空座都市
モンドーの屋敷で厄介になってから早3ヵ月が経過した。
「どうするべか?」
第九魔王に成るのか否かを毎日のように問われる日々が続いてる。
出て行けと言う圧が日に日に増している気がする。
毎日、働きもせずグータラ生活していたらそりゃ怒るよな。
アキラは俺の身の回りの他に港町に出て働いている。
「アリア様、そろそろ決めた方が良いかと思いますよ」
アキラも困った顔をしている。
「魔王か」
進化の過程で成ってしまったからな。
「空座都市がどんな物か見に行っていいか?」
「構わねぇべ・・・でも出て行ったが最後だべよ」
帰ってきても入らせてもらえないようだ。
「アキラ、準備をするぞ」
「はい!」
こうして俺は重い腰を上げて空座都市へと向かって飛ぶ。
ワァアアッ
空座都市は8つの支配領域の中央に位置するだけあり活気がある都市だった。
どうやってなのか、空中には侵入防止結界が常時張られていた。
仕方がなく海神魔王の支配領域側から入る事となった。
旅人に近い俺達は軽い荷物検査をされて楽々と入れる。
「これが空座都市ですね。あの巨大な建物は何でしょう?」
「アレが現魔王達が集って会議する場所であり空座の城だそうだ」
アキラが高い建物を見上げてキョロキョロとする。
「9番目の魔王が誕生したってよ」
「その噂で持ちきりだよなぁ。どうやらココを支配領域にするって噂だぜ」
「って事は俺達にもチャンスがある訳だな」
不穏な会話をする2人組の魔族が横切る。
空座の城を中心に作られた都市内部だけが誰の物でもない空白地帯となっている。
それ以外の土地は現魔王達の支配領域だ。
ガシャァッン
「テメェ!」
「やるのかぁ!」
喧噪の中には喧嘩をする魔族達が幾度か見かけられた。
「いよぉ、姉ちゃん達」
「俺達と遊ばねぇか」
何度か目になるナンパだ。
「ゴフッ」
「ゴホォッ」
当然返り討ちにあって貰う。
レベルの低い、ましてや男に興味はない。
むしろ・・・
「アリア様、美女に目移りし過ぎです!」
「仕方がないだろ?」
様々な種族が集うだけあって美女達がそこらを歩いている。
といっても俺の美的感覚は人間に近い容姿の連中だ。
獣系は範囲外である。
「とりあえず、ここが住みやすい場所か様子見だ」
「了解しました!」
数日程、空座都市を見回ってみた。
まず、治安が悪い事が真っ先に判明した。
食い逃げ、強盗、暴行などがそこら中で発生している。
もちろん捕まれば死なない程度ボコボコにされる運命が待ち受けている訳だ。
「抑止力がねぇんだな」
「ですね」
警察機関・・・警邏隊という奴が見回っていないから常に発生する。
「路地裏も闇が深いしな」
表通りの方が可愛い物だと思えるくらい裏は酷いことになっている。
空座都市とは名ばかりの自由過ぎる無法地帯と言った方がいい。
「こんな所を統治したい奴か」
「嫌ですね」
土台がなっていない・・・。
「姉ちゃん達、見かけない顔だね」
そこで屋台から水棲魔族のおっちゃんが話しかけてきた。
「イカ焼きですよ!」
醤油を掛けて香ばしく焼かれたイカを売っている屋台だ。
「アリア様」
「買ってやるよ」
「毎度アリ! っで困りごとかい?」
「この都市は自由過ぎるなって話だ」
「はっはっはっ! 王不在の都市だからな。誰しもが来れて誰しもが出て行ける。それこそ自由都市だからだよ」
「オジサンは何でここにいるんですか?」
「このイカ焼きを広めたくてなぁ。別の支配領域の方が治安もいいんだが魔大陸全土に広まるにはココが一番なんだよ」
「夢が大きいですね」
「上手く行かねぇんだよなぁ。まぁ海鮮物自体が好まれねぇだけなんだよな」
「そんな! こんなに美味しいじゃないですか」
「あぁ、美味だな」
ザワザワッ
俺達がイカ焼きを頬ばって美味しそうに食べているとチラホラと購入者が現れた。
購入者も食べてイカ焼きのおいしさに驚きの声が上がると周囲に伝播していって次々に購入者が連鎖的に増えていった。
「いやぁ、完売だよ」
1時間もしない内に在庫が切れてしまったらしい。もともと生物で新鮮を売りにしている為に大量には用意していない。
