40年後
自由都市アリアンロッドの開発は様々な障害を乗り越えて進んでいった。
「区画整理もこれで一旦終了だな」
「はい」
魔王となって40年の歳月が過ぎ去った・・・この都市で俺の事を知らない魔族は旅人か子供位なものだ。
「まおー様」
「まおー様、お花~」
「あぁ、ありがとう」
孤児院の庭に咲く花を受け取り空を仰ぐ。
兼ねてから計画していた孤児院を設立して早20年。
暮らしやすい都市を目指しても孤児たちは無くならない。
「後続が育ってきたな」
「えぇ。皆様は良く働いてくれています」
「お前にも世話になりっぱなしだな」
「いえ。魔王様の力を認めたからこそです」
「いつも助かっているぞ」
「有難きお言葉です。そろそろ、9つ目を御作りになるとか?」
「魔王8カ条だな。この40年悩んでいたんだがな・・・やっと決められた」
「では、手配をしてまいります」
「頼む」
セバスはアリアン城へと戻っていく。
「まおー様、あげる~」
「お花のかんむり~、つくったのぉ」
「あぁ」
戴冠式で授かった冠を外して花の輪で出来た冠を付けてもらう。
「アリア様ぁ!」
「なんだ、騒々しい」
アキラが飛んできた。
「聖大陸から人間達が攻めてきました!!」
「なっ!?」
「現在、海神魔王モンドー様が食い止めていますが劣勢との事」
「モンドーが押されているだと」
「他の魔王様へ救援要請が送られてきました」
「上陸されたのか!?」
あのクラーケンが居る海を渡ってきたのか。
「情報には数十名の勇者が確認されています」
「数十名の勇者だと!?」
この数十年で聞いたことの無い数の勇者が生まれた?
「勇者達の攻撃は重く、モンドー様とて負ける恐れがあります」
「分かった・・・出撃準備だ」
自由都市アリアンロッドに集まった精鋭部隊を引き連れて俺は南の港へと急ぐ。
パチパチパチッ
一足先にやってきたがあの港町が焼かれていた。
「モンドー、何処にいる!」
声を上げて町の中を掛ける。
「アリアだべか・・・」
小さな声を俺は見逃さなかった。
「モンドー、そこに居るのか」
崩れた瓦礫の下から聞こえる。
「邪魔だ!」
ドォッ
魔力波で瓦礫を吹き飛ばす。
「くっ」
モンドーは全身傷だらけで倒れていた。
大量の血が流れて息も絶え絶えだ。
「今、助けてやるからな」
「オラの事は、いいべ・・・それより他のもん達を助けて欲しいべ。ゴボッ」
血を吐き出すモンドー。
「お前ほど重症な奴はいねぇ・・それに」
周囲に生き物の気配は感じない・・・。
ッタ!
「本当に生き残りがいたよ」
「マーマン以外にも居たんだな」
若い人間の気配が後ろに降りたった。
「残党狩りなんて嫌だったんだがよぉ」
「これも役得ってやつっしょ」
ゲラゲラと笑う2人組。
「お前たちがココを襲ったのか?」
振り返って問う。
「へぇ、美人じゃん」
「ラッキー。ここの連中魚人間だからさぁ」
俺をみて下卑た目を送る黒髪黒目の少年達だ。
「もう一度聞く、お前たちがやったんだな?」
「口悪いねぇ。魔族ってみんなそうなん?」
「美人なんだからもっとお淑やかに話さないとなぁ」
バキッ
「二度は言わない。侵略者はお前たちなんだな?」
「あぁ、そ」
ブシュッ
「分かった」
「え?」
答えた少年の首を刈り取り、背後に立つ。
ブシュゥウッ
首から血を噴水の如く吹き出して倒れる人間だった物。
ドサッ
「なっなっなっ!」
それを見たもう一人が腰を抜かした。
「俺達は魔王を倒したんだぞ! レベルだって」
「レベルが如何した?」
「レベル99!? 化け物だぁあ!!」
少年は叫び逃げていく。
ドシュッ
だが、空から飛来した剣によってその命は途切れた。
「あれ?」
バサバサッ
アキラが不思議な顔をして空から降りてきた。
「どうした?」
「顔もみずに殺しちゃいましたけど・・・元クラスメイトです」
「友人だったのか?」
黒髪黒目の時点で察していたが・・・
「でも、可笑しいですね。私が勇者召喚された時には誰も近くに居ませんでしたし」
「それなら本人たちに聞けばいいだろう」
「ひぃぃいい」
物陰に隠れていた同じ格好をした少年が一人いた。
「あれぇ、あそこに居るのはユースケくんですね」
アキラが不用意に近づいてく。
「近寄るな化け物! ファイアーボール」
ザンッ
「悲しいですよ。クラスメイトの顔を忘れちゃいましたかぁ?」
「へ? その顔はアキラさんなのか?」
涙でぐしゃぐしゃの顔でアキラの事を認識するユースケと呼ばれる少年。
「当たりでーす」
「なんで、魔族なんか」
「さぁ、なんででしょうね? それでユースケくんはどうして此処に?」
