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魔族の救世主

ドシッ


俺は案内された椅子に腰かける。


「おいおい、何の冗談だ。バホメット! そこは魔王様の玉座だぞ!」


部屋にいた獅子に似た魔族が声を荒げて近づいてくる。


「控えなさい、ガルゥ。この方こそが魔王召喚に応じてくれた新たな魔王様ですぞ」


「ガハハッ! こんな小娘が新たな魔王な訳ないだろぅ。四天王が一人獅子王ガルゥ様の目は誤魔化せんぞ」


「ふっ」


「あ、鼻で笑ったか?」


「弱い者程、良く吠える」


「貴様ぁ!」


ガッ


襲い掛かってきたガルゥの体をシャドウバインドで動きを封じる。


「ぐぁ、なんだコレは!? う、動けねぇ」


「消えろ。ショックウェーブ」


ボッ


魔力波をガルゥに叩き込み吹っ飛ばす。


ドゴォンッ


太い石柱がガルゥの激突に耐えられずへし折れて土煙を上げる。


ガラガラッ


上半身を壁にめり込ませてピクピクとするガルゥ。


バタバタバタッ


その音を聞きつけて足音が近づいてくる。


「今の音は何よぉ! 折角の昼寝が台無しじゃなぁい」


「ガルゥ殿!?」


「コレは一体なんだブモォ?」


サキュバスの女魔族、ドラゴニュートの魔族、ミノタウロスの魔族が入ってきた。


「サリーナ、ドラゴ、ミーノン。新魔王様の御前でありますぞ」


バホメットの声に俺へと注目する3名。


「バホメット、これはどういう事ぉ? 姫様はどうしたのかしらぁ?」


「そんな事より、そこは魔王様の玉座で御座るぞ!!」


「ブモォ! 我が親友ガルゥをやったのはお前か!」


「ちょっと! 私が質問しているのよぉ」


「煩い連中だ」


「四天王が一人、ドラゴと知っての口で御座るか!」


「ブモォ! オラ、怒ったぞ!! 四天王が一人、ミーノンが相手するブモォ」


ドシドシドシッ


3mはある巨体を揺らして、腰の鉄斧を抜き振りかぶる。


武技アーツ:兜割ブモォ!」


グンッ


右腕の筋肉が盛り上がり、スキルの効果で攻撃力が倍増しているのは見て取れる。


ガシッ


ビシィッ


斧刃の付け根を掴み、衝撃が足から地面に伝わってひび割れる。


「オラの渾身の一撃が!?」


「ショックインパクト」


ズドンッ


「ブモォアア!」


腹部に衝撃を叩き込み、吹っ飛ばす。


「隙が多いで御座るよ」


ミーノンの影から一瞬にして出現して抜刀の構えをしている。


「何処を見ている」


ドドドッ


椅子の影、そこから伸びた無数のブラッドハンドがドラゴを吹っ飛ばす。


ドガッ


天井に頭を突き刺さって気絶する。


(なんなのよ、あの子。四天王のアイツ等が一瞬で倒された・・・)


「お前は来ないのか」


ツッゥ


背後から声が掛かって汗を垂らす。


「わ、私は敵対するつもりは無いわぁ」


両手を上げて敵対しないポーズをとる。


「そうか」


フッ


後ろの気配が消えて玉座に座りなおす。


左右の壁、天井に四天王の3名が突き刺さる事態を目の当たりにしてサリーナは前へと歩く。


スッ


「私はアナタを新魔王様と認めるわぁ(ここは下手に出ない方がいいわね)」


「脳筋より賢い奴は好むぞ。バホメット、説明をしろ」


「はっ」


(あの上位悪魔バホメットに命令を・・・つまり、勝ったという事ね)


「ここは魔王領と呼ばれる魔族達の暮らす土地にある魔王城でございます」


「先代魔王と言っていたのは?」


「つい、先月・・・先代魔王様が勇者に討たれたのです」


「あの娘は?」


「魔王様の忘れ形見であるフレア姫で御座います」


「つまり、先代魔王が不甲斐ないせいで俺を呼んだと?」


ギリッ


(何も知らないくせに・・・)


「ふっ。何も知らないくせにか」


(この子、心を)


