魔法実技
「本日は1年間で習ってきた魔法実技の復習を行いたいと思います。皆さん、冬休みだからと言って研鑽を怠っておりませんか?」
図星を突かれた者と真面目にしていた者が半々という反応だった。
「今期から編入された方もおりますから、バーン王太子様」
「うむ」
自信満々という顔で前へとでる。
ここは、広い訓練所の一つで20m程先に的が立っていた。
「得意な火の魔法で結構です」
チャッ
20㎝位の棒きれの先端を的に向けた。
「我、ここに願う。火の精霊よ力を貸したまえ、ファイアーボール!」
ボッ
シュゥウッ
10㎝位の火の玉が出現して的に向かって飛んでいった。
ドォンッ
的に当たった瞬間小爆発して的には焦げ跡が残る。
「お見事です」
え?
色々、突っ込みたい事があった。
「アリシア様、あの棒は何ですの?」
「魔法の杖ですよ?」
アリシアも含めてクラスメイト達は様々な棒きれを手に握っている。
「その魔法の杖というのは何なんですの?」
「魔法の杖は魔法の杖だろ?」
「アリア様はなんで持っているか知りたいんですわ」
ガルムのアホな回答にロッテがツッコミを入れる。
「アリア様は魔法の杖を持ってきていないんですか?」
「魔法を使うのに杖が必要なんて初めて知りましたわ」
「これだから田舎者は困る。この学院の生徒ならば知っておくべき事だな」
「この杖は使用者の魔力を魔法に変換するのに使用します。使用者ごとに癖がありますので杖は様々です」
「アリシア!? 貴様、私を差し置いて喋るんじゃない!!」
「ひぅ、申し訳ございません」
アリシアが驚いて反射的に頭を下げる。
「バーン様、今のは些か理不尽かと思いますわ」
「貴様、田舎者の癖に私に意見を言うか!」
「ぇえ! 言いますわ。私がアリシア様に質問をしたのですから答えるのは当然の事ですわ。それにケチをつけてくるなんて小さい男ですわね」
「なっ!? 貴様!!?」
「この程度で怒らないで下さいまし。王族の品位とやらが疑われますわ」
クスクスッ
クラスの数名が小さな笑いをする。
「笑うな! 私は新生レーヴァン聖王国の王太子だぞ!!」
「この学院は血筋に関係なく平等を掲げていますわ。ご自身の地位をひけらかしても意味はありませんわ」
「田舎者の分際で私に意見をするな! なら、杖無しで魔法が使えるというんだな」
怒りに任せて噛みつくバーン。
パチン
扇を畳む。
「我がアリアンロッド家はその様に教育を受けましたから。先生、実技をしても?」
「えぇ。アリア様の実力も知りたかったので・・・しかし杖無しで大丈夫ですか」
「構わなくて」
スッ
俺は位置に着く。
「ファイアーボール」
ボッシュゥウウ
俺の目の前に火の玉が現れて的へと飛んでいき着弾する。
「これで宜しくて?」
ニコッと笑うも周囲からの反応が薄い。
「詠唱省略ですか・・・」
辛うじて先生が口を開く。
「アリア様の家ではどの様な教育を?」
設定上の教育内容を話す俺に先生は顔を青くする。
「すでに実践のされているのですか」
「幼少の頃に」
「これだから田舎者は品位がなさすぎる。モンスターの跋扈する森に置き去りにされるなんて王族のやる事では無いな」
自分がどれだけ愚かなことを言っているのか自覚があるのか?
「バーン様と私が対峙する様な事があれば負けるのはアナタなのですよ?」
「この私が負けるものか!?」
「バーン王太子様・・・お言葉ですが、詠唱省略ができる魔法使いは少ないです。私も出来ないスキルなのです。彼女は既にその域に達しています事をご理解ください。今のアリア様に勝つことは難しいです」
「私が田舎者に劣ると言いたいのか貴様!」
「怒鳴らないで下さいまし。王たるもの怒りを抑えるのもの仕事ですわ。それに耳障りですわ」
「なんだと!」
ボッ
「バーン様、ここが戦場であれば今死にましたわ」
俺の前に火の玉を出現させる。
後はバーンに向かって放つだけだ。
「卑怯だぞ!」
「戦争に卑怯はありません。夜襲ですら戦術の一つに過ぎませんわ」
「くそっ! 覚えておけよ」
バーンは言い返す言葉が思い浮かばず施設を離れていった。
3人の男子生徒がその後に続く。
「先生、授業の続きをお願いいたしますわ」
「はい」
4人の生徒が抜けていったとしても授業は進められる。
「いやぁ、スカッとしたぜ」
「あんなりハッキリと言う女性はおりませんわ」
授業後、ガルムとロッテに絡まれる。
「アリア様」
「なんです?」
「これ以上バーン様に関わらないで下さい」
何処かへと行っていたアリシアが小さな声でそう告げた。
「何か言われましたの?」
アリシアがそういう事を言う子供じゃないと思う。
「私とバーン様の関係を壊すような事を止めてください・・・お願いします」
「それでいいのですか?」
「いいんです・・・」
今にも泣きそうな表情で言われても。
「分かりましたわ」
「お願い致します」
それからバーンがアリシアに事あるごとに何を言おうと俺は聞き流す事になった。
歯向かう俺が大人しくなったのが嬉しいのか調子に乗っていると誰しもが察せた。
時は流れていき時季外れの編入生が入ってくる事となった。




