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スマホ × 電車=デス・ゲーム  作者: ネームレス・サマー
悪魔を導く天使達のささやき声
20/27

――揺るがぬ自己

「で、俺が聞いた謎の声と光の正体はお前らだな」


 香本さんが泣き止んだのを見て、話を元に戻した。

 

『なによぉ、ソレっ……ってアンタ切り替え早すぎでしょ!

 さっきまで私よりワンワン泣いてたのに』

「ワンワン泣いてない」


 ロングシートに腰掛けながら、即座に否定した。

 いや、まぁ泣いてはいたが。


『こいつ昔からぱっと見の切り替えが早いからなぁ。

 心の中じゃあ、今だに泣いててもおかしくない』

 

 聞こえない、聞こえない。


「で、俺が聞いた謎の声と光の正体はお前らだな」

 

 話を断ち切る為に同じ言葉を続けた。

 こいつは俺のことを俺以上に知ってる部分があるからな……これ以上ペラペラと喋らせるわけにはいかない。


『はぁ……私は知らないわよ。そもそもいつの話?

 クイズゲームが始まった頃に、ワタシ、アンタんとこ来たんだけど』

「最初のゲームの終わりの時からだな。……香本さんじゃないとしたら」


 お前しかいない。

 ゲンナリとした気持ちになりながら、宙に浮いている光宙(そら)の目を見た。


「おい、目をそらすな。正直に言え」

『わ、悪かったよぉ。俺ですよ! 全部、きっとな。

 まさか蒼汰があんなにショック受けるとは思ってなくってさ。

 そもそもなんでか知らないけど、時々しか見えてないし、聞こえてないし、俺も不思議なんだよ。

 そ、それに1回命を救っただろ!? 許してくれ!』


「はぁ……」


 やっぱりあの光も声も全部光宙だったのか。

 あれのせいで俺は自分が狂ったと認識して、生き方や考え方を変える大きな要因になった。

 今までよりも鋭く、利己的に生きようと思った。益のない他人なんて切り捨ててしまえと思った。

 自分だけの為に生きると誓った。エゴイストになろうとな。


 生き方を変えた原因の真実がわかった。未来の俺は……


「許すよ、実際命を救ってもらったのは本当だしな。

 ありがとう、お前のおかげ生き残れた。

 それにあれで……」


 言葉が詰まってしまった。


『……蒼汰?』

「ああ、いやなんでもない。

 そういえば、そもそもどうして答えがわかったんだ?」


 俺の予想だと死ぬはずの選択肢だった。

 だが、蓋を開けてみるとそれが生存への選択肢。

 今だに理由がわからなかった。


 光宙は頭を捻らせた後、一言で信じられないことを言った。


『わからん!』

「はぁ! 本気で言っているのか……?」


『おう。そっち選んだら蒼汰が死ぬと思って、否定しただけだ』

「答えがわかってたとかじゃなくて」

『直感……ってやつかな』


 直感という言葉を言った後のあいつの自慢げな顔が暫く頭に離れそうにない。

 そんな感覚的なもので助けられたのかよ。

 ポールに肘を載せて、頭を抱えた。責めたいけど、責められん。

 結果が全てだ。


『アンタらが話してるのって、最初のセンタクのゲーム?』


 何の話をしているのかイマイチわからなかったのだろう。

 疑問を言葉の色に含ませていた。


「そうそう、2人に教えて貰った一見正解っぽい答えは間違いだった」

『えっ、そうなの。……なんか悪いことしたわね』

「いや、香本さん達のせいじゃない」


 香本さん達以外にも選んだ方を聞いて、全員が揃って同じ方だったんだ。

 普通に考えてあれが正解にしか思えない。

 

「全部過ぎたことか」


 考えても仕方のないことだ。学べるものもないしな。

 強いて上げるとするなら、調査人数の少ないアンケートを信用するなといったところか。

 頭を掻く。時間も限られていることだし、次の疑問に移ろう。




「話を変えよう。2人は俺にしか見えないのか?」


 自分の中では結論は出ているが、確かめることが重要だ。

 もし結論が正しいなら、どうして俺にだけ見えるのだろう。

 特別な存在ってか……ふっ。自分の考えを鼻で笑った。


『他の人に見えてればアンタの所に来てないわよ。

 ってアンタも途中から見え始めたんだから、もしかして――――!』


 何かを言いかけながら、凄い勢いでこの場を去っていった。

 空を飛べるのはいいな……どこに行ったのかは検討が付くので黙って見送った。

 もしかしたら俺が特別じゃなく、2人が特別な可能性も充分にある。

 他に幽霊らしき存在は見当たらないし。

 

「光宙はどう思う? 他の誰かに見られた感覚はあるか」


 幻覚じゃないといいな……と思いながら、隣に座った光宙に話しかける。

 幽霊が座る意味があるのだろうか。そんなくだらない疑問は口に出さなかった。

 

『散々騒ぎながら蒼汰の側にいたけど、誰も気付いてくれなかったよ。

 あっ、ちょっと見てろよ』


 そう言い、席から立ち上がり人のいる方へ飛んでいった。

 何をする気だろう。


『おーい! 見えてるか?』


 光宙は離れた場所から、俺に手を振り呼びかけていた。

 見えてるよ、と言った後、手を軽く振り返した。

 暗い車内。なのにあいつはよく目立つ。体が青白く光ってるせいだろうな。


『よし』


 その言葉を発した後、あいつはまた少し飛んで――人の前に降りたった。

 性別すらわからないが、光のあるなしで生きている人がいるかどうか判断できる。


『ヘイヘイ、ジイサン見えてる~?』

「……何やってんだか」


 あろう事か他人の前でダンスをしていた。

 サンバ系……だろうか。見ててかなり愉快な動きをしている。

 でも、これでわかった。


 俺は光宙が戻って来るまでの間、目を閉じ考えを整理することにした。

 あの踊りを見続けるのは辛い。男のダンスを見てもな。


「ふう」


 俺にだけ2人が見える理由、車外の状況、菊池……さんの死亡理由、

 そしてゲームの結末について。考える時間がいくらあっても足りない――――




『いい踊りだったろ!』


「なんで2人だけ幽霊になったんだ……。

 他に死んだ奴らは一体どうなってる」


『……蒼汰さん?』

「ん、ああ戻ってきたのか。

 ……汗、掻くんだな。幽霊でも」


 考え事に集中しすぎたな。

 いつの間にか光宙は戻ってきていた。


『ちなみに息切れもする。

 幽霊も楽じゃないぜ。で、わかったろ』

「ああ、俺以外には見えないらしいな」


『そういうこと。なんでかわからないけど。

 巨乳……ハルちゃんは?』


「まだだ。

 というか巨乳ちゃん呼びは辞めろよな」

『元は蒼汰が言い始めたんじゃん!』


「おっぱいちゃんよりはマシだろ?」


 グッドポーズをしながら答えておいた。

 

『ええっ……うーん確かに』

「だろ、つうかこんなアホな話に時間を使ってられん。

 解消しておきたい疑問が――――」


 ある、と言おうとした所でスマホから安っぽい効果音がした。

 チッ、流石にこれ以上の時間はくれないか。

 スマホを左手に持ち画面を見る。


「芸がないな」


 次のゲームもクイズか。生き残れるのは……6人。

 光宙、力を貸してくれと言おうとした所で、


『ううっ……カレン、どうして私が見えないの……』


 首を落とし、幽霊のような動き(ゆうれい)をしながら、香本さんが戻ってきた。

 やはりダメだったか、夏恋さんは1人で生き残れるのかね。

 そう思いながら、慰めの言葉を吐いた。


「残念だったな」

『本当よ、アンタに見えたからもしかしてと思ったのに』


 そう言い彼女は疲れたと言わんばかりに、俺から3つ離れた距離にどっしりと座りこんだ。


「今、やることはあるか?」

 

 香本さんの顔を見ずに言う。


『……見てわかんない?』


 不貞腐れたように呟いた。

 

「なら、好都合だ。光宙!」

『ヘイ!』


「香本さん!」

『なによ』


「力を貸してくれ。俺が生き残るために」


 俺だけが生き残るために。


『もちろんだ。その為に蒼汰の側にいるわけだしな』


 陽気に頼もしくそう言ってくれた。

 頭はよろしくないが、お前がいるだけで俺は救われるよ。


『……カレンがピンチになったら助けなさいよ』


 そう言ったあと、俺の近くにまで席を詰めてきた。


「ふむ」


 俺は小さく頷き、思った。

 状況によると。俺の利益に繋がるなら助けよう。

 繋がらないなら……。


 画面を見る。



??????????????????????????????????

        『START』        0/30


      大問1   法律

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



 俺は真実を知った。

 けれども、もう変わらないだろう。

 俺の生き方や考え方は。


 “自分こそ全てだ”


 精々利用させてもらおう。

 2人に軽く視線を送った後、問題に立ち向かった――――







 

 


迷い中

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