侵略者達
「撃て撃て!」
「ありったけの魔力をつぎ込め!」
勇者たちは俺に向かって魔法を次々に打ち込んでいく。
属性もタイミングもバラバラで話にならない。
「大技行くぞ!」
「私達の合体魔法よ!」
2人の男女が魔力をつぎ込んだ。
「「フレイムストーム!」」
ゴォオオオオオ
巨大な炎の竜巻が足元から出現して飲み込まれる。
「これなら」
「どうだ!」
バサッ
羽ばたき一つで吹き飛ぶ合体魔法だった。
ペタリッ
「そんな・・・」
「化け物だ」
大技とやらを受けても傷を負わない俺をみて絶望の表情を浮かべる2人の勇者。
「準備運動は終わったか? そろそろ動きたいんだが?」
「聖剣エクスよ。その力を示せ」
如何にも主人公という男の子が見覚えのある剣を掲げた。
「僕たちの前から魔を打ち払え」
カッ
閃光が剣から発せられて周囲の空気を浄化していく。
「リフレクト」
反射魔法を俺の前に出現させる。
カッ
光の浄化魔法は勇者たちへとはね返る。
「グギャァアア」
「いやぁああ」
「あづぃいい」
何人かが頭を押さえて苦しむ。
「何をした魔族!」
「何を? それを放ったのはお前自身だろ」
「反射魔法で御座るよ。浄化の力を倍にして跳ね返したんで御座る」
「なら、どうしてクラスメイト達が苦しんでいるんだ」
「光の勇者なら知っているだろう。その魔法を」
「浄化魔法は邪な心を」
「そうだ、邪な心に反応する魔法だ。苦しんでいるという事は」
「違う! 僕たちは女神様に選ばれた光の勇者だ」
「本当に勇者が全員だと思っているのか?」
「え?」
「セイジ殿、ずっと黙っていたんで御座るが」
「ちょっと、ブタスケ! 何を言い出すのよ」
「ここまで来たら明かすで御座る。拙者らは光の勇者ではござらん」
「な、んだって? じゃあ皆は」
「それぞれの役割は女神様から与えられているでござるが、光の勇者はセイジ殿でござる」
「だって、皆も光の勇者だって」
あぁ、だから弱かったのか。
セイジと呼ばれた少年以外からは強者という気が出ていなかった。
「じゃぁ、光魔法は」
「セイジ殿以外は使えないでござるよ」
「あっれぇ。そこに居るのはセイジくんですか」
スゥウッ
俺の背後から勇者一行を見下ろすアキラ。
「その顔・・・アキラさんなのか?」
「アキラ殿、その姿は一体!?」
「魔族!? 魔族なの!!」
かつてのクラスメイトを見て困惑し始める。
「あぁ、次の勇者はセイジくんですか。まぁ主人公顔ですからね」
「アキラさん。どうしてソコにいるんだ。僕たちと共に」
「黙って下さい! アナタ達が私に何をしたのか分かってて言っていますか!」
感情が高ぶるアキラ。
スッ
「アリア様?」
「お前たちの間に何があったかは知らん。俺達は敵同士、殺すか殺されるだけの話だ」
「失礼しました」
「既にお前たちの乗ってきた船は沈めておいた。帰路は無いぞ」
「そんな、あの船には王国兵の精鋭たちが乗っていたんだぞ」
「この第九魔王の前では小舟同然だったがな」
「第九魔王!? あのセイウチが魔王じゃなかったのか」
「魔王が一人とは限らんだろう?」
「あと8人も居るって言うのかよ」
「拙者等だってやっとの思いで倒したんでござるぞ」
「如何するのセイジくん」
「セイジ殿・・・」
「投降しよう・・・僕たちは手を出してはいけない相手に」
ズッ
ゴロロッ
「きゃぁああ」
セイジの首が地面に転がる。
「光の勇者なら勇者らしく振舞え半端者」
「こっの! 今、投降の意を示したんでしょ」
「だから、見逃せと? 沢山の同胞を殺してきたお前たちに慈悲を与えろと? この大陸をバカにしているのか?」
ドドドドドドッ
東と西から土煙が上がってきた。
「来たか」
「オイラは豚魔王ブッデンでぶぅ。海神魔王危機の知らせを受けて助太刀にまいったぶぅ」
「俺ぁ狼魔王ヴォルフってんだ。勇者ども、覚悟しやがれってんだ」
2つの勢力が勇者一行を挟むように現れる。
「魔王が2人も」
「うわぁああ!」
「もういやぁああ」
数名の少年少女達が恐怖に逃げ始める。
「駄目よ! そっちには」
ヒュォオオッ
ドドドドオドォオンッ
退避していたアリアンロッドの精鋭たちから放たれた無数の魔法によって死に追いやられる。
「くそっ! 俺にだって勇者の素質くらいあるんだろ!」
ヤンキーの様な風貌をした男がセイジの持っていた聖剣エクスを持ちガムシャラに振り回す。
「無理よ、勇者にしか使えない剣なんだから」
「そう、勇者にしか使えない武器なんですよ」
「ブベッ」
一瞬にして間合いを詰めたアキラが少年の首を断ち切る。
バサッ
聖剣エクスを握り再び俺の所へと返ってくる。
「これが、本物の聖剣ですか」
ジュォオオ
「痛った」
握っている所から焼け始めるアキラの手。
「でも、やっと出会えた。魔剣カリバーと聖剣エクスは二本で一本の剣なんですよ。普段は別々に分かれていますけどね」
ガシャガシャッ
2つの剣を合わせると内包されている魔力で1つの剣に組みあがっていく。
「これが本来の宝剣エクスカリバーの姿です」
「さて、侵入者の諸君・・・懺悔の時間は済んだか?」
「ひぃい」
「命だけは助け」
「いやぁああ」
「なんで、こうなるんだ!」
勇者一行だった集団は中心人物を失い、聖剣も奪われた事に混乱し始める。
生きる為に魔力を限界まで使い続けて俺に攻撃をする者、泣き叫び許しを請う者、武器を捨て投降する者が増えていく。
・・・
「こいつら如何するんだ?」
「殺すのが良いブヒィ」
戦意の欠片も残さない一行を捉えて牢屋に閉じ込める。
中にはアキラを睨んでいる者もいる。
「ふふふっ、裏切り者という顔をしていますね。それはドチラだったのか考えてください」
挑発してやるなよ。
「ここは海神魔王の土地だ・・・そいつらに決めてもらう」
「分かったぜ」
一番血の気が多そうなヴォルフが簡単に納得した。
「勇者の遺体は俺の物ならな」
「如何するつもりだ?」
「勇者の血を飲めば俺も覚醒魔王になれるんだろ? 竜の爺から聞いたぜ」
「なら、オイラにもくれぶぅ」
「アレは俺んだ! 豚は引っ込んでろ」
「オイラも手伝ったんだブゥ」
「戦意喪失した奴らを牢屋に入れただけだろ」
「すまないが、ソレを食った所で覚醒魔王にはならんぞ」
「なんでだよ!」
「覚醒魔王になる条件は勇者を殺す事だ」
「ってぇ事はお前かよ!」
「覚醒魔王になるチャンスだったぶぅ」
「ねぇ、覚醒魔王ってなに?」
牢屋の中で俺達の会話を聞いていた少女が問う。
「そんな事も知らねぇのかよ。勇者を殺した魔王が更に強くなるための条件だぜ。そんでテメェ等が殺したのは継承魔王だぜ」
「覚醒魔王はオイラ達より数段強いんだブゥ。調子に乗ったら痛い目みるぶぅ。既に痛い目にあってるぶか」
「そんな・・・アレが弱い魔王だったなんて」
ズルズルと足の力を抜かす少女。
「そろそろ来たか」
モンドーの息子たちが到着した。
「親父殿の仇を討ってくれて感謝するんだべ」
「俺達は来ただけだぜ」
「ぜぇんぶ吸血魔王がやったんだぶぅ」
「大した事なかったがな」
「それでもこの地を護って貰った事には変わりねぇべ」
「アイツ等の処遇はお前たちに任せる」
「分かったべ」
「それと、アレを渡せ」
「はい」
ゴソゴソと胸の谷間からデモンズハートを取り出すアキラ。
「これは親父殿の心臓だべか?」
「あぁ、これからこの地の魔王を決める時が来る。それまで保管してくれ」
「分かったんだべ・・・本当にありがとうだべ」
「気にするな。引き上げるぞ」
こうして魔大陸からやってきた侵略者達の進撃は幕を閉じた。




