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真相へ

グシャッ


「くそっ!」


自分の執務室で小さな紙を握りつぶす宰相の男。


『この国の機密は頂きました。猫の目より』


紙にはそう書かれていた。


「痕跡は絶対にある筈だ。探し出せ」


苛立ちを押さえらえず部下達に怒りをぶつける。


部屋は荒らされていて終わっていた書類や未処理の書類がばら撒かれている。


それだけならは怒りを抑えられた。


問題は秘密の資料を隠していた金庫が開かれて件の紙が入っていた事だ。


不定期に侵入してくる賊を何度も迎撃してきたが、油断していた。


「目撃情報です」


賊は3人、全員ピッチリとした服装をしておりシルエットから女の三人組。


何故か腰から紐を伸ばしていたという少ない情報が上がってきた。


「こんな情報ではダメなんですよ」


余計に苛立たせた。


・・・


「乾杯」


チィンッ


やっとの思いで厳重な宰相室から重要書類を奪い去った。


俺の部屋でワイングラスを掲げるアキラと最近主従関係となったシズカだ。


無事人化の魔法を覚えて帰ってきた。


長期的な病気という事で休んでいたが復学を果たす。


「アリア様ぁ、ご褒美くださぁい」


トロンとした目でおねだりしてくるシズカ。


「仕方無いやつだな」


シズカの顎を持ち上げて顔を近づける。


「あぁ~! アリア様からご褒美を貰うのは私が先です!!」


「先輩は私よりずっと一杯貰ってます。今日位は先に下さい」


「・・・むぅ」


アキラは少しムッとしているが騒がない所を見ると譲ったようだ。


チュッ


「んっ!」


「はぁ」


「ストーップ! ペースが速いです!! 夜は長いんですから」


我慢できなくなったアキラが割り込んできて俺達を引きはがす。


「それにコレをあの子に渡せば勝ち確定ですよ」


奪い取ってきた成果を指さすアキラ。


そこには勇者召喚に関する事が詳細に書かれていた。


「私達が捨て駒だったなんて・・・」


シズカ達召喚者はこの国に利用されるために呼ばれた捨て駒だった事まで書かれている。


「慰めてください!」


どさくさに紛れて俺に抱き着くシズカ。


「そろそろ爆発する頃合いだな」


最高のタイミングを狙っている。


「婚約破棄イベントは近いですよ」


「恐らく城の舞踏会ね」


学院生となり2年で何処まで成長したかを見るための社交場である。


当日は各国の重責の者達が集まるという格好の場所だ。


「言わせてしまえば」


「「コチラの勝ちですね」」


チィンッ


3人で悪い笑顔で夜を過ごす。


「アリア様、いつもお似合いです」


いつも制服で過ごす学院であるが、今日は城での舞踏会・・・各自が最高の衣装を身に纏って参加する。


ガラガラガラガラッ


「緊張していますの?」


「はい・・・体には沁みついてますが、旨く踊れるか」


前世の記憶に引っ張られてアリシアは緊張していた。


「今日まで良く耐えましたわ」


「でも、今日に私は」


婚約破棄されるという空気を持ち始める。


「この2年間の集大成を見せる大舞台ですのよ。胸を張りなさい」


「でも」


「14年もの生きた記憶も持っているんでしょう! それを無駄になさいますの?」


「そんな事は・・・」


「大丈夫ですわ。私やガルム様にロッテ様が就いております。本日は家族が来ているのでしょう?」


「もし、父や母がこの国に対して怒ってしまったら」


話によるとアリシアの両親が婚約破棄に対し激怒する事で国家間戦争が巻き起こるという。


「そうなればガルム様やロッテ様の国も巻き込んでしまって・・・傾国の姫として私は語り継がれます」


「そうはさせない為に私は裏で動いて来ましわ。安心してくださいまし」


「はい」


ギィッ


「到着いたしました」


ガチャッ


馬車が停まり扉が開く。


王宮から差し込む煌びやかな光が馬車を照らす。


「さぁ、お手を出してくださいまし」


「はい」


先に降りてアリシアをエスコートする。


本来なら男性の役目だが、誰もアリシアをエスコートする事は無かった。


婚約者のバーンがその役目を放棄しているのが原因である。


他に頼れる人物はガルムだがロッテが居たため断念する。


他の令嬢たちはクラスの男子か兄か弟のエスコートで入っていく。


「サーペンティン第一王女アリシア様、アリア様ご入場」


受付に名前を言うと拡声魔法で名前を呼ばれる。


コツコツコツコツ


「アレがアリシア王女様・・・なんと美しい」


「隣におりますのがアリア様ですね。白と黒のコントラストがまた」


アリシアのプラチナブロンドに合う色は白いドレスだ。


変わって俺は黒いドレスだ、薄青い髪に黒のドレスは夜空を連想させるとアキラに言われたからな。


対局する色のドレスを着る事で互いの魅力を上げていく形をとる。


俺の方が背が高くアリシアが小さいからまたいい塩梅の演出を出している。


太陽光遮断魔道具を互いにつけているのもアクセントにしている。コレはアクセサリーとしても一級品の出来だ。


王侯貴族たちが集まる中を通り会場へと入っていく。


視線の先にはアリシアの両親であるサーペンティン国王陛下とその王妃が肩を並べていた。


その表情は宜しくない。


まぁ、婚約者と共に現れるのが普通だ。


その隣にはルーデシアとクラムも揃っていた。


「バーン王太子様、ルーイン様ご入場」


時間差で件の2人が姿を現した。


2人共白を基調とした服装であった。


ルーインの方はこれでもかと言うレースがふんだんに使われたドレスを着ている。


これがまるで結婚式場のような感覚なのだろうか?


「あれがバーン王太子」


「その隣の娘は誰だ?」


「あの噂は真であったか」


「では、やはり」


周囲の貴族たちが小声で話し合う。


サーペンティン、ベイクラム、ガルブレストの三国に加え中央の諸外国の王侯貴族まで招待されている大規模な舞踏会が開かれようとしていた。


「ごほんっ、諸外国の皆様方よ遠い土地から態々来てくれて感謝する。そして臣下の者達よ忙しい中集まってくれてワシは嬉しいぞ」


現新生レーヴァン聖王国の国王が高い位置から挨拶を始める。


「この舞踏会は諸外国から集めた子息たちの成長を見守る場であり、この時だけは貴族という目を外し子の成長を見届けてもらいたいのである。乾杯!」


「「「「「乾杯」」」」」」


グラスを掲げて舞踏会は幕をあげた。


「お久しぶりです、フルブルト陛下、マリン王妃様、ルーデシア先代女王様、クラム先代王様」


ドレスの裾を上げて淑女の挨拶をする。


「娘の事を守ってくれてありがとう」


「アリアさんには感謝してもしきれなくてよ」


あの地獄の2ヵ月で数度としか会ったことの無い2人だが親のように接してくれる。


「孫娘の晴れ舞台にはちょうどいいわぁ」


「そうだな」


違う意味でニッコリしている2人。既に4人にはこれから起こる事を伝えている。


♪~


親類たちへの挨拶が終わりを見計らった頃に音楽団がダンス開始前の演奏をし始める。


スッ


ススッ


この晴れ舞台に練習してきたダンスを披露する為に少年少女たちが中央の会場へと集まる。


「お先に」


「ですわ」


隣に居たガルムとロッテが中央へと歩いていく。


アリシアは待つしかない・・・音楽団がダンスの演奏を始める前に男性が誘うのを。


だが誰も来ない。


既にアリシアの味方をする男子生徒はいないのだから。


ギリリッ


後ろで控えているフルブルトが強く拳を握る。


「フルブルト押さえてろ」


「しかし」


怒りが込み上げて溜まらないのだろう。


「では、お嬢さん。私と一緒に踊って頂けないか?」


嘆息して俺がアリシアの前に立ち男性の誘い文句を言う。


「え?」


予想外の行動にアリシアが固まる。


「でも、アリアさん、様は女性で」


「おや、この格好がお気に召さないと、では」


ブワッ


俺の周囲に闇の魔力が立ち登る。


「これで如何かなお嬢さん」


黒いスーツを身に纏い、長い髪の毛は後ろで結わった姿を現す。


「これは凄い」


「魔法とはこんな事も出来るのか」


「ほぅ」


「あの男装の麗人は誰だ?」


周囲で見ていた貴族達が感嘆の声を上げる。


「はい、喜んで」


俺の手を上から重ねてエスコートを開始する。


全員が揃ったというタイミングで演奏が開始した。


「あなた、あの子があんなに笑ったのはいつ以来かしら?」


「子供の時か」


子供の成長を見守っていたマリンは涙を流し、フルブルトはマリンに寄り添い見ていた。


「アリア様、男性パートをいつの間に覚えたんですか?」


「さぁ? 何時だろうな」


「クスッ、いつもより凛々しくみえるわ」


「だろ。ついて来れるか?」


「はい!」


ダンッ


同時に足を出し、自分たちの動きを滑らかに動かし周囲とぶつからない間隔を取り踊り続ける。


僅か5分子供の体力で踊るには大体ここで終了となる。


パチンッ


終了かと思いきや演奏が続く。


その場で断念し親もとへ帰る少年少女たち。


残ったのは数組だ。


「踊れるか?」


「えぇ!」


アリシアの返事に俺達はもう一曲踊り始める。


今度は曲調も変わり大人でも難しいと言われているダンスだ。


「疲労回復、体力回復」


「何か言いましたか?」


「なんでもないぞ」


「アハハッ! なんだか私何時までも踊っていられそうです」


舞台の光に強く当たる瞬間を狙ってアリシアに回復魔法を施していく。


時間が進むにつれて2曲目を踊っていた子供たちも体力の限界を迎えて退場していく。


「おいおい、マジかよ」


「私たちはもう限界ですわよ」


最後まで残っていたガルム達も限界が近いのか汗を大量に掻いている。


ハァハァハァッ


二曲目が終わって何とかガルム達も踊り切った。


パチパチパチパチパチッ


周囲から拍手喝采が起こる。


残ったのはバーンとルーイン組、ガルムとロッテ組、俺とアリシア組の三組だけだった。


♪~


まだ続くのかと誰しもが耳を疑う。


「俺達は無理だ」


「限界ですわ」


ガルム達が親元の方へと戻っていった。


残るは二組。


目線が合う。


「アリシア、行けるか」


「はい!」


汗を大量に掻いているが元気よく返事が返ってきた。


「行くぞ!」


「はいっ!」


タッ


俺達が中央へと歩を進めるとバーン達も近づいてきた。


スッ


互いに踊る準備を整える。


「やるではないか田舎者が」


「鍛えてるんでね」


「ちっ」


「その余裕は何時まで持つかな?」


バーン自身は余裕そうだが、ルーインの方がばてている。


二曲目は自慢の白魔法で回復しながら踊っていたんだろうが魔力切れで三曲目は踊れそうにないな。


「前哨戦だ」

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