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凄腕の医師

「医療施設をですか? しかし魔族の回復量は凄いのですから不要なのでは?」


この都市に医療施設は数えるほどしかなく、お世辞でも良い場所ではない。


テキトーな治療しかしない・・・最悪はまじないの言葉だけで終わらせてしまう場所まである。


「かすり傷程度ならいいんだがな・・・コレを見てみろ」


「建設現場での事故件数ですか」


建設ギルドからは連日にわたって事故報告書が上がっている。


主に建設時による事故だ。


「不注意もあるんだが事故に対する備えは必要だろ」


「アリア様がそう仰るならば・・・医療について詳しい人物はあのリスト以外ではどうも」


「アイツ等はダメだ・・・」


「基本自己治癒頼りですし・・・治癒魔法は光属性」


そう、ヒール系は光属性になる。使い手が居ないから自己治癒に頼るしかない。


だから医療は発展してこなかったようだ。


・・・


「凄腕の治療師?」


「えぇ。最近、この都市に進出してきた様ですね」


セバスから資料を受け取ると魔族専門の治療師がいたらしく腕は確かだという噂。


「あの治療師の方ですか?」


警邏ギルドのお目付け役の男が口を開く。


「知っているのか?」


「警邏隊でも怪我は付き物ですからね・・・大きな怪我は其処で治療して貰っている様ですね」


「そうか」


俺は警邏隊へと赴いた。


「本日は何用で?」


「大怪我した場合の対処を知りたい」


「大怪我ですかい? 最近出来た診療所に向かわせてますぜ」


「評判は良いのか?」


「えぇ、治療も丁寧だとか」


「わかった。時間を取らせたな」


直接治療をしてもらった警邏隊員へ話を聞き信憑性が増した。


「ここか」


石造りの2階建ての建物に凄腕の治療院が開かれていた。


周囲の住民からも支持を得ている様だ。


カランッ


扉を開くと消毒液のような香りが鼻腔をくすぐる。


「いらっしゃいませ。アルト治療院へようこそ。怪我をされましたか?」


ラミアの女が出迎えてくれた。


服装は白で統一されている。


「怪我ではないんだが」


「では、お体に異変が?」


「とくにこれと言った訳ではないんだが」


「怪我でも病気でもなくここへ?」


不審に思い始める女ラミア。


「リーナさん、どうかされましたか?」


奥からひょっこりと顔を出してから歩って来る。


「ホビット・・・」


体長100㎝位の少年の風貌だ。


「先生、患者さんではない方が来られたようです」


「ここは治療院ですよ。怪我でも病気でもなければ、ご用件は何ですか?」


ニコッと爽やかに話す金髪の少年だ。


しかし先生と呼ばれるだけあって白衣を身に纏って清潔感を出している。


「凄腕の治療師がいると聞いて」


「全然、僕は凄腕ではないですよ。噂が誇張しているだけです」


自身の評価に過信する素振りは無いか。


「奥へどうぞ」


促されるままに部屋へと通される。


薬の香りが一層濃くなっている。


「その棚は」


「様々な症状に聞く薬ですよ」


「調薬はお前が?」


「アルト様です! もしくは先生と呼んでください」


「失礼した」


「いえいえ」


ドンドンドンッ


「先生! 急患だ!!」


「いでぇええよぉ!!」


激しく扉を叩く音が院内に響く。


「すみません、席を外します」


アルトと女ラミアが部屋を出て行く。


「現場で落ちちまったんだ。足が変な方向に」


「こちらへ運んでください。リーナも手伝って」


「はい、先生」


「うぉおお!」


ミノタウロスの魔族が足を変な方向に曲げて運ばれていくのを影から覗く。


「何階から落ちましたか」


「3階だ・・・着地の瞬間に異様な音が」


「無理もないですよ。麻酔薬を」


「ぐぉおおお・・・すぅすぅ」


布に何か薬品をしみ込ませて痛みで暴れるミノタウロスが静かに寝息たてる。


「すごいな」


影の世界から治療現場を覗く。


運んできたサイクロプスの男は待合室へと通される。


「まずは止血を」


グズッ


迷いなくハサミに似た器具を皮膚に差し込んだ。


ミノタウロスの皮膚は固く簡単に刺さらない筈だが・・・魔法でも使っているのか?