「姉ちゃんたちが宣伝してくれたから完売したよ。ありがとうな」
「いえいぇ~」
「気にするな。旨いものは旨いんだ」
「商売人冥利に尽きるぜぇ。空座都市についてだったな。時間もあるし礼も兼ねて教えてやるぜ」
「ここの治安は酷いのは王不在だからか?」
「あぁ。誰でも受け入れる都市という事もあるんだがソレは王が居ないからだな。基本的に別の支配地域に入る時に税金が必要になるんだ。姉ちゃん達も金とられなかっただろ?」
「あぁ」
「つまり最低限の税金でしか運営されていないんだ」
「一応税金という概念はあるんだな」
「でなければ都市として回っていないぜ・・・だが最低限だ」
見ると表通りにはゴミが目立つ。
「どの位最低限なんだ?」
「8方向に繋がる門での検査員だけだ」
「それだけか?」
「あぁ。あとは空座城に居る職員がこの都市を運営している。店を出したければソコに行きな。都市で新たな事を始めたければ全部ソコだ」
「分かった・・・行ってみるか」
俺達は空座城へと向かう事にした。
城の一階は解放されていて誰しもが出入りが可能の用だった。
広い空間にカウンターがあり数人単位で処理が出来るシステムだ。
「初めてですか?」
「あぁ」
「私は付き添いですぅ」
「では、こちらの番号札を持って呼ばれたらカウンターにお越しください」
木片に書かれた番号札を渡される。
暫くして番号が呼ばれてカウンターに座る。
「本日はどの様なご用件でしょうか?」
「この空座都市について」
「全体的にですか?」
「できればココの経済面について」
ここの王になるならば知っておかなければならない話だ。
「少々お待ちください」
職員は奥へと引っ込み、上司らしき人物を呼んできた。
「お客様、そちらの件は通常話せません。興味本位という事でしたらお帰り下さい」
「近々、ここにも王が就く筈だ」
ザワッ
それを聞いていた両隣の魔族達が驚く。
「お客様、こちらへ」
これ以上ココで話す事をためらった職員は奥の部屋へ案内してきた。
「その情報は何処から入手されたんですか? 私共も先日竜魔王様から頂いたんですが」
「第9魔王候補アリアと言ったら分かるか?」
「では、貴女様が・・・大変失礼しました」
「王になると決まった訳じゃない。なるならココを知る必要があると思っているだけだ」
「なんと、志が高いお方だ。ではお話ししましょう」
職員は経済面について話してもらう。
税金についてだが、この都市に入るには入税料を基本的に必要としない。
だが、商人は入税料を支払う必要がある。
都市の運営費として最低限でも必要だから。同じく出て行く際に荷物があれば出税料も必要となる。
中には空座都市を中継地点として通行していくだけの商人も居るそうだ。
その税金がココや検査員の給料として回される。
「結構集まるんじゃないのか?」
「はい。様々な魔族の方の相手をしますからね」
「全てが職員たちに回っていくのか?」
8つの支配地域からやってくる商人達から集めた金だ・・・大金になるだろう。
「もちろん運営費用としても使用しております。が商人になるよりも給料は多いですね。だからココの競争率は高いですよ」
恐らくこの都市では一番高い給料がもらえる場所だ。その代わり管理する部署が少なくて楽なのかもしれない。
警察や病院に消防などの当たり前にあった組織が全くない。
「ハードモードですね」
「あぁ。これらを纏めなおすのは億劫だ。救いは最低限の土台があったという点だ」
役所も無ければお手上げだった。
「戴冠式は何時頃で?」
「魔王として認められていない以上、無意味だろ?」
「他の8大魔王様達が認めになるまでですか」
「そうなるな・・・と言っても何をして魔王が認められるんだ? 魔王らしく住民を皆殺しにすれば良いのか?」
「ひいぃ、そのような考えはお捨てになってください。恐らくこの都市を良い方向に持って行ければ良いかと」
「冗談だ・・・これは第9魔王の試練として用意されていた事か」
「統治者としての力を試す場所ですか」
これは前途多難だな・・・




