召喚獣魔闘大会⑤
「ダメェエ!」
黒きドラゴンの前にアンロッドは飛び出す。
「アリア! お願い聞いて!! 私の言う事を聞いて!!」
涙を流しながら大声で話しかける。
「私はアリアに頼りきりだった! 私には何もないって決めつけていた。全部アリアがやってくれるって思っていた。でも、違うって教えてくれた、叱咤してくれた。私は強くなりたい! 村の皆の想いに応えたい!! だから暴走を止めて」
ヒィイインッ
アンロッドの中心から魔力が漏れでて天に向かって放たれる。
それは放物線を描いて黒きドラゴンへと直撃する。
【魔力パスが再接続されました】
「だ、だれ?」
【導きの声】
「導きの声?」
【アンロッド様、強く願う事を助言致します。心を封じ込めたアリア様を呼び覚ますのです】
「心を?」
【その強い思いで心を開く事を推奨します】
「分かった、やってみる」
スッ
両手を合わせて目を瞑る。
グルルッ
黒きドラゴンがブレスを止めてアンロッドを見つめている。
「アリア、私の声を聞いて」
ブワッ
更に強い魔力がドラゴンへと流れていく。
ビキッ
ビキビキビキッ
ドラゴンの胴体に罅が入る。
バキッ
固い鱗が崩れ、胸が開いていく。
ズルッ
「アンロッドか」
「ア、アリア!?」
「どうやらこじ開けたようだな」
第二形態の魔竜化は絶大な攻撃力を手に入れる代わりに意識を持っていかれる。
グルォオオオ!
黒きドラゴンが吠えてブレスを再び貯め始めた。
「大人しくしろ! 分身体」
ドゴォッ
顎下からたたき上げて真上を向かせる。
バリィイインッ
強烈なブレスが魔道具の許容範囲を超えて結界が崩れる。
グルォオオアアア!
意志のない魔竜化した分身体が俺と離れた事で本格的に暴走を開始する。
「アンロッド、行けるな」
「うん。今ならアリアの考えている事が分かる気がする。これが心を繋げる感覚。気持ちいぃ!」
ブワッ
俺とアンロッドの魔力が繋がり混ぜ合う。
「天竜牙」
亜空間から天竜牙を取り出して構える。
「アリア!」
「あぁ、分かっている!」
魔力パスで繋がる事で互いの意識が重なり、共有する。
俺の身体能力が思考が見えている物がアンロッドに流れて俺にアンロッドの考えている事が流れ込んでくる。
ズバァンッ
身体強化魔法を使わずとも凄まじいスピードで魔竜の横を通り過ぎて翼を根本から断ち切る。
ギアァアア
叫び無作為にブレスを放つ。
ズドォンッ
草原の一部がブレス跡に吹き飛ぶ。
バサッ
空中に飛び立って天竜牙に魔力を送り続ける。
「消え去れ。風化斬」
時魔法を斬撃に乗せて放つ。
ギャァアアッ
叫び声を上げて黒い鱗が一瞬にして灰色に変化する。
サァアアッ
風と共に分身体が消滅していく。
「アリア!」
ガバッ
俺の背中に抱き着くアンロッド。
「いつかやってくれるって信じてたぞ」
「ありがとう・・・・」
「ったく、遅せぇぜ」
グルゥッ
ブルングが苦笑いして近づいてくる。
「あ~あ。始末書かなこりゃ」
草原の一部が吹き飛び困った顔をするハロルド。
「魔道具も壊れちゃったかぁ。高価な代物なんだけど」
「自業自得だろう」
「ちげぇねぇぜ」
「っと、騒ぎを聞きつけて来ちゃったか」
バサバサッ
数十というドラゴンの一団が王都から飛んできた。
「スゲェ! 竜騎士隊だぜ」
憧れの竜騎士隊を見て興奮するブルング。
ドスドスゥンッ
「ハロルド隊長、この惨状は?」
「ちょっと油断しちゃっただけだよ。まぁ、事態は収拾したから」
「しかし、一体何が?」
