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幹の終わりに灯るもの――帰れなくなった少女の異世界旅――  作者: 河居


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変わらないもの

島作りの次の日、私達は砂浜に集まった。

皆、料理を並べてワインをついで、その時を待った。


「あ!見えた!」

誰かが叫んだ。

白い道の先に、昨日私達が作った島の種がそのままの形で海から現れた。

ほんの少し……もしかしたら広くなっているかもしれない。


「……あまり変わらないな。時間はかかると思ったんだが、期待はずれだったら――」

「そんな事あるかい!!」

落胆した声で話し出すヒロさんの肩をおばさんが掴んで大声を上げた。

「あんただって網を引いただろ!みんなで引いたって引き戻されちまうくらいここの潮は強いんだよ?」

「え?」

ヒロさんは何がなんだかわからない顔であたりを見回す。

皆、驚いた顔で島の種を見つめていた。

「よくご覧!この潮の中で、崩れずに立ってる!潮が引く時に渦を巻いて砂を運んでたよ!」


「上手くいったんだよ!みんなで、作った島は大塩の後だってきっと残る!」

おばさんの言葉にポカンとしたヒロさんは一拍置いてもみくちゃになった。


ただ、昨日のままある。それだけでも大成功だったのだ。


「ヒロさん、サチさん、カナエさん」

タタラくんだ。側にはククリくんも控えている。

「皆を代表して、感謝を伝えたいです。ありがとう、素敵な贈り物です」

タタラくんが深く頭を下げ、ククリくん、村のみんな、子供までもが大人に習って膝をつき、頭を下げた。

私はヒロさんを見た。

サチさんもヒロさんを見た。

ヒロさんは私達と目を合わせ、うなづく。


「俺はみんなと作りたかった。みんなを、仲間だと思ってる」



『同じ仕事に汗して、一緒に酒を飲んだあんたらの事は仲間だと思ってる――だから、俺たちはあんたには従わない』


「だから、礼は受け取れない。みんなで宴にしよう」


ヒロさんの通る声が響いて、歓声が地面を揺らすようだった。

なんだか感動してしまって、目尻に涙が浮かんだ。

サチさんが鼻を噛むフリをして、涙を拭っていた事は、秘密にしてあげる事にした。





「カナエさん!」

「タタラくん!ククリくんも!」

宴が始まり、楽しんでいるとタタラくんとククリくんがやって来た。

「子供達に聞きました。実験?してるんだって。何をしてるかはお祭りまでのお楽しみだと」

「あー!……すみません、遊んでばかりで……」

「そんな事ありませんよ。カナエさんのおかげでみんな明るくあれます。子供達の笑顔は、それだけで宝物ですから」

宝物という言葉に、意識が沈みそうになった。

「それから!……ほら!」

タタラくんが勢いよく言って、ククリくんを肘で小突いた。

小首を傾げながらククリくんを見つめた。

「いっ……わかってるよ!……その、悪かったよ。石、投げて」

「あ、そういえば……」

「そういえばって……あんた危機感どうなってんだよ」

ククリくんに呆れられていると、頭に馴染んだ重みが乗って来た。

「こいつのお人好しは危なっかしいんだ。保護者も楽じゃねぇの」

サチさんが頭に肘を乗せて来たのだ。

重い。

「ちょっ!サチさん!また子供扱いですか!?」

振り払うと、はいはいと、笑いながら退いてくれたけれど……遊ばれている気がする。

「おいおっさん!」

「サチさん!だろうが!」

サチさんが怒鳴るけれど、気にも止めずにククリくんが続けた。

「ソリ!浜に戻してくれた事、礼を言う!」

ククリくんが頭を下げた。


そうなのだ。

島作りのあと、みんな疲労困憊で浜に転がった。やり切った歓声ともみくちゃになるヒロさんを尻目にサチさんはロープをソリにかけ、浜まで戻そうとしていた。

手伝おうとしたが、浮力があるからいける!と顔を真っ赤にしてロープを引いていた。

結局引き潮にあって、とても一人では無理でみんなで浜まで戻したんだ。


「おかげで材料を無駄にせずにすんだ。あんたのおかげだ」


頭を下げ続けるククリくんの頭をサチさんが乱暴になぜた。


「お前の根性は見上げたもんだ。いい男になれよ、ククリ」


ばっとククリくんが顔をあげた。

サチさんは後ろ手に手を振って、男達の輪の中に入っていった。


「サチさん、かっこつけてますけど、涙ぐんでましたよ」

今度はこっそり教えてやった。




「ヒロくん」

「ムクタ!」

人の輪の中心にいるヒロにムクタは話しかけた。

「ムクタ様聞いて下さいよ!ヒロさんのおかげで倍以上力を出せるようになったんです!」

「これなら若いのの怪我も減りますよ」

皆口々にヒロに感謝し、成果を誇った。


――嬉しいねぇ、これ以上目を細めたら、目が無くなってしまうね。


「ムクタ、俺は感謝したいんだ」

ヒロがムクタの手を取って膝をついた。


「……訳あって、今まで自分というものが無かった。サチやカナエのおかげで少しづつ取り戻しているんだ」

ヒロの目は澄んでいて、とても美しかった。

「ムクタのおかげで、俺は初めてわがままを言えたよ。みんなで残る物を作りたくなった」

ヒロは周りを見やり、頬を上気させて続けた。

「そして、仲間に囲まれた……この上ない」


「きっかけをくれたムクタに、最大限の感謝を」

ヒロの最敬礼に場が沸いた。


「はは、ヒロくんはおいぼれを持ち上げ過ぎだな。こちらこそありがとう。こんなに素敵な贈り物は無いよ」


ムクタはヒロを抱きしめて、

耳元でそっと呟いた。




「宴が終わったら、家に寄っておくれ。話しておきたい事がある」

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