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幹の終わりに灯るもの――帰れなくなった少女の異世界旅――  作者: 河居


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井戸端会議


「作戦はこうだ――」


ヒロさんはおばさんたちに地面に小石と枯れ草を置きながら説明した。

干潮の時に現れる小島の縁に沖に向かって鏃型に防波堤を組む。

石を支柱に、間に草で編んだ板を重ねて作るのだ。

防波堤ができれば、潮の流れに滞留が起こり、鏃型に組んだ防波堤の内側に砂が自然に溜まっていくだろう、というのがヒロさんの作戦だ。


「鏃型にする意味はあるのかい?」

おばさんがヒロさんの組んだ小石と枯れ草の模型を見ながら顎をさすった。

「小石を使って砂浜で試した。この形が一番だと思う。」

ヒロさんは澱みなく答える。

「網だけで波を支えられるのかい?あんたも網を引いただろ?ここいらの引き潮は強いよ……」

「それは……」

ヒロさんの目が模型を彷徨って揺れた。

そこへ、ふっと影がさした。


「小石を詰めりゃあいい」

サチさんだ、水飴を食べ切って両脇に子供達を抱えてやってきた。子供たちは、それなーにー?つみきー?と、興味津々だ。

「網の隙間に小石をつめろ。そうすりゃ水を完全に堰き止める訳じゃねぇが、強度は上がる。」

サチさんが枯れ草の隙間に砂利を落とした。


「なるほど……確かにそれならいけるかもしれない。でもあんたの案ではこれを干潮の間に作りきらないといけないんだろう?」


そうなのだ、ヒロさんの案ではこれは干潮の間に出来上がる事で効果が最大になる。何日かに分けてしまっては、脆い部分が崩れたり、作りかけた所から砂に飲まれてそもそも滞留が起こらないかもしれない。

なら――。


「それこそみんなでやりましょう!小石なら子供達も運べます。長い距離は重たいけどバケツリレーならきっと」

「ばけつりれーってのはなんだい?」

答えるより先に子供がバケツを持って走って来た。

「これだよー!」

バケツを持った子が次の子に渡すその子がまた次の子に渡していく。

「おかあさんたちがぶどうしぼりしてるときにしてるやつー!」

最初にバケツを持って来てくれた子が得意になって胸をはる。

「そう!それだよー!」

嬉しくなって子供たちの頭をぐりぐり撫ぜた。


「なるほどね、私らと子供らで小石はいけるだろう。男どもの協力もいるよ。話せるのかい?」


「タタラはもう何日かすれば大人の手がすいてくるから、協力してくれるだろうと言っていた」


「……タタラがそう言ったのかい?」


「そうだが……?」


「そうか……」

おばさんは一瞬だけ目を閉じた。


「試すような事を言って悪かった。網引きはあれだけ大漁だったからね。男らはしばらく暇だろうさ、あんたはせいぜい尻を叩きな」

おばさんはニカっと笑って言った。

「島はいつ出来るんだい?」

「何年もかかるかもしれない。……潮の満ち引き次第だ」



「上等!ここの潮は強いからね!」


おばさんがヒロさんの肩をバンッと叩いて立ち上がった。


私たちの向こうを、子供達がバケツを持って走り出していた。


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