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つかの間の平和

ルーデシアが女王となってサーペンティン王国は順調に経済を回復し始めていた。


王配となったクラムが良く支えていると言った感じだ。


更にベイクラム王国とサーペンティン王国を結ぶトンネルが一般的にも開放されて両国の交易が盛んになった事で経済が国単位で回り始めた。


「不穏な空気か」


ベイクラム王とルーデシア女王から寄せられた2通の手紙を見て呟く。


「俺はまったりとしたいだけなんだがな」


2国から送られてきた手紙はレーヴァン聖王国の動きが怪しいという内容だった。


レーヴァン聖王国とはサーペンティン王国より南西に位置する宗教国家らしい。


光の女神を信仰対象として聖大陸全土に教徒を増やしてきた歴史を持つ国との事だ。


人間達は基本光の女神の信徒として生活しているが聖王国の国民ほど信心深くはないとか。


「聖剣遠征部隊って知っているか?」


聖王国の実行部隊名が動いていると手紙に書かれていた。


その事を元勇者のアキラに聞いてみる。


「大規模な魔族討伐隊ですよ。私も昔は入れって煩かったです」


「勇者が先頭に立って戦うのか?」


「聖剣を持つ勇者を先頭に戦う部隊ですからね」


「聖剣ってアレか?」


「アレはレプリカですよ」


アキラの持つ剣は聖剣のコピーだという。だとしても威力は折り紙付きだ。


「光魔法もレーヴァン聖王国から教わったのか?」


「そうですね」


「回復も?」


「光魔法を習うならレーヴァン聖王国で教われと残ってるぐらいですからね。それよりもぉ」


「仕方がない奴だなぁ」


アキラは甘え上手だ。俺を動かすのを心得ている。


そんな甘い生活を3年程続けていたら事件が起こった。


ドゴォオンッ


塒から離れた場所で爆発音が轟いた。


ブワッ


熱気が塒まで届き、森が炎に包まれていた。


ホーンラビット、ノーブルウルフ、ブラックベア達が炎の無い岩場か山場へと逃げていく。


「なんだ、コレは」


ピッ


竜の餌場だった草原付近に5000人の気配が集結していた。


バサッバサッ


「アリア様! 逃げてください」


左腕が無くなったアキラが飛んできた。


「アイツ等が来ました。聖剣遠征軍です」


「そんな事より、傷の手当だ」


止血をして、光魔法を使う。


「リジェネーションヒール」


欠損部位を回復する魔法を発動する。


ギュルルッ


「うぐぐっ」


アキラが苦痛に表情を歪める。


細胞を活性化させて無理やり腕を高速で生やす魔法だ・・・痛みは伴う。


「アリア様、勇者が、本物の勇者が」


フッ


それだけを言ってアキラは気絶した。


「アースフォートレス」


ボコボコボコッ


アキラを土の堅牢に入れて安全を確保する。


バサッ


翼を広げて現場へと飛んでいく。


ゴォオオッ


「森に放て! 炙り出すんだ」


白いローブで統一された5000人からなる集団が森に火を放っていた。


あれが聖剣遠征軍・・・俺の平和をよくも。


ダラダラ過ごしていく予定を目の前の集団が破壊していく様を見て怒りが込み上げていく。


「司教様、あそこに魔族が!」


一人が声を上げると俺に注目する集団。


「勇者様!! 別の魔族が現れましたぞ!」


「また、僕の出番って訳だね」


ほっそりとした体形に白で統一した鎧を身に纏った金髪の男が現れた。


「この聖剣エクスの錆びにするよ」


聖剣が錆びたらダメだろと思う。


「そこの魔族! 僕が成敗してやるから降りてこい!」


チャッ


光り輝く剣を俺に向ける。


アキラがこんな奴に倒されたとは思いたくはないが、外見では実力は図れない。


「勇者様を援護するのだ。光魔法には弱いからな!!」


勇者の後ろでローブの男が指示を出す。


「ショックウェーブ」


ドガァアンッ


広範囲無属性魔法で集団の一部を吹き飛ばす。


「なっ、何が起こった!?」


「ふぃい、問答無用で魔法を放ってくるなんてね」


勇者は自前の防御力で自身を守り、背後にいたローブの男も無事だったが後ろの集団がポッカリ居なくなっていた。


「ここは我が国だ。何故、このような真似をした」


「なんだ、口が利けるじゃないか。何故? それは上が決めたからさ。僕にはそれで充分」


ギリリッ


たったそれだけの理由で攻撃をした・・・人間と言うのはこれほどまでに・・・。


まだ反乱軍の方が理性があった気がする。


