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決着①

ダンッ


最後の最後まで踊り切り曲が終了を告げる。


既にルーインの限界が来てバーン達は退場している。


四曲目の意味がない事は誰の目に見ても明白だ。


パチパチパチパチパチッ


舞台を独壇場にした俺達には諸外国から来た王侯貴族の拍手喝采を一身に引き受ける。


四方向に向けて頭を下げる。


その時バーンがルーインを介抱している姿が目に入る。


その眼には怒りともとれる感情が浮かんでいた。


舞踏会の花形はやはりダンスであり最後まで残った者に送られる。


「解除」


ブワッ


再び黒い魔力に包まれて一瞬にしてドレス姿へと戻る。


まだ見たことの無い貴族たちが驚きの声を上げる。


あの難易度の高い三曲目を踊り切ったのが少女2人による物だと思っていなかったようだ。


手を重ねて俺達は戻る。


「お母様、すっごく楽しかったわ」


アリシアは笑顔で汗も拭かず母に語り続ける。


「助かったアリア」


「貴女のお陰で孫娘が恥をかかずに済みました」


ルーデシアとクラムが礼を言う。


「アリシア、すげぇな」


「カッコよかったですわ」


ガルムとロッテが賛辞を贈る。


こうしている内に周囲は見知った者達に挨拶へと動き始める。


もちろん、孤立している俺達は挨拶する者達は居ないから内輪だけで舞踏会を楽しむ。


「これは、これは三国同盟の諸君。ご機嫌如何かな?」


すると、新生レーヴァン聖王国の国王が現れた。


挨拶という雰囲気ではない。


「ほぅ、この者達が」


軽く会話を交わして今度は俺達に目線を移す。


「ん? どこかで」


恰幅のいい国王は俺の顔を見て眉を顰める。


「いや、ありえんな。王族の品位を落とさぬように気を付けるのだな」


そういって去っていく。


「アリア様、何処へ?」


「風に」


俺は近くのバルコニーへと足へ運ぶ。


「2人共準備はどうだ?」


「準備万端です」


「何時でも行けるわ」


グラス片手に独り言を話す俺に答える2つの影。


「そうか」


ドッ


背中に強い衝撃が走り、上半身がバルコニーの外側へと傾く。


グルンッ


上下が逆さまとなり後ろにいる人物を目の当たりにした。


「お前のせいで」


怒りに満ちた目をしたルーインの姿だった。


ニィッ


俺は口の端を上げて笑う。


タッ


直ぐに踵を帰して逃げていくルーイン。


バシャァンッ


湖に面した城のバルコニーから落ちれば水の中へと引きずり込まれる。


・・・


「アリシア・ヴィルク・サーペンティン、貴様との婚約破棄をする」


舞踏会は終演に向けて進行している時に事は怒った。


バーン王太子が婚約者のアリシア王女を突き飛ばして婚約破棄宣言を声高く言い放ったのだ。


「バーン王太子、その言葉本気で言っていますか?」


「そうだ! 既に父上の許可も降りている」


王太子の言葉に諸外国の貴族たちは新生レーヴァン聖王国の国王へと視線を移す。


言葉の真偽を確かめるためだ。


「アリシア・ヴィルク・サーペンティン王女とバーン・ウィル・レーヴァン王太子の婚約破棄をワシは許可する」


「そんな」


アリシアは俯く。


「貴様の行いは父上には報告済みだ。私達レーヴァン聖王国は神聖な国だ。心の汚れた血を入れる訳には行かないのでな、そのような女が王妃になるのは我慢ならん」


「ルード様、婚約破棄の理由を説明願います」


事情を知らない者にとっては突然の事で着いていけない。


「貴様の汚れた血を持つ娘は我が国には不要という事だ。コレを持て」


レーヴァン国王ルードは長い巻物を解いてアリシアがルーインへ行ってきた事を連ねていく。


「以上を持って、新生レーヴァン聖王国はルーイン嬢を貶めたアリシアを学院及び国外追放とする。家族ともども帰ると良い」


その言葉に十数名の貴族たちが拍手する。


「証拠はありますのか?」


「ふんっ。ここに書いてあるではないか?」


「その書いてある事が全て私が行ったという証拠です」


「バーン及び周囲の生徒達からの証言も揃っておる。言い逃れとは見苦しいぞ。アリシア」


「異議ありだぜ! ルード国王様」


「私たちが居た時間帯にイジメられるわけがありませんわ」


ガルムとロッテがアリシアの前に立つ。


「そんなの口裏を合わせれば如何とでもなるわ」


【ブーメランだな】


「なっ!? 誰だ?」


会場に響き渡る声にルードが周囲を見渡す。


【口裏を合わせればどうとでもなる。それはお前たちに返すぞ】


「誰だ! ワシをお前呼ばわりとは不敬罪だぞ」


