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幹の終わりに灯るもの――帰れなくなった少女の異世界旅――  作者: 河居


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ほろ苦い

サチさんに鍋を任せ、夕飯をつまみながらヒロさんの話を聞いた。

サチさんも鍋をかき混ぜながら聞いていてくれる。途中、変わりましょうか?と声をかけたが、無言でヒロさんの方に顎をしゃくった。聞いててやれ、って事なんだろう。


「ムクタがなぜ島を作りたいのかわからなかったし、村に必要なものとも思えなかった。でも、どうするか考えているうちに真剣になってしまったみたいだ」


あらかたの説明を終えたヒロさんはそう言って壁を見つめた。


「なんとなく、わかります」


初めて屋上にあがって、あまりに綺麗な銀河に夢中になった自分が少し重なった。


サチさんの混ぜる鍋が水音からもう少し重い物を混ぜるようなタプタプという音を立てている。焚き火の火は小さく、影を揺らした。


「初めて……自分の時間を使ってる感じがしますよね」


そう言えば、ヒロさんはちょっと間抜けに見えるくらいポカンとした。


「ふふ……ヒロさん、口空いてますよ」

「あ、いや!すまない」


サチさんが鍋を見ながら微笑んでいる気配がする。


「ヒロさんは、島、作りたかったんですか?」

ヒロさんの目を見て聞いてみる。

ヒロさんは口を閉じて、難しい顔で考