「まぁまぁ、この一件は僕が持つよ。だから大人しく帰ってくれるかな?」
「はっ! 撤収!!」
あっという間に竜騎士隊は帰っていった。
「隊長だったのかよ!」
「身分は隠しておきたかったけどね・・・案外早くバレちゃったよ。それにしてもブリューナクだったね。いいドラゴンだ」
「あ、ありがとう」
「さてと、片づけかぁ。面倒だ」
ハロルドは背伸びして見学していた民衆へ向けて歩いていった。
俺とアンロッドは真の意味で心を繋げる事となった。
「近づいてこないで!」
宿に戻るとアンロッドから拒否反応が出ていた。
「ケダモノ!」
あ、そうか。心が通じ合うって事は
「いつも私の事をそんな目で! 変態!!」
俺の思考もモロバレって事か。
「おいおい、どうしたんだよ突然?」
全く意図が理解できないブルングとルーが首を傾げる。
「まさか、ルーにまで」
「こんな子供だぞ」
「私も子供だよ」
「おいおい」
「喧嘩はダメだぞ」
「ルーちゃん、じつは」
「なっ!?」
ルーが顔を真っ赤にして俺を見る。
「この変態!!」
急な手のひら返しをしてくるルーだ。
「女好きなヴァンパイアなんて初めて聞くぞ!」
「なっ!? そうなのかアリア!」
ルーの言葉に驚きブルングが見てくる。
「否定はしない! というか1年半前に見てただろ」
アキラやシズカとディープなキスを目の当たりにしている筈なんだが。
「私もそんな目で見ていたなんて知っていたら」
「お前!」
「変態魔族」
「分かった、分かった。俺を呼びたいときに呼べ」
ヴンッ
魔法陣が床に出現する。
「何処に行くの?」
「ブリューナクと同じ空間だ。召喚獣は全員一時的にソコに入る」
「親元に帰っているんじゃ?」
「そのまま出身地に帰る奴も居るが基本はソッチで待機しているのが多いぞ」
「知らなかったぜ」
「何時でも呼べ」
ズブブッ
俺は魔法陣の中へと入り自室へと戻る。
・・・
「今年の召喚獣魔闘大会中等部優勝者はダイダロス召喚魔法学院からの出場者アンロッド選手と召喚獣アリアに決まりました」
俺とアンロッドは決勝戦で今年最強と言われた中等部3年を下して優勝をもぎ取った。
「優勝者であるアンロッド選手より一言」
「私はこの大会に出れて良かったと思いました。とても大切なものを学ばせて貰いました・・・色んな人達に迷惑を掛けてきましたが今大会で優勝できて誇らしいです」
「有難うございます。優勝者には高等部への進学と奨学金が授与されます」
「ゴホンッ! ダイダロス召喚魔法学院アンロッドよ。優勝賞品を受け取るのじゃ」
ダイダロス国王から優勝賞品の証であるトロフィーと招待状を手渡される。
大歓声の中で大会は幕を降ろした。
「楽しかったな!」
「えぇ」
「あ~あ、これでお別れか」
ルーが名残惜しそうにつぶやく。
大会期間中は2人に王都を案内するという大役を果たして再びあの頃に戻ると思うと面白くは無かった。
「ゴメンね」
「いいよ。いつもの生活に戻るだけだから」
「私に力があれば・・・」
「悪いな」
「ハロルドの旦那に口聞きしてくれただけでも助かったよ」
竜騎士隊の隊長であるハロルドにルーや他の孤児たちに対して目を掛けて欲しいと2人は頼み込んでいた。
当の本人は嫌がっていたがスラムの子供達を使った監視体制について提案してみるとハロルドは妙案とばかりに食いついてきた。
住む場所はスラムのままだがキナ臭い事を衛兵に話せば報酬がでるというシステムを導入する事にスラムの子供達は受け入れた。
「じゃぁなぁ!」
ルーが大手を振って王都を発つ2人を見送った。