「サーチ」


パァアッ


手に平を患部に当ててズラして行く。


「綺麗に骨折していますね。これなら・・・メス」


「はい」


女ラミア・・・リーナから小さな器具を渡される。


「先生・・・」


「今は患者に集中してください」


「はい」


まるで高度な医療術を見ているような感覚で様子を伺う。


キュゥ


「傷の縫合も終わりました。病室に運んでもらってください」


「はい」


っと、戻らないとな。


影の世界から部屋へと戻る。


「随分お待たせしました」


治療時間は30分ほどだったが、骨折を魔法無しで治療した手腕に驚きを隠せない。


「さて、どこまで話しましたか?」


「先生の腕前は事実だった事は見れた」


「やはり、覗いていましたか・・・あまり褒められた行為ではありませんよ?」


「俺はお前を欲しい」


ガチャッ


「・・・今なんて?」


眉を吊り上げたリーナが扉を開ける。


「先生を欲しいと仰られましたか?」


「あぁ、そうだが?」


「駄目です! 先生はモノではありません!! ましてやアナタのような美人な方になんて」


「リーナさん。落ち着いてください」


「先生も否定してください!」


「あんのぉ、先生」


サイクロプスの男が顔を覗かせる。


「相方をベッドに運び入れたんだが、オラはどうしたら?」


「あぁ、治療は終わってますので帰って大丈夫ですよ。後は僕達で診ますから」


「ありがとうごぜぇますだ。お金はいつも通りギルドに請求してくだせぇ」


ペコリと頭を下げる。


「ん? 魔王様でねぇか!?」


サイクロプスの男が俺の存在に気が付いて口に出す。


「魔王様って」


「この方が!?」


アルトとリーナが同時に振り返る。


「この都市の新たな魔王様でさぁ! オラたちの建築ギルドにも力をいれてくれる方だ。なんでこんな所にいるんだべ?」


「少しな。建築ギルドにも後で顔を出す予定だ」


「なら、伝えておくべ。先生、後は頼むべ」


サイクロプスの男は治療院を出て行く。


「第九魔王のアリア様ですか?」


「如何にも」


「すみません、頭が高かったです」


即座に頭を下げるアルト。


「申し訳ございません。魔王様とは知らずにあのような口を聞いてしまい」


リーナも深々と頭を下げる。


「気にするな。新たな事業を作ろうと思っていてな」


「事業というと」


「大型の治療施設だ」


「治療施設ですか?」


「あぁ。ここの所、治療者の数が増えているんじゃないか?」


「え、えぇ」


「この小さな治療院では対処できない場合も少なくはないだろう?」


「確かに僕の腕が足らないばかりに」


「違う」


「え?」


「お前の腕は確かだ。影で見ていたが素晴らしい腕だと感じた・・・ここに足りないものはお前の腕ではなく環境そのものだ」


「環境ですか?」


「場所、人材、道具が足りていないんじゃないか?」


「・・・確かにこの小さな治療院では足りていません」


「俺はその悩みを解決した上で腕を振るえる場所を提供したいと考えている。それが」


「大型の治療施設ですか」


「まだ、構想段階だが早々に着手したいと考えている。さっきの建築ギルドの連中に手伝ってもらうつもりだ。考えが纏まったら城に来てくれ」


俺は治療院を出て行き建築ギルドへと足を運ぶ。


「先生! 良かったじゃないですか」


「確かに魔王様に認められた事は嬉しいです」


「それの何がいけないのですか!? 大出世ですよ」


「大きな治療院で働く事は嬉しい気持ちです。ですが、大きければ色々な所から患者さんは集まるでしょう?」


「・・・先生一人では手一杯になってしまいますね」


「リーナは僕の為に付いて来てくれた優秀な助手です。けれど新しい治療院で僕の力は発揮できるのでしょうか?」


「先生! リーナは昔から先生を見てきました。掴みましょうよ! 夢だったんですよね! 人材が足りないなら集めましょう!!」


「そう、ですね」


こうしてアルトとリーナは治療院の助手集めに入った。


・・・


「俺の願いを聞き入れてくれる気になったか」


1週間後、多数の魔族達を引き連れてアルトが謁見の間へと通された。


「はい、僕と信頼できる方々で大型治療施設の一員に加えてください」


「その言葉を待っていた。アルト医院長」


「医院長ですか」


「あぁ。これから沢山の怪我をした魔族達が運ばれてくるだろう。助けてやってくれないか?」


「その命、承りました」


深く頭を下げるアルトに習い背後にいる魔族達も頭を下げる。


「一つ聞きたいことがあるんだが」


「はい」


「お前はハーレムを作るつもりか?」


アルトの助手たちは全員が女魔族達であった。種族もバラバラでよく集めた物だ。


「いえ、邪な気持ちは無くてですね・・・声を掛けていったら彼女たちが答えてくれたんです」


「そうか。うらやま・・・ゴホンッ。励んでくれよ」


「はい!」


アレは手を出せないな。


アルトの助手たちの目はアルトだけを見ていた。


他人の物に手を出すほど俺も落ちぶれてはいない。


建築ギルドが人員を回してくれて急ピッチで大型治療院は建造されていった。


その間、何度も会議を行い治療院での運営方法が決まっていった。


アルトの知識を助手たちへ伝えて本人の負担を減らす方法が取られる。


更に治療に使う道具の制作を鍛冶師に頼み、調薬に使うガラス製の道具はガラス職人を斡旋する。


治療院に必要な物資は税金の一部から捻出される事で形を成していく。


「アルト大学治療院を開きます。これまでの研修結果を出せるように努力していきましょう」


そして大型治療院あらためアルト大学治療院が大々的に開かれた。


小さな怪我から大怪我までをカバーする為に作られた治療院の噂は瞬く間に広まっていく。


「アリア様、アルト大学治療院の評判は好調です」


ヴァンパイア一族の者を数名程送って治療チームの一員とする。


「兄貴の所のは凄いな」


様々な分野に人員を送り込んで成果を上げている。


「ヴァンパイア一族の特徴ですからな」


学習能力がズバ抜けているヴァンパイア一族の者達は大小の差はあれど皆勤勉で働いてくれる。


ただし夜での活動が主となってしまうのが惜しい所である。


「ミザール・・・早く完成させてくれ」


既に太陽の下にいても焼かれない魔道具の開発をミザールに出しているが太陽光を全身に浴びない様に防ぐのは難しいらしい。

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