「勇者よ、早く奴を殺せ! このまま長引けば損害がでるぞ」


「分かっているよ。さぁ、戦おうか・・・空を飛んでいるなんてズルいぞ」


「使える力を使って何が悪い」


「レビテーション」


フワッ


勇者も空を飛び同じ高さまでやってくる。


「ここなら、使いたい放題さ。僕の経験値になってくれたまえ!」


ギュンッ


俺に向かって急加速して接近してくる。


「ブラッドアロー!」


「聖剣の前で闇魔法は無意味だよ!」


シュオッ


ブラッドアローが届く前に霧散する。


これが本物の聖剣の力か。


「そして聖剣エクスの力はこんな物じゃない。輝け!」


カッ


一瞬にして周囲が日に晒されたように光で満たされる。


「これが聖剣エクスの力。一定の範囲を光の聖域で包み込むのさ!」


「それで?」


「なっ!? 君はなんで消滅しないんだね」


「光耐性(Lv10)の前では無意味だ」


この3年間、耐性系を鍛え続けていたからな。


「馬鹿な!?」


「話は終わりだな。なら死ね」


「まだだよ! 聖剣にはもう一つの力が」


ザシュッ


「待つと思うか?」


「あがっ!」


ブシュゥウッ


ブラッドソードが勇者の胴体に食い込み大量の血液をまき散らす。


「猛血毒」


「がぁあああああ!!」


体内に大量の猛血毒を流し込み勇者の自由を奪う。


「この程度で挑むか。インパクトカノン」


ブシャァアッ


至近距離で放たれた衝撃波で勇者の肉体は四散する。


残ったのは鎧と聖剣だけだった。


【光の勇者を倒したことにより魔王へ進化します】


「なっ!?」


唐突に進化が始まった。


今までにない位の力の奔流が体中に巡る。


「あぐぁあああ!」


ドッ


視界が真っ白に包み込まれて音が消え去った。


ジュウウウッ


「はぁはぁはぁ」


魔力の奔流が収まり意識を戻した頃には巨大なクレーターの中心で片膝をついてた。


「くっ」


全身が痛みで軋む。


グググッ


「これは」


視界には焼かれ尽くした森の跡しか残っていない。


問題なのは視線が高すぎるという事だ。


森を焼いていた聖剣遠征軍の姿は既に無く焼野原が続いていた。


「アリア様ぁ!」


「アキラ」


「随分大きくなりましたね」


「お前が縮んだのでは無いのか。俺は魔王になったのか?」


【魔王種ヴァンパイア・プリンセスへ進化しました】


「アリア様が魔王にですか! 今日はお祝いですね」


「これは、そうもいかんな」


草原地帯には騒ぎに駆けつけてきたベイクラム王国軍の目に晒されていた。


「アキラ、俺の体はどうなっている?」


「そりゃ、大きいですね。30m位ですか?」


アキラが妖精のように小さく見える理由はソレか・・・俺が大きくなりすぎている。


「姿は依然のままなのか?」


「ヴァンパイアに近づきました。というよりドレスを着た方が良いですよ?」


「うぉっと!」


よく見ると竜鱗が消え去り裸同然の格好をしている。


【魔王のドレス一式を作り出しますか?】


「あぁ」


ブワッ


【吸血姫のサークレットが作られました】

【吸血姫のドレスグローブが作られました】

【吸血姫のドレスが作られました】

【吸血姫のパンツが作られました】

【吸血姫のハイヒールが作られました】


大量の魔力と血が持っていかれて俺の体が包み込まれる。


【ヴァンパイア・プリンセスになった為に自動吸血を取得しました】


「自動吸血」


【死体から自動的に吸血するスキルです】


それは便利なスキルだ。


「流石、アリア様です。とっても綺麗ですね」


「あぁ」


周囲が一変してアキラの言葉が流れていく。


「アキラ・・・こうなってしまった以上、俺は」


「ついていきます」


「え?」


「私は一生、アリア様に着いていきますよ」


「そうか・・・なら一仕事頼まれてくれないか?」


「畏まりました」


この日、聖大陸では2つの国が消滅した。


一つは魔族が一人で立ち上げたアリア小国。


隣国であるベイクラム王国とサーペンティン王国とは同盟国であり友好的に接していた。


が、一夜にして小国は巨大なクレーターを残して消滅が観測された。


更にもう一つ、レーヴァン聖王国。


光の女神を信仰している歴史の長い国が一夜にして消滅した。


国土にいるすべての生物の血が無くなるという大惨事が発生して歴史に怪奇現象として刻まれる。

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