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主人

「見知った天井?」


少女、アンロッドは自室で目を覚まして天井を見て呟く。


「起きたか?」


パラッ


視線を移せば、見知らない女性が本を捲っている姿が映る。


「召喚魔法、興味深いな」


女性とは思わせない口調で呟く。


「綺麗」


月明かりに照らされた薄い青のロングヘアーはキラキラと輝いて見えていた。


「それは光栄だ」


「はっ!? お姉さんは」


ガバッとアンロッドは起き上がる。


「急に起きない方がいい」


「きゅぅ」


バタッ


急に起き上がって軽い貧血を起こしてベッドに倒れる。


「お姉さんは誰?」


「誰とは心外だな。お前が呼び出したんだろ?」


「え?」


アンロッドは困惑した表情をする。


「召喚魔法、今日の授業で習い実践したのであろう」


教科書の最初の方に書かれていた物を読み上げる。


「あの魔族の人は?」


「目の前に居るぞ」


「え?」


サァアア


アンロッドは俺があの時の魔族だと再認識して青ざめる。


「だって目が」


「これは人化しているだけだ」


ギョルッ


目を元に戻してアンロッドが小さな悲鳴をあげる。


「本当に魔族なの?」


「正確には第九魔王だ」


「だい、きゅう」


「喜べ、お前は魔王を召喚した術師だ」


「きゅぅ」


再び気絶するアンロッドに俺はため息をつかざる負えなかった。


・・・


「あの・・・」


「なんだ?」


「この状況は?」


「添い寝だが?」


「なんで?」


「俺も眠たかったからな」


翌朝、アンロッドが目を覚まして俺に問いかける。


「魔族も寝るの?」


「魔族を何だと思ってるんだよ」


「寝ないで野蛮な事を四六時中考えていると」


「そんなの一部だけの話だろう」


「一部はいるの?」


「それは人間側にもいるだろう。寝ずという部分は無いけどな」


「本当に魔王なの?」


「これでも1000年は魔王をやっているぞ」


正確には990年位だが誤差だろ。


「とても古い魔王だね」


「俺よりももっと上の魔王も居るからな。不死魔王とかな」


「聞いたことがある魔大陸に住む魔王達の逸話・・・おとぎ話かと」


「魔大陸や魔王も実在するぞ・・・900年くらい前に聖大陸との全面戦争を視野に入れた会議もしたんだからな」


「え? そうなの?」


「あの時は魔大陸と聖大陸の存亡を掛けた戦争直前までいったな。まぁ矛先を収めて以降は不干渉を貫いていたからおとぎ話になるのも無理はないか」


あの頃を懐かしんで語る。


「なんで私の召喚に魔王が?」


「それは知らん。それとアリアな」


「アリア魔王様」


「魔王もいらん。お前が俺のマスターなんだからな」


「せめてアリア様で」


「何でもいい」


「いつまで、こうしているの?」


「何時までもこうしていたいぞ」


「ひゃんっ! どこ触っているの」


「将来に期待だな」


「もう起きる」


バサッ


アンロッドは起き上がってベッドから出て行く。


「アンロッド」


「ん?」


「私の名前はアンロッドです」


「改めてアリアだ。再度問おう、お前が俺のマスターか?」


「そうです」


「3年間よろしく頼むぞ」


「こちらこそ」


ヒィインッ


首元に黒い文様が浮かび上がった。


恐らく契約完了の証だろう。


子供にしては冷静というか冷めているというか・・・


ゴソゴソ


「何をしている?」


「着替えているの」


「一人でか?」


「平民だから」


だからアンロッドだけ廃れたローブを着ていたのか・・・昨日逃げていった子供達は綺麗な格好だった。


「こういう時は俺に命令をすればいいんだ」


「え? ってちょっと」


「ほら、バンザイしろ」


アンロッドの薄汚れた衣服を脱がす。


「着替えは何処だ?」


「そっち」


「隠す必要はないだろ?」


「煩い」


小さな体を両腕で隠してもな。


「それ位元気にすればいいのに」


「早くして。寒い」


冬に差し掛かった季節、部屋に暖房もなく半裸状態のアンロッドが震え始める。


「平民だと衣服も使い古しか?」


「そう。魔王様には分からないこと」


嫌味なんだが少女が言っても可愛いだけだな。


「衣服には困らないからな」


「そんな高価そうなドレスを着てるから」