バァンッ


バルコニー側の窓が勢いよく開いて皆の注目が集まる。


スゥウウっ


月夜に当てられて空中に何かが浮かぶ。


「人だ!?」


「少女が空を飛んでいるぞ」


近くで目撃していた貴族たちの声が伝播していく。


ビチャビチャビチャッ


ドレスに含まれた水が重力で落ちていきバルコニーを濡らす。


べチャッべチャッ


歩く度に水分が床へ広がっていく。


「全身水浸しだぞ」


「まさか!?」


湖に面したバルコニーから水浸しの少女が現れた理由を誰しもが予想した。


「アリア様!?」


「その姿は一体」


「誰かタオルをお持ちになって下さいまし」


見知った顔ぶれは直ぐに名前で呼んでくれる。


「良い大丈夫だ。ブロワー」


ブワァアッ


前から強烈な温風を浴びて体中の水分を吹き飛ばし瞬時に蒸発させていく。


パサッ


前にかかった髪の毛を後ろへと持っていく。


「アリア様、今の姿は・・・今まで何処に?」


アリシアの質問の答えは既に全員が予想していた。


「そこの湖に落とされたんだ」


「一体誰にですか?」


スッ


俺はとある人物をゆび指して皆の視線が向かう。


「ち、違う私じゃない!?」


顔面蒼白のルーインが叫ぶ。


「ではコレをみて頂こう」


ゴソゴソッ


ポンッ


胸の谷間から拳サイズの水晶球を取り出す。


パチンッ


バタンバタンバタンッ


シャァアアッ


指を鳴らすと全ての窓・扉が自動的に閉まり、カーテンが一人でに閉ざされた。


「暗転」


高い位置のシャンデリアの光量が落とされていき周囲が暗くなっていく。


辛うじて周囲の人が見れるほどの光しか残さなかった。


カッ


俺の持っている水晶が光を発し、上の空間に立体映像が流れ始める。


それは20分ほど前のバルコニーの映像だ。


まず、俺が会場から出てきてバルコニーの縁に寄りかかっていた。


その後ろから忍び寄る人影が移り込む。


「嘘・・・こんなの嘘よ!」


自分自身が俺を突き落とす瞬間が流れるのを見て絶叫する。


バシャァアアンッ


俺が湖に叩き落とされた所で映像が切れて、シャンデリアの光量を戻す。


「ルーイン男爵令嬢、お前は俺を殺そうとした。これは立派な殺人未遂だ。証拠は見ての通り! そしてコレを見ろ」


バッ


パラパラパラッ


何かを投げるふりをして会場の上から大量の紙が降り注ぐ。


それを受け取り見た貴族達が絶句する。


「レーヴァン聖王国復活計画・・・これはどういう事か説明願おうか」


紙を握りつぶしてルーカスが問う。


「こんな書類ワシは知らぬ!」


「知らぬとは言わせません! 私達を騙して魔大陸に送り込んだ外道め!」


いつの間にか俺の隣に立っていた勇者の一人シズカの悲痛な叫び声。


「おい、コレを見ろ!」


「血液採取の使い道、勇者召喚にだと!?」


「私達の血を使ったってこと!?」


勇者召喚には王族の血液と大量の血液が必要だった、その調達方法が「血液検査」による物と記載されていた。


最近、血液検査なる物が聖王国が全国民に向けて動いていた事は知っている。


それは学院に通っていた王族・貴族の子息たちも含まれている。


「アンタ達は異世界から無理やり私達を拉致して勇者という神輿を担がせ魔大陸へと向かわせた。生き残ったのはたったの5人よ!」


シズカが涙を流し今までの怒りを込めて声を枯らす勢いで全員に聞こえるように言う。


「ルード国王いや、ルード! 私達三国同盟はお前を許さない。己が欲望の為に息子を娘たちの血を使い。あまつさえこんな少女たちを魔大陸へ送り込んだ所業に」


「知らん、ワシは知らんのだ」


ルード国王が奥へと逃げようと後ずさる。


ドッ


「逃げるなよ小僧」


「貴様、誰に?」


俺の顔を間近でみたルード国王の顔から血の気が失われていく。


シュゥウウッ


目の色が元の色へと戻っていく。


グググッ


バサッ


ヴァンパイアの羽が背中から生え、竜の角がコメカミから天をつくように伸びていく。


「うひぃいいい!」


ドサッ


ルード国王が腰を抜かす。


「ま、魔族だぁあ!!」


誰かの叫び声が響き渡り会場中が混乱する。


パァンッ!


両手を叩き会場中に響き渡らせる。


「狼狽えるな! 聖大陸の王侯貴族の者どもよ」


声も風の拡散魔法で全員に届かせる。


「たかだが、一人に何を怯えている。お前達は未来を担う王侯貴族だろ!!」


腹から出した声はビリビリと空気を震わせる。


「さて、続きをしようか」

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