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誘拐

ガタガタガタッ


粗末な床板が小刻みに揺れている。


「へっへっへっ」


グビっとアルコール度数の高い酒を飲み男はアンロッド達を見ている。


・・・


あれからアンロッドはナナリーと仲良くなりそこから徐々にクラスへとなじみ始めた。


「今日も遊ぼうぜ」


ブルングからも誘われるようになった。


いつも一緒にいるデルとグルの少年と加えて5人でよく遊ぶ。


ブルングもまた騎士爵の子供で他と地位は低く男爵家のナナリーやアンロッドと話が合いやすかった。


その裏で良く思わない連中も存在した。


それが・・・


「くっくっく。お前達がドラゴンやら魔族を使役するからな」


酒に酔っぱらって漏らす男。


アンロッド達が夕方遊んでいる場所で複数人で襲い掛かられた。


「お前のご主人様が殺されたくなければ大人しくしてろ」


アンロッドを人質にされて俺も大人しくする事にした。


「やはり魔封じの枷は強えぇ」


俺の首に嵌っているのは魔力を封じ込める首輪だ。


「魔族でも封じ込められれば人間と同じよ。クックック」


「何処へ向かうつもりだ」


「さぁな。そんな事より主人の命が惜しければ黙ってな」


好き放題に・・・


ギイイッ


馬車が停まる。


「おら、立てや餓鬼ども」


怒鳴り散らしアンロッド達を無理やり立たせる。


「貴族の子供だぞ。丁寧に扱ったらどうだ」


「貴族っつても男爵家や騎士爵のガキだろうが」


良く調べているな・・・


「低位貴族なんざ、俺達平民と変わんねぇんだよ。さっさとあるけ」


アンロッド達は身を寄せあって歩き出す。


(マスター、そろそろ殺っていいか?)


(もう少し待って・・・理由が知りたいの)


子供とは思えない時がアンロッドにはある。


そう、子供の姿だが思考が大人のソレだ。


何処かの洞窟に入り、奥へと進んでいく。


「予定通りか?」


「おうよ。この通り捕まえてやったぜ」


「計画通りですぜ」


洞窟の広場に居たリーダーらしき男は暗闇に声を掛ける。


「さすが手際が良いですね。この辺では最大と言われるだけありますね」


身ぎれいな格好をした人物が現れた。


「報酬さえ頂ければこの位」


「アナタ達の狙いは?」


「さすが魔族を召喚するだけの事はありますね。肝が据わってます。狙いですか? 目障りなんですよ」


男はイライラとした口調で語りだした。


「この由緒ある我が国で魔族を召喚する少女がいて溜まりますか・・・」


どうやら俺絡みだ。


「君たちには悪いですが一緒に死んでもらいます。やり方は彼等に任せていますので」


スッ


男は入ってきた道から出ようとする。


(アリア、皆を護って!)


「任された」


バキッ


両手の枷を腕力だけで引きちぎる。


「人間ども、俺のマスターに危害は加えさせない」


「ひぃい!」


「逃がすか! ダークテリトリー」


ブワアアッ


魔力が洞窟の地面や壁を伝わりながら広がっていく。


「出せ! 私をここから出せ!!」


出入口諸共魔力で覆う。


「くそ! テメェ等」


目の前の男の声で各々が武器を取り出す。


バサッ


ビキキッ


竜角と翼を生やして本来の姿に戻る。


「堅牢」


ヒィイインッ


魔力の膜がアンロッド達を包み込む。


「待たせたな、人間ども。生きて帰れると思うな」


「たった一人で何ができやがる! やっちまえ!!」


男の声で一斉に襲い掛かってくる。


「複数魔法、ブラッドアロー」


四方八方から襲い掛かる男達に血の矢が通り過ぎる。


ドサッバサッ


ほぼ同時に倒れ伏す。


「馬鹿な、魔力封じの魔道具を使ってるんだぞ!?」


「この粗末な魔道具でか?」


ビキビキビキッ


バリィンッ


魔力を封じ込めようとしていた魔石が粉々に砕け散った。


「術者の魔力を受け止められず何が魔道具か、片腹痛い」


ミザール開発部門の連中が作り出す魔道具の方が何百倍も良い物を作り出す。


「出でよ天竜牙」


カァアッ


亜空間から俺の天竜牙を取り出し洞窟内が一瞬にして明るくなる。


「うぉおおおお。武技アーツ:五月雨斬り」


「遅い」


男が武技アーツを発動中に通り過ぎる。


「がはっ」


ブシャァアッ


血を吐き出して上半身と下半身を分けて絶命する。


「さてと」


「ひぃいい! 私を如何する気だ」


出入り口付近でガタガタと震えている男。


「洗いざらい吐いて貰うぞ」


(アリア)


(なんだ?)


(皆が)


振り向くと子供達の体調が悪そうにしている。


(空気が)


「おっと」


バリィンッ


堅牢を解除すると子供達が一生懸命に息をする。


危うく窒息死させてしまう所だった。


「アリア、テメェ! 俺達を殺す気か」


「ちょ、ブルングさん」


「助けてくれたんだから」


「ケホケホッ」


「スマンな。空気穴の事は忘れていた」


血と魔力で固めた堅牢に空気の通り道は忘れていた。


「ひぃっ」


「うわぁあ」


「「ひぃいいい」」


ナナリーが周囲の惨状を見て悲鳴をあげてブルング達も悲鳴をあげた。


ダッ


その隙を突いて目の前の男が子供達へと迫る。


ザッ


アンロッドが小さな体を命一杯広げて立ちはだかろうとする。


「お前さえ居なければ」


「来い! ブリューナク」


ピィイイッ


ブルングの召喚獣ブリューナクを呼び出す。


そのままブリューナクは男の腹目掛けて突進する。


「グハッ、子ドラゴンだと」


くの字に折れて吹っ飛んだ。


「ゲハッ、ゴホッ」


男がせき込む。


「人化」


ヒュオッ


人の体へと戻して天竜牙をしまい再び洞窟に暗闇が戻る。


「外へ出ろ」


子供達を外に出して出入口を再び閉める。


「覚えていろ、私をコケにして」


生き残った男は出入口とは違う奥にある隠し出口へと向かう。


「どうしてだ!? なんなんだ!!」


男は目の前に通れる穴が開いている出口が見えない何かに塞がれている。


「待たせたな」


子供達を街へと送った後に戻ってきた。


「ひぃいい!」


男は再び戻ってくると思っていなかった事に驚き悲鳴をあげた。


「さて、夜は長いんだ洗いざらい吐いてもらうぞ」


「殺さないでくれぇえ」


ジワアァッ


「だらしがない」


失禁する男に眉を潜める。


「さぁ、話して貰うぞ」


場所を移動させ広場に戻る。


ブシュッ


ジュルルルッ


自動吸血のスキルが発動して死体から血液を奪い去っていく。


「お前もこう成りたければな」


「話します。だから命だけは」


「それはお前次第だ」


ニヤッと笑って男の目的を話させた。


先ほど言っている通り、男は魔族を平民が召喚した事について犯行に及んだそうだ。


「なぜ、魔族だとダメなんだ?」


「魔族は悪だ! 人間への悪影響は計り知れない」


男は頑として信念を曲げようとしなかった。


「で、誰が雇い主なんだ?」


ドクンッ


男の表情と心音が変わった。


「魔族が居る前提にしてはお前ひとりの犯行ではお粗末すぎるな」


目の前の男からは小物の雰囲気しか感じない。黒幕が居ると踏んでいる。


「私は決して」


ズブッ


血で出来た針を男の頭蓋骨を貫通させて突き刺す。


「あががががっ」


「お前の意見はいらん。お前の雇い主は誰だ」


脳をかき乱されて呂律の回らない声を上げる。


バタバタバタッ


ドンドンドンッ


複数の足音が聞こえてきて兵士達が不可視のダークフィールドで立ち往生している。


「助けてぐでぇ」


男は最後の力を振り絞って助けを求める。


「ちっ」


ドサッ


バリィンッ


ダークフィールドを解除すると兵士達が中へとなだれ込む。


「抵抗するな」


「その男を如何するつもりだ」


兵士たちは俺を敵と認識して武器を構える。


「シャドウワープ」


トプンッ


俺は影の世界に入り込み街へと戻る事にした。


翌日、この近くで最大の盗賊団が壊滅したという話で持ちきりとなった。


「魔族の仕業らしいわよ」


「まぁ、悪党同士でつぶし合ってくれたのね。主人も安心して商いができるわぁ」


「なんたって貴族の人が生き残っていたけど」


「廃人になっちゃったんだわ。怖いわねぇ」


町の人々から真実と予想が織り交ざった情報が流れた。


「アリアは良い魔族だ」


「良い魔王です」


ブルングやナナリーがその話を聞くたびに不機嫌になる。


「気にするないつもの事だ」


「それで、何か分かったの?」


「アイツ自身の事はな・・・ただ裏で糸を引いていた奴はわからんがアレで牽制は出来るだろう」


廃人と化したアイツ自身が牽制として役立ってくれる。


ブルングやナナリー達の両親には感謝されて動き回ってくれているが地位の低い爵位では限度があるらしい。


精々、噂の魔族について緩和されるレベルだ。


「遅くなりましたが有難うございます」


「さすが魔王様だぜ。すげぇ戦いだったぜ。俺も何時かは」


「ありがとうです」


「助かりました」


「ありがとう」


5人の子供達から感謝の言葉を述べられる。


「気にするな。アンロッドのついでだ」


「素直じゃないですね」


「照れ隠しか」


「ブルングさん」


「その辺で」


「そうなの?」


「違う」


「「「「「アハハハハッ!」」」」」


子供たちが笑う・・・一歩間違えればここには居なかっただろう。

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