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明るい通路に出ると、タイミング良く右手の方から人が歩いてきた。
「あらゲルシュナー博士、偶然っ」
わざとらしい態度で老人に軽く挨拶をした。老人と同じく白衣を纏っている。赤い髪を後ろに束ね襟元のうなじが色気のある美人な女性だった。ゲルシュナーと呼ばれた老人は心底嫌な顔を浮かべて、女性の脇を素通りした。
「あぁ!待ってくださいよ!」
「またお前か、ルーフス・ヴェルメリオ」
当然のように付いてくる女性に老人は冷たい口調で言った。
「そんな嫌いにならないでくださいよ、私だって博士の研究が成功するの祈ってるんだから」
「嘘をつくな、わしの研究を横から常に監視して事あるごとに上に報告しているのはどこのどいつだ」
「それは上からの命にございますよ」
「ふん、信用ならんな」
視線までも冷たく送った老人は足を速めた。ルーフスはそれでもピッタリと付いて行く。
「で、今の実験ではどうなんですか、ジンは?」
「教えん」
「でも博士の様子を見るに、絶望的ではないのでしょうねー」
「教えんと言っている」
「私達神の神による神のための実験・・・・・・」
「そうじゃ、我々はこの実験を必ず成功させなければならない」
「そう、この問題は全神に通ずるもの、だから私にも進境を教えてくださいよ」
老人は急に振り返りルーフスを見据えた。
「先も言ったはずだ、お前は信用ならん」
「傷つくなぁ、私が元人間でなり上がりの神だからですか?」
「それもあるがお前、何を企んでおる。わしに隠し通せるとでも思っているのか」
「なーんのことだか、私は万象の神ゼウス様の忠実な僕ですよ」
きっと皺の影を濃くすると、老人は苛立ちのため息を吐いてまた歩き出した。ルーフスは追わなかった。
「この世界だって相当イカれてるんですから、私はあるべきものをあるべき姿に、ね」
無機質な通路。ルーフスは老人と歩いてきた方へ戻っていった。




