の鏃を持つ矢が降り注いできて木で防ぐには無理があった。


複数の魔族達が負傷をして後方へと運ばれていく。


「空襲部隊!」


「吾輩に続くので御座る!」


空を飛んでいた魔族達が一斉に動き出した。


「喰らうので御座るよ!」


バッ


袋に詰めた石礫を一斉に投げ捨てる。


バババババ


空からの接近で弓兵の矛先が空へと変わる。


「無駄で御座るよ」


矢の届く範囲外で急上昇して矢を避ける。


ドバアアアアッ


一斉に投げ込まれた石が壁上に降り注ぎ、弓兵達に怪我を負わせる。


「進め」


矢の攻撃が地上に向かなくなり進み始める。


ギリギリギリッ


ドシュッ


バギィッ


バリスタの1台が攻城塔に大穴を開けた。


「ドラゴン部隊」


ヒュォオオオ


ドゴォオオン


ドラゴンが運び込んできた岩を次々に壁へ向けて投げ捨てていく。


バガッ


バリスタの1台が岩に押しつぶされて砦内へと落ちる。


下の対応をすれば上から、上を対応しようとすれば下が迫ってくるという二重の進軍に人間達の防衛能力では手に負えない光景が広がる。


ガシィンッ


「突撃しろぉお」


攻城塔が壁に張り付いて階段が姿を現す。


ガルゥを中心とした獣人族達が階段を登り城壁へと殺到する。


ゴォオオン


ゴォオオン


破城槌が鉄の扉を叩き始める。


「砦内部にも放つで御座るよ」


更に内部に向けて残っている石礫や岩を投げ入れていく。


砦から人間達の悲鳴等が轟く。


「コレが・・・戦争。うっ」


上空から砦が落ちていく様を見てフレアは吐き気を催す。


「しっかり目に焼き付けろ。魔王になるという事はこういう事もするんだ」


「これが父様のやってきた事・・・」


「姫様、これが現実で御座います」


ドゴォオンッ


内部に侵入したガルゥ達が門へと到達して閂を内部から外した事で門が開いた。


ドドドドドッ


サイクロプス達も入り込み更に戦況は傾く。


ギィイイイ


人間領へと続く門が開き生き残っていた兵士達が逃げ出していく。


「待て!」


逃げていく兵士達を追いかけて行こうとするガルゥ達を止める。


「な、なんでだ!!」


「今回はこの砦を奪取した事で留まれ」


「しかし、アイツ等を逃がせば」


「良いんだ。俺達の事を伝える役目が必要だろう」


たかだか1000にも満たない兵士が逃げても問題ない。


「魔王軍がアーガルム砦を落とした事の方が大事だ」


チラッ


「怪我した奴は後方へ下がれ」


魔族達が強くても怪我はするし、生命力が高くても致命傷なら即死する。


大小様々な怪我をした魔族達を魔王領へと帰す。


ゴォオオッ


ドラゴン達がブレスで砦内の建物へ攻撃する。


ギャァアアッ


隠れ潜んでいた兵士達がブレスに焼かれて断末魔をあげる。


グチャグチャグチャッ


人肉を貪る魔族を横目に砦内で一番高い建物へと向かう。


「魔王様、コイツが指揮官よぉ」


サリーナ率いるサキュバス部隊には高い建物へ入って指揮官を捕らえるよう指示を出していた。


「貴様が魔王だと・・・まだ小娘じゃないか」


髭を生やした40位の見た目をした将校の格好をした男が睨みつけてくる。


「これだから、人間は見た目で判断をする。1500歳の俺に向けて言うのか?」


「「「「え?」」」」


その場の全員が呆然となった。


「魔王様1500歳なのぉ!?」


「うっそ?」


「先代魔王様より年上でしたか」


サリーナ、フレア、バホメットの3名はそれぞれの反応を示す。


「そんな事はどうでもいい。お前には2つの選択肢を与えてやる」


「魔族には屈せない・・・殺したければ殺せ」


「する訳ないだろう」


「な、なんで!」


「こいつは一般兵よりも使い道がある。仮にも砦の責任者だ。地位もあるし発言力もある」


「くっ・・・魔族め」


「魔族だからなんだ? 人間達もやっている事だろう。差別はいかんなぁ」


「貴様らが」


「そういう押し問答は聞きたくない。先に魔族が、人間がという奴は無駄な水掛け論だ。もっと現実的な話がしたい」


「くっ」


「1つ目はこの国について話せ」


「誰が!」


「だろうな。2つ目はこの事を王へと伝えろ」


「おいおい、魔王様よぉ。それは優しくねぇか」


人肉を貪っていたガルゥが人間の脚をかじり付いたまま現れた。


「ヒィイイ」


「あ? テメェらもやってることだろう? 鳥の足をかじっているのと何が違うんだ?」


「人間を動物と一緒にするな」


「ブーメランだな」


「ブーメランって?」


「一緒だよ。人間も俺達からみれば動物だ」


「き、貴様ぁ!」


「ガハハッ! 言い得て妙だぜ。あぁ、人間は俺達魔族にとっては食料の一つだ」


「拙者は好まないでござるが」


次々に四天王達が集まってくるな。


「あら、血は美味しいわよぉ」


舌なめずりをするサリーナ。


「人間品評会は後にしろ。で、どうする?」


「この、化け物がぁあああ」


グシャッ


「あ、悪ぃ」


最後の力を振り絞ってサリーナの拘束を振り払い、迫り狂う途中でガルゥの一撃で地面に押しつぶされた。


「構わん」


「喰っていいか?」


「好きにしろ」


「おうよ」


ズルズルズルッ


動かなくなった指揮官を引きずっていく。


アーガルム砦陥落の報は瞬く間に広がっていった。

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