蜃気楼の中にある、答え
「幻聴か……」
前聞いた時のあの声とは違って、男・女がハッキリとしていたが。
あれか、あれなのか。ついにお迎えが来たのか。
光宙はわかるけど、どうして女の方は夏恋さんや初恋の子じゃないんだ。
納得がいかない。
『アンタ、もしかしなくても聞こえてるんでしょ!
早くスマホを持って、入力するの。青白模様が特徴的なレイジンガーよ』
「なっ!?」
巨乳ちゃんもとい香本さんが声と共に、俺の目の前に現れた。
全身青白い光に包まれながら。
「幻覚……なのか?」
『そんなのどうでもいいから、ハヤク!』
「……わかった」
物は試しだ。俺だって死にたくない。
素早く文字を打ち込む、レイジンガーと。解答ボタンを押し、数秒待つ。すると、
「合ってるよ……どういうことだ」
正解だ。
ということはまだ生き残れる可能性がある!
俺は自身の体に熱が入るのを感じた。
『おお! やっと思い出したか!
ここで思い出せずに死んじゃうようなあの世で100万ボルト説教コースだったな』
『ふぅ……ま、良かったわ。でも気を抜いちゃダメよ』
…………。
これは幻聴・幻覚なのか?
それにしては妙にハッキリと見えるというか。
そもそも答えを教えてくれる幻聴なんてあるのか?
……さっきもそうだった。けど、さっきのとは違う気がするしな。
もしかして、多重人格が目覚めてしまったんじゃ……今の状況だとありえる。
何でもいいか、利用できるものは利用する。
そして、生き残る。それだけだ。
「聞きたいことはあるが、話は後だ。力を貸してくれ」
『おう! ってあれ、もしかして声聞こえてる?』
『気づいてなかったのね……』
2人の、光宙の声を聞いて瞼の奥が熱くなっていた。
視界が霞んでいくのを気のせいだと無視して、俺はスマホの画面を見ることに集中した。
生き残って、生き残って、話を聞こう。
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大問5 アニメ・サブカルチャー 17/30
第29問
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
残り2問、正解してみせる。
「よしっ」
29問目は自力で正解してみせた。
そのせいで光宙と思われる存在がつまらなさそうーに、宙を漂っている。
おい、そこは喜べよ。
『何とかいけそうね』
「ああ」
香本さんが宙を舞いながらそう呟いた。
スカートを履いている奴が宙を舞えば、当然……
惜しい、あと少しでパンツが見えそうだった。
『あっ、蒼汰がスケベな顔してるよ。これは見たな』
『ちょッ、何を見たの! ねえ!』
2人の言葉を無視して画面の問題に集中する。
ダメだな、気が緩んでる。というか見てねーよ。
「わからん」
このラスト1問を正解すれば確実に上位10人に入れる。
だけど、この問題は俺にはわからない。
小さな女子が見るアニメの問題なんてわかるわけがない。
「2人とも、わかるか?」
大人しく頼った。
得体の知れない存在に。
いや、俺の中ではもうどんな存在だろうがどうでもよかった。
『ええっ? 自分で解けちゃうだろ~蒼汰は』
宙に漂いながら素知らぬ顔で舐めたことを言っていた。
ウザっ! なんなのこいつ。
拗ねた時のリアクションが……本当……昔のままだ。
『酷い奴ね。友達が困ってるのに』
『だって今までずっと呼び掛けてたんだぞ!
それで気付いてくれたと思ったら、反応薄いし!』
「はぁ……早く力を貸せ」
しんみりとした気持ちは失せてしまった。
というか今まで呼び掛けていただと? もしかしてあの中性的な声もこいつの声なんじゃ。
……今はそんな事を考えている場合じゃないな。制限時間が刻刻一刻と減っている。
『仕方ないわね、私が教えてあげる。
この服装は真・ブラックローズベリーよ』
「そんな名前だったか、ありがとう」
背筋を伸ばしながら早速解答を打ち込み始めていたら、
『巨乳ちゃん、それ違くない?
これは真がつかないほうっしょ』
光宙……が画面を指差しながら、香本さんに言った。
なんでお前がこんなアニメ知ってんだよ。女児向けだぞ。
香本さんなら小さい頃見てたとかでわかるけど。つうか、その名前辞めろ。俺に被害が来る。
『はぁぁぁ? ナニ言ってんの。
ブラックローズベリーシリーズ全作見てる私が間違えるわけないでしょ。
というかその巨……って時々呼ぶのやめなさいよ!』
えええ、香本さんこのシリーズ全部見てるのかよ。
確かまだ現在進行でやってるアニメじゃなかったか。意外な趣味だ。
見た目に反してるというか、ギャル系もアニメを見るんだな。
しかも女児向けの。
「それなら香本さんが正しそうだ」
俺は顔に出さないようにしながら、そんな事を思った。
そろそろ解答を入れないと不味い。香本さんのを入れておくか。
『俺の初恋の子達だぞ! そのキャラの服装を間違えるわけないだろ!?
5歳の時の事とはいえ、あの気持ちを忘れない!
あっそれと、巨乳ちゃんって言い始めたのは俺じゃなくて……』
言い切る前に蹴りを食らわせた……が、当たらなかった。
正確に言うなら貫通、もといスカった。
「…………」
パッと見から想像付いたが、俺の幻覚じゃなければ幽霊とかそっち系か。
まぁ、どうでもいい。
そういえば小さい頃散々好きな子が何人も出来ちゃったんだよ~って自慢されたな。
これのことか、まさかアニメのキャラとはな……。というか今思うとその自慢はおかしい気がする。
『酷っ! 親友を蹴り飛ばすなんて。
痛くはないけど、心が痛い!』
「そりゃ、すみませんでした」
『なんか色々言いたい事があるんだけど、もう時間、やばいわよ』
本当だ。
香本さんに言われて画面を見る。
もう制限時間は10秒を切っていた。
「どうするか」
このまま解答ボタンを押すべきか。
『まっ、ここは当然私を信じるわよね』
カールされた茶髪をかきあげた後、大きな胸を張りながら香本さんはそう言った。
普通の見た目なら目の前でこんな事をされたら、内心テンションが上がるが……
青白いオーラのようなものが体を纏っているせいで、興奮しない。
残念。
『いやいや、俺だろ! 10年来の付き合いだからなぁ。
ここで信じなかったら……特にない。蒼汰の判断を信じるよ』
どこか大人びた笑顔を浮かべながらそう言った。
着ている服は小学生が着るようなダサい奴だが。
「……」
一瞬だけ瞳を閉じる。……俺の気持ちは決まっているな。
お前を信じるに決まっているだろう。
「…………」
真の部分を消し、解答を押した。
『むっ』
悪いな。
香本さんには心の中で謝罪をする。
「ふう」
俺はスマホを膝の下に置いた。
30問目が正解か不正解か、まだわからない。
けれど、生き残っている自信が確かにある。
「さて」
目の前に浮かんでいる2人を見る。
聞きたいことが沢山あった。が、まず最初に言っておきたいことがある。
俺は口を開き、こう言った。光宙また会えて良かった、と――――
と、投稿時間が徐々に遅くなっている?
A.蜃気楼です。




