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幹の終わりに灯るもの――帰れなくなった少女の異世界旅――  作者: 河居


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一人より二人より……

おっさんが仕事を始めるのは早い。

いつも俺がつく頃には出来かけのソリのそばで出来を確認している。


「始めるか」


横目で俺が来たことを確認してすると、それだけ言って作業が始まる。



「しかしこんなまっすぐな木材よくあったな」

何日目かの作業で、おっさんはソリを見て言った。


大体は流木で作っているが、長さがあってまっすぐな物は少ない。

ソリの枠になる部分に使っている木材は太く、長く、まっすぐだ。


「おれんちを潰して柱を使った。今はタタラんちに居候だ」

「……」

「なんだよ」

「いや、気合い入ってんなと思ってよ」


おっさんの満足気な顔がくすぐったかった。




「あ、おっさん!」

「サチさん。な。わぁってる!ここはきつく、重ならないように巻くんだろ」

おっさんは雑だ。

木材をロープで縛る時に重ねて巻くと摩擦で切れたり緩んでしまう。

最初の頃は、そんなもん気にならんくらい巻けばいいだろ!と言っていたが、無限にロープがある訳じゃない。

だが今は――

「わかってきたんだな」

ロープは一列に巻かれている。

「おっさん、使えるようになってきたな」

ゲンコツを落とされた。






「本当はもう一つあった方がいいんだがな……」

タタラはヒロの言葉を受けて答えた。

「鏃形の先端ですね。1番波を受けますもんね」

木の板に書いた設計図にヒロが丸をつけた。

「そう、ここだ。今はみんながいるから、大きくても持ってこれる。どこかにあればいいんだが……」

「自分には思い当たりません……網作りをしているみんなにも聞いてみます」

「あぁ、頼むよ」



「それだったらぶどう畑の側にある水汲み場の岩がいいんじゃないかい?」

サチさんが水汲み場の岩をどければもっと水が出ると言っていたと、誰かが言った。

「きっと動かせるってことなんだろう。大塩の後は水もたくさんいるだろうし……いいんじゃないかい?」

――大塩の後……。

自分の体がこわばっていくのがわかる。

おばさんが網を編みながら穏やかな顔で言う。


「あんたはなんでも背負い込むんじゃないよ」

おばさんが肩をポンと叩いた。

無意識に握り込んだ拳が痛かった。



「これならいける」

男衆をつれて、ぶどう畑にやってきた。

ヒロさんは岩を確かめてうなづく。

「でも大きいですよ。どうやって動かすんです?」

「棒はあるか?曲がっててもいい。硬い物だ」

棒を何本か準備して、岩と崖の間に挟み支点に石を挟んだ。

「人の力だけでは無理だ。でも知恵があれば出来る事は増える」

押せ!

ヒロさんの号令でみんなで棒を押し込む。

岩は小さな砂クズをこぼしながら、ゴロッと動いた。

「動き出したら止めるな!転がすんだ!このまま浜まで行くぞ!」

そこからは大騒ぎだった。

転がるように動いた動きを止めないようにかわるがわる岩を押して転がし続ける。

「次!俺いく!」

「家の方行っちまうぞ!曲げろ!」

「曲げすぎだろバカ!」

なんとか浜までついた頃にはみんなで大笑いした。

「やったなタタラ!上手くいった!」

ヒロさんがバシンと強く肩を叩く。

「さっき知恵があれば出来る事は増えると言ったが……」

「言ってましたね。びっくりしました!」

柄にもなく興奮気味に答えてしまった。


――あんな大きな岩動くなんて思わなかった。


「ああ!でも、間違ってた。知恵だけじゃダメなんだ。みんなでやるから、出来る」


ヒロさんの澄んだ目に、自分も洗われた気がした。



「さぁ、準備は整ったな!……みんなの島を作ろう!」


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