「僕は、僕たちは魔王を倒しに来たんだ。聖大陸に襲い掛かってくる悪の権化を断つために」
「僕たちって事は他のクラスメイト達もですか?」
「そ、そうだ! アキラさん以外の全員が召喚されたんだ」
勇者召喚でアキラだけがこの世界に先にやってきたようだな。
「ふぅん。ですってアリア様ぁ」
「勇者か・・・」
40年前のアキラや光の勇者の方がずっと強かった気がする・・・なにより勇者を倒したアキラが進化もしないのだから力の底は知れている。
「で、どうします? コレ?」
「元クラスメイトなんだろ?」
「いえいえ~、元なんですから気にしないでください」
「ちょっと、待ってくれ! 僕を殺すのか!」
「えぇ~、だってここを攻めてきたのはそっちなんだから殺される覚悟あるんですよね?」
「こんなのゲームなんだろ?」
「残念、現実ですよ。あの2人だって死にましたしね」
ニコッと笑うアキラにユースケは恐怖を感じ始めている。
「ちっ」
ここから見える沖合で停泊している大型船に魔族の気配を感じ取った。
「アリア様?」
「俺はアレを潰しに行く。ソイツは捕まえておけ」
「はい! ジッとしててくださいね」
「ひっ、やめ!」
ゴキンッ
「ほら、暴れるから折れてしまったじゃないですか」
「あぁああああ」
「私の力が強くなったみたいですね・・・人間ってもろい生き物ですね」
バサッ
空を飛んで停泊している船へと向かう。
「魔族だ!」
「魔族が来たぞ!!」
「魔法部隊、詠唱急げ」
船の上ではドタバタと慌ただしくなる。
「マーメイド達は船底か」
気配察知と魔力察知で捕まったマーメイド達の居場所を捉える。
「放っ」
「ブラッドクレセントムーン」
海上から少し上を狙って魔法を放つ。
バキバキバキバキッ
木造船の船体はいとも容易く切り裂かれていく。
「何事だぁ!」
「船に攻撃を受けました!!」
「何ぃ!」
ゴゴゴゴゴッ
支えを失った船は上から斜めにズレていき海上に叩きつけられる。
ゴボボボボボッ
切り裂かれた場所から海水が入りマーメイド達が逃げ出していく。
「がばばっ!」
「うぎゃぁあ」
海中に投げ出された兵士達がマーメイド達に殺されていく。
「クラーケンもやられているのか」
離れた場所で事切れたクラーケンが海に浮かんでいるのを見る。
ザッ
俺は港町に戻る。
「いぎぃいい」
「お帰りなさい。アリア様」
「両足を折る事はないだろ?」
「暴れるからですよ。それにこれ位で済んでいますからね」
「それもそうか」
スッ
俺は死亡したモンドーの遺体を見る。
「モンドー。済まない」
「アリア様のせいではありません。全部コイツ等が悪いんですから」
「アキラさん。どぉじでこんなごとを」
痛みに涙を流しながら懇願の目をするユースケ。
「何って、私は魔族です。アナタ達は敵です。それ以外に何か?」
パッカラパッカラ
馬の蹄の音が近づいてきた。
「アリア様。勇者の一軍を発見!! 現在交戦中ですが強い集団です」
「直ぐに行く」
ズボッ
俺はモンドーの遺体に手を突っ込む。
「アリア様!?」
「コレを預かっていてくれ。デモンズハートだ」
モンドーから心臓を抜き取りアキラへと渡す。
「くれぐれも使うなよ」
「はい」
バサッ
翼を広げて大空へと羽ばたく。
「アキラさ、ぐへっ」
「黙っていてください。武運をお祈りしています」
・・・
港町から離れた場所で戦闘音を聞きつけてやってきた。
アリアンロッドの精鋭達が勇者と呼ばれる集団と戦っていた。
その周囲には戦い敗れたマーマン達の死体が横たわっている。
「アリア様だ!」
「退け! 退くんだ!!」
俺の姿を見た、精鋭達は離れていく。
「なんだ、なんで退いて行ったんだ?」
「おい、アレ」
勇者の一団が俺の存在に気づいた。
「勇者の諸君、誰の許可を得て攻めているんだ?」
威圧を込めて言葉を吐き出す。
「ここは魔大陸だ。お前たちの居るべき場所ではない」
「だまれ、魔族ども! 人間達の世界を脅かす悪めが」
悪と来たか・・・
「では、殺される覚悟はあるという事だな」
ポイッ
俺は持っていた荷物を捨て去る。
「きゃぁあああ!」
「ケンスケ! ヒビキ!!」
2人の首を見て勇者たちに動揺が走る。
「勇者達よ、ここへはピクニック気分で来たか? なら場所を間違えたな」
ヒュオッ
ドバァンッ
「やったか!?」
「おい、フラグだろ!」
「こんな物か?」
飛んできたファイアーボールを無傷で受け止める。
「レベル99!? 全員気を引き締めろ!」
勇者たちは慌てて陣形を立て始めた。
俺の姿を見た瞬間から動かない勇者たちの甘さが伺える。




