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第四十八服 自分のルーツ

 

 18:30 碧【おつかれ うちって家系図とかあるの?】

 20:00 湊【今撮影終わった】

      【家系図?俺はみたことねぇな】

 20:05碧【そっか、じいちゃんなら知ってる?】

 20:08湊【知ってるかな〜 ボケてるし、聞いてもわからないんじゃない】

 20:09碧【そっか】

 20:11碧【ちなみに、ご先祖に茶人とか、茶道に関する人とかやっぱいねぇよな?】

 20:15湊【いねぇだろ】

    湊【笑】

    碧【だよねw】

 20:18湊【ちなみに、おまえのひいひい〜じいちゃんあたりは確か石川の農家出身とか言ってたな】

 20:19碧【うち、もともと農家なんだ?】

 20:22湊【そう聞いた気がするな】

 20:23碧【そっか ありがと】

 20:30 湊 漫画『呪術廻戦』に登場するキャラクター『禪院甚爾』の「ハイ、お疲れ」スタンプ

(え、親父って、こういうスタンプ使うの? つうか漫画とか読むのか?)

 20:32 碧【ウケる。親父、ちょっと似てるよね。強気な感じ。髪型とかも】

 甚爾の雰囲気に似てるかも…一人でニヤつきながらその文字を打つ。送信。

 20:38 湊【笑 俺もそう思った】

 親父って俺が思うより、若いんだな。


 農家出身と聞いてがっかりするかと思いきや、親父のスタンプのおかげなのか、そもそもそんなに期待もしていなかったからか、このやりとりと結果に悲愴の感情は特になかった。

 いや、逆に何もなくて良かったのかもしれない。

 これで名家がルーツにあるなんて知ったら、なんだか自分らしくない気がした。


 みんなから変なラベルをつけられてそういう目で見られたくないような気持ちが、昨日感じたこととは真逆で矛盾しているように思うが、今はその気持ちがぎゅっと強い。

 もしかしたら、それは自分自身が周りのみんなを、そういうラベリングで見てしまっていることへの嫌悪感からなのかもしれない。

 もしくは、そんな下らないことをコンプレックスに思っている自分の情けない姿を認めたくないのか。

 そんなことを考え始めるとループに入りそうだと思い直し、「ちゃんちゃんっ」と物語のエンディングのフレーズを脳内で再生させ、自身でこの話の幕を降ろした。


 ──じいちゃんは、俺が親父との旅をやめ、京都に住み始めてからほとんど間も無くして認知症になり、施設に入っている。昔はたまに会いに行っていたけれど、施設の場所が少し遠かったのもあり、ここ最近ずっと顔を出していない。

 (夏休み入ったら久しぶりに会いに行こうかな…)


 20:45碧【速報!おれんち、農家でしたー!】

 茶道部のメッセージグループに早速結果を投下してみる。

 ピロン。ピロン。ピロンピロン。 

 え、みんな、返信はや!


 20:46光瑠【マジか!そこはあえて陰陽師が先祖でした!とか期待した】

    銀次郎【農家!】

    茉莉【のうか!】

    光瑠【でも、血縁なしであの不思議能力、逆にカッケェ】

    銀次郎【先祖めっちゃええ野菜食っとったとか。んで、すげー感覚が育ったっちゅうw】

 20:47雪乃【やば、完ペキ乗り遅れた!碧くん農家やった!】

    光瑠【いや、雪先輩まだ始まったばっかっすw】

    碧【陰陽師って!安倍晴明とか?w】

    茉莉【さすがあおっち!陰陽師の名前すぐでてくるやん!】

    光瑠【碧の能力は呪術だった件】

    碧【違うし。つーかさっき親父とリアタイで呪術廻戦の話したw】

 20:48銀次郎【え、碧のイケメンパパ、漫画とか読むのw】

    碧【それ、俺もツッコミそうになりました】

    千歳【話それてるw】

    銀次郎【お、ちーがやっとinした】

    碧【残念ながら辿ると農家っぽいです!しかも石川w】

    銀次郎【へー石川〜 加賀蓮根がうまいよなぁ】

 20:49茉莉【ぎんちゃん先輩、野菜の話ばっかやん】

    銀次郎【これから夏は加賀太きゅうりが最高やで】

    千歳【話それてるって】

    碧【つうことで、農家の多比良を今後ともよろしくっす!】


 OK、いいね、よろ!などのスタンプで嵐のようなグループメッセージはものの五分とたたないうちに過ぎ去った。


 既読の数字が六になったのは、そこから一時間以上経ってからだろう。

 あの美形はただ溜まったメッセージだけをとりあえず読んだだけのようだった。



 * * *



 次の活動日の水曜日は千歳のいう通り闘茶ではなくお点前の稽古に徹した。


 光瑠も茉莉も自主練してきたようで、ぎこちないながらもしっかりと手順をなぞれるようになっていた。

 その日、藤露透が部室に姿を現したのは、稽古が終わってすっかり片付いた後だった。


 碧は、先週言い放たれた「なにもわかっていない」その言葉を払拭したいと思っていた中で、自分なりに手順を分解しながら練習してきたのだが、その言葉の発生元となる本人が不在で拍子抜けした気分だった。


「みんな遅くなってごめんね〜。もうちょっと早く来れるはずだったんだけど」


 透はヘラヘラと笑いながら、自分が持っていたスマートフォンの画面をみせた。


「これ、春戦のトーナメント表が発表されたよ〜」


 瞬間。千歳、銀次郎、雪乃の目の色が変わったのはいうまでもなかった。


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