授業
「では、昨日のおさらいからです。このダイダロス国では500年も前から召喚魔法について研究をしてきました。召喚魔法に関して右に出る国は無くモンスターを使役する事で様々な分野に貢献し生活を支えてきています。皆も生涯と共にするモンスターを選び生きていく事になるでしょう。この学校ではその基礎を学ぶ場所です。昨日使役するモンスターとは3年間だけ従ってもらう魔法陣で契約して貰いました。モンスターにもランクが存在しています。ブルングくんのドラゴンがモンスターの中でも最高位ですね。私達はモンスターを召喚獣と呼んでいます」
先ほど話しかけてきた少年ブルングの肩に乗った子ドラゴンが鳴く。
「契約した召喚獣は基本的に主人の命令しか聞きません。私達の会話も理解しています。だから召喚獣達は理解してくれます」
「先生」
「はい、なんでしょう?」
「その、魔族だとランク場合は?」
「未知です。先生も過去の事例を探しましたが見つかりませんでした。前代未聞です・・・一応は上に報告して調査して貰っていますが」
「そうですか」
「俺からも良いか?」
「なんですか?」
俺には冷めた言い方だな。
「召喚できるという事は返還も出来るのか?」
「出来ます。なんででしょうか?」
「早く返還しないと大変な事になると思うぞ」
「と、言いますと?」
「その子ドラゴンは生まれて間もないのだろう? で、あれば親が血眼に探し回っているだろ」
「確かに・・・早くしないと大変なことに」
俺達の会話を聞いてブルングが青ざめる。
ギャォオオオッ
遅かったな。
ビリビリと空気を揺らす大音量の咆哮が学校中に響き渡った。
バサバサバサッ
翼音と共に巨大な影が下りてくる。
グルルルッ
巨大なドラゴンの頭が窓から見えて、目が室内を見渡す。
「うわぁああ」
「きゃぁああ」
再び子供たちが恐怖して教室から逃げ出す。
ヘタッ
ブルングが腰を抜かして涙目になる。
ギャォオオンッ
バリィンッ
至近距離での咆哮で周囲の窓ガラスが割れる。
チロチロッ
開かれた喉奥から炎が見え始める。
「教室を焼く気だぞ」
「アリア様」
「なんだ?」
「守って」
「お前は守るぞ?」
「皆守って。これはお願いでもない命令だよ」
「分かった」
やれやれと思いながらドラゴンの口前へと出る。
「ブラッドエリア」
校舎全体を血の領域で包み込む。
ブワァアッ
真っ赤なブレスがブラッドエリアの周りを這うように包む。
プスプスプスッ
長いブレスを放ち終わったのと同時にエリアを解除する。
ドラゴンは焼け焦げていない教室を不思議がる。
グッ
!!?
俺が窓から出て行くとドラゴンは一歩下がった。
「我を忘れても力量差は感じるか」
子供を奪われて理性を失くしたドラゴンでも俺の存在を認識したらしい。
「名も無きドラゴンよ、お前たちの子供を奪ってしまった事に対してコチラの落ち度がある事を認めよう。だが、釈明の余地を残してくれないか?」
グルルッ
ドラゴンは俺に目線を外さす唸る。
バサバサバサッ
すると片割れがやってきた。
短い会話をして怒気を沈め始める。
「ブルング、出てこい」
「ひぃいい」
教室からブルングの悲鳴が聞こえる。
「ブルングに召喚された子ドラゴン」
パタパタパタッ
小さな翼を必死に動かして教室から飛んでくる。
「お前たちの親に説明をしてくれないか?」
ピィイッ
小さく返事して子ドラゴンは親ドラゴンへと向かう。
グルウウッ
ピィイピィイ!
何度かの会話を交わして戻ってきた。
グルゥ!?
最後に一際驚いた唸り声を上げた。
カッ
ドラゴンの証である翼や角は残したままで二頭のドラゴンは男女の人化姿に変わった。
「アリア魔王様とは露知らず」
「我々の失態のお許しを」
片膝をついて頭を下げる二人。
「此度は人間側に落ち度がある。お前たちは悪くない」
「「ありがたき、お言葉」」
「お前たちの子供から説明はあったと思うが3年間、人間側で育てさせるの一興だとは思わんか?」
「たしかに我々の狭き世界で育つよりかは」
「見聞を広めるのは良いかと」
「であろう。そういう俺も使役される側なんだがな」
「「なんと!? 魔王様を従える人間がいるとは」」
2人の興味はそっちに移ったようだった。
「俺のマスターであるアンロッドだ」
教室の影からコチラを見るアンロッドがビクリとする。
「あの子供がか?」
「俄かに信じられない」
「俺もだ。だが、それも一興ではないか?」
「魔王様が居れば我が子は安泰です」
「よほどのことがない限り我らは干渉せずに致しましょう。では」
カッ
再びドラゴンの姿に戻って大空へと羽ばたいていった。
「約束通り守ってやったぞ」
教室へ戻る。
「本当に魔王なんだね?」
「もちろんだ。ドラゴンに引けは取らないぞ」
「アリアさん、先ほどのドラゴンは一体?」
おずおずと女教師が質問する。
「アレは竜魔王一族の者だな」
「竜魔王!?」
その答えに驚く。
「野生ではなく魔族の位置にいるドラゴン族だな」
「つまり、その子ドラゴンも将来は」
「魔族である」
!!?
普通のドラゴンだと思っていたら魔族だと言う事実に衝撃が教室に走る。
「そんな、僕の召喚獣が魔族なんて」
「魔族だと分かった途端に手に平返しか? 人間の得意技だったか?」
「そんな言い方!?」
「ここで分からせるのも大人の役目だろ」
「そうですね・・・」
「お前はどうしたい?」
パタパタと飛ぶ子ドラゴンに問う。
ピィイピィイ
「そうか」
「ドラゴンの言葉は分かるんですか?」
「細かくは分からん。が、なんとなく分かる程度だ。それは魔力パスがつながっているお前なら伝わっているんじゃないか?」
「う、うん。一緒に居たいって」
「それがコイツの答えだ。ドラゴンに認められし者。それは誇らしくは無いのか?」
「う、ううん」
「なら、誇れ。対等となる者を呼び寄せる力を持っているんだろう?」
「そう、だね」
男って単純だな。
「なら、魔王をよび寄せた私は一体?」
ポツリと呟かれた問いは難しい。
「お前は、アレだ聖女や勇者の素質を持っているという事だな」
「そんなのにはなりたく無いんだけど」
やっぱダメか。
「あくまで素質があるというだけだ。無理に開花しなてくても良い」
「そうだね」
無理に聖女や勇者にならなくても良いしな。