「1000年近くは着続けているドレスだからな」


「1000年!?」


その長さにアンロッドは驚いた。


「そんな、綺麗で新品のようなドレスが?」


「俺の血と魔力で作られたドレスだ。金は掛かっていないぞ。無料だ」


「血と魔力で・・・魔法ってそういう使い方もあるの」


「種族の関係上できるだけなんだ。やろうとする同胞はいないがな」


「そうなの」


「それより、時間は大丈夫なのか?」


「あ! あぁ!!」


それからのアンロッドは慌ただしく準備をしていく。


「どこまで付いてくるの!」


「マスターに付き添うのが召喚された者の務めだろう」


「そうなの?」


「魔法陣にはそう書いてあったぞ」


「え?」


「知らないで使っていたのか?」


「召喚魔法陣は召喚する際に必要な行程だと」


「習っていなかったのか・・・では召喚されたモンスター達が不憫でならないな」


「どうして」


「恐らく魔法陣によっては契約方法が違ってくるんだろう。三年間と言わず一生、絶対服従の召喚魔法陣で呼び出されたモンスター達は死ぬまで使いつぶされる運命になるだろう?」


「そんな、奴隷のような」


「まぁ、聞いてみる方が早いな」


目的の場所へとついた様だ。


ガヤガヤ


中から少年少女たちの元気な声が漏れ聞こえている。


「何もしないで」


「それは命令か?」


「お願い」


「分かった」


ガチャッ


扉を開き中へと入る。


学校の構造は何時になっても変わらないな。


子供達が俺達に注目する。


直ぐ近くには昨日召喚したであろう者達も居る。


ツカツカツカッ


早歩きで次席へと座るアンロッドが座る。


俺は一歩後ろ下がって立つ。


「アンロッド、昨日は無事だったのか?」


そこで話しかけてきた少年。


「うん」


小さな声で返す・・・今朝の元気は何処へ行ったんだ?


「んだよ、昨日の召喚獣に殺されたかと思ったんだぞ。そうしたらこのクラスも明るくなったんだけどなぁ」


その言葉に同調して周囲が笑いだす。


これはアレか?


イジメってやつか?


「ごめんなさい」


なんで謝ってんだ?


「で、この綺麗なお姉さんは誰なんだ?」


「・・ぞく」


「え? 聞こえないぞ」


「昨日の魔族だよ」


「・・・え?」


少年がアンロッドと俺を交互に見る。


「うわぁあ」


少年が叫び、恐怖が伝播する。


「施錠」


逃げ出そうとする子供達が扉に殺到するが開かない。


「な、なんで開かないの!」


「どうして!」


開かない扉に困惑する子供達。


「おい、ガキ共」


俺の言葉に驚き振り返る。


「いままでこの子に何して来たのか知らないが、今後は自分の行動に責任をもって」


ゴスッ


「何をする?」


アンロッドが俺の腹にパンチしてきた。


「何もしないでって言ったでしょ」


「これ位」


「これは命令だよ!」


ヒィインッ


アンロッドの目に光が宿り、俺の首を締める。


契約時の文様が首回りに焼き付いてソレが違反行為に対する罰則らしい。


「分かった」


「分かってくれればいいんだよ」


ガチャッ


「皆さん、何をしているんですか? 着席してください?」


そこで昨日の女教師が入ってきた。


「貴女は?」


「昨日はどうも」


「貴女は!? 昨日の!!」


女教師は杖を取り出して構える。


「先生、アリア様は大丈夫です」


「え?」


「マスター、ここは呼び捨ての方がいい」


こそっと助言をする。


「アリアは私の命令のちゃんと従ってくれます」


「しかし、って契約しちゃってますね」


女教師は俺の首を見て諦め始めた。


「契約紋がある以上は主人の命令に従いますし・・・アリアさんも認めているという事ですね」


「マスターへの危害を加える奴がいなければ自ら動く事はしないから安心してくれ。なぁ、ガキ共」


「「「ひぃい!」」」


「なるほど、話が見えてきましたがあまり脅さないでください」


「これからの事を思って叱るのも大人の役目だろう?」


「それは私の役目です」


「それは悪かったな」


「魔族と人間とでは価値観も違うんです」


「それもそうだな」


パンパンッ


「さぁ、皆さん授業を始めますよ」


手を叩いて子供達は席に座る。

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