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幹の終わりに灯るもの――帰れなくなった少女の異世界旅――  作者: 河居


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価値ある選択

すっかり遅くなってしまった。

宴はそれは長く続いた。

皆浮かれて騒ぎ、篝火を焚いて、敷物を並べ……浜辺が静かになった頃には空が白み始めていた。


もはや明るくなってから出直すべきかとは思ったが、ヒロはムクタの家に向かっていた。

ムクタの家からは灯りがもれていた。


家の外からムクタに声を掛ければ、ひょっこりと顔を出して招き入れられた。





「遅くなってしまってすまない……」

「いやいや、君は主役の一人だからね。抜けられまいよ。宴が盛大だったのはいい事さ」


どっこいしょ。そう言って、ムクタがのんびりと座り、対面を手で示した。

指された場所に座り、まっすぐにムクタを見た。


「……信用してくれるようになったのかな?」

「なんの事だ?」

「いや、無自覚ならなお嬉しいよ」

――お願いをした時は警戒されていたけれど……まるくなったね。


「さて、サチくんとカナエさんにも伝えて欲しいんだけどね、君たちの刻限についてだ」

「確か、大塩の祭りの後になると言っていたな」

「そう。君たちが来てからもうずいぶんになる、祭りは7日後……君達の刻限はそれから3日後になるよ」

「3日後?」

「まぁ、神託がくだったようなものさ。……もう、人の手では変えられない」


どこかはぐらかすようなムクタの様子が気がかりではあるが、これが本題ではないのだろう。


「君に話したいのは、この世界に残る気はないかなって事だ」


考えてもいなかった。

ムクタに言われて、村の者たちの顔が浮かんだ。

仲間と呼んでくれた。

一緒に働いて汗をかいた。

成果を称えあった。

目を閉じて、深く息を吸って、吐いた。


「すまない」



「俺は旅を続けたい」



「それはなぜかな?」


ムクタの目を見る。

なぜか、ずっと歳をとった自分が答えを待ってくれているような気がした。


砂漠の世界。

砂に還った城門に感じた古傷を、

今、丁寧になぞった。


「自由でありたい」


「世界は美しい。可能性に満ちている。見てみたいんだ、たくさんの世界を」





「そうかい……」

ムクタは満足したように目を閉じた。


「君の選択は素晴らしい」




「だから……これから言う事を聞いても、君が選択を曲げないでいてくれる事を祈るよ」


ムクタの目が初めて殺気をおびるほどに張り詰めた。

警戒しよう、とは思わなかった。

ただ、ムクタのまとう覚悟の気配に、応えるように背筋を伸ばした。






朝焼けが眩しさを増した頃、ヒロは一人岩棚から集落を見下ろした。

小さく見える集落の向こう、浜辺では動き出した人の群れ。


『天国の入り口みたいですね……』


カナエの言葉が波の音に混じって聞こえた。


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