「読まなくても表情をみれば分かる。バホメットもな」


「負けた分際で差し出がましい事を」


「現在勢力図は?」


「これが大陸図で御座います」


パァアッ


空中に大陸地図が浮かび上がる。


形は瓢箪のように下の部分が広く、上の部分は小さい形をしている。


「大陸の北部が魔王領でしたが、現在は人間達が入り込み包囲されつつあります」


北部の土地が人間達の支配地域を示す色に浸食されていく。


「この城を含めて、若干数百キロしか我々の住める場所は御座いません」


「コチラの戦力は?」


「戦える者でも300程度しか残っておりません」


「人間側は?」


「勇者を筆頭に5万もの軍勢が押し寄せています」


バサバサバサッ


「サリーナ様」


空中を飛んできたサキュバス族が入ってきた。


「今、忙しい所なのよぉ」


「ゆ、勇者が現れました!」


「な、なんですって!? 到着が早いわよぉ」


「勇者が現れたか」


スッ


「そこのお前、案内しろ」


立ち上がり、入ってきたサキュバス族に話しかけける。


「あ、あの、貴女は?」


「お前たちに呼ばれた魔王だ。急ぎなんだろ?」


「ま、ま、魔王様!? ご、ごご無礼を!!」


「謝罪はどうでもいい。早く案内しろ」


バサッ


翼を広げて空中を飛ぶ。


「コチラです」


サキュバスを先頭に城から一望できる場所へとやってくる。


「あの丘に」


指さす先には光り輝く鎧と剣を身に纏った一人の青年が数万の軍勢を引き連れてやってきていた。


「あれが先代魔王様を亡き者にした勇者です」


プルプルと震える手で涙を堪えるサキュバス。


「アレが」


「あの者がフレア姫様の父君を打ち倒し魔族の生活圏を脅かして御座います」


「つまり、アレを止めれば時間稼ぎが出来そうだな」


「光の勇者ですぞ? そう簡単には」


「少しくらい地形が壊れても文句は言うなよ! 武技アーツ:天竜波」


両手を合わせて、竜の顎を形作る。


ドラゴンのブレスを模した一点集中型の波動。


ドバアアッ


極太の光線が丘を薙ぎ払う。


ドゴォオオオンッ


丘が吹き飛び、大量の土砂が空を舞う。


ボワッ


勇者の立っていた場所から放射線状に背後が残っていた。


「たった、一撃で万の軍勢が・・・」


後ろで見ていたバホメット達が唖然とする。


ガクンッ


俺の一撃を防御して勇者が片膝をついた。


ブシュッ


鮮血が出ているのが見える。


左腕を犠牲にして後方にいた味方を護ったようだ。


さすが、勇者と言うべきか・・・。


生き残った軍勢が勇者を後方へと運んでいく。


「形勢逆転ですな。一気に攻勢に転じて」


「たかが300では何も出来んぞ。アイツ等の装備には光属性の魔法が付与されている。無駄死になるぞ」


「あのぅ」


恐る恐ると言った感じで話しかけてくるサキュバス。


「今の光属性の魔法ですよね?」


「それがどうした?」


「魔王様なのに光魔法を使うんですか?」


「魔王が光魔法を使わないなんて誰が決めた?」


「さ、さぁ? 昔からそういう物だとばかり」


「そんな常識を捨てろ。俺は光属性無効の魔王だぞ?」


「え、えぇ!? 光属性無効なんですか!?」


「弱点が無い魔王様でしたか・・・このバホメット感服致します」


(この子、見た目以上にヤバいわ・・・バホメットの様子からして忠義心が芽生えている)


スンッ


大量の血の香りが魔王城へと流れてきて俺は口の端を持ち上げる。


あの勇者・・・


「これで時間稼ぎは済んだな」


踵を返して魔王城の中へと帰る。


「もう起きてきたのか」


「貴女が呼び出した異界の魔王なの?」


気絶していた筈の姫が俺を睨んでいた。


「姫様。アイツは強いぞ。俺様よりもな」


「フレア様、かの御仁は拙者を赤子の如く軽く倒したのでござる」


「逆らわない方がいいブモォ」


フレアを宥めようとするガルゥ、ドラゴ、ミーノン。


「あぁ。今しがた光の勇者を撤退させたばかりだ」


ザワッ


「お父様を倒した勇者を撤退させたですって?」


「姫様。このバホメットが見ておりました。光の勇者の左腕と軍隊の殆どを壊滅状態へと追い込み撤退していきましたぞ」


「あの魔力の高鳴りは貴女だったのね」


「そういう事だ」


ドスッ


玉座に座る。


「ちょ、ちょっと! そこは父上の」


「今は俺がここの魔王だ。お前達が呼んだんだろ?」


「そ、そうだけど・・・」


「お前の父がどれだけ偉大だったかは知らん。お前達が呼び出した以上は俺も魔王として振舞わねばなるまい? それともココを放棄して自由に動いて良いのか?」


「そ、それは、困るわ」


(それ以上は止めなさい・・・フレアちゃん)


「バホメット、現魔王領で戦えるのは300と言ったな。それはこの城でという話か?」


「そうで御座います」


「つまり、他にも戦力があるという事だな」


「えぇ。しかし、魔王城からの指示は一切受け付けず勝手に防衛しているだけですぞ」


魔王領として機能しているのは魔王城と周辺の土地だけであり、周辺の土地に住まう魔族達はリーダー格を中心に人間達の抵抗をしているそうだ。


「こんな時に内輪揉めか」


「先代魔王様亡き後は・・・」


「烏合の衆になれば人間達の思う壺だぞ・・・こちらも足並みを備えなくてはな」


「新魔王様よぉ。その役目、俺様に任せてくれねぇか」


「拙者等もお役に立つでござるぞ」


「ブモォ」


「ならお前たちには周辺の魔族達を纏め上げろ。仮にも四天王を名乗るのだからな」


「「「はっ!」」」


(何なのよ・・・なんで、こんな従順なのよ)


「そう言えば四天王最後の一人が居ないな」


「私よ」


「サリーナだったか? ふぅん」


(こんな小娘が魔王・・・あまつさえ私を品定めするような目で)


「サキュバス族だな」


「えぇ」


「魅了系なんかは持っているか?」


「当然よぉ」


「なら、それで脳筋連中を引っ張ってこい」


「脳筋?」


「考える事より手が先に出る連中だ。いないよりマシになる」


「幾ら強いからって調子に乗らないで頂戴! 今日来たばかりで私達に命令するのも」


「サリーナ! 魔王様に何たる言葉を」


「良い。魔王城に一人は居たほうがいい。何でもかんでも魔王の言いなりでは意味がないからな。どうしたら指示を受け入れる」


「私はサキュバスの女王よ! 私の土俵で勝てば従わうわよ」


「ククッ。そうか・・・分かった。場所は」


「私の部屋に(サキュバスの女王に勝てると思っているのかしら?)」


俺とサリーナは王座の間を出て行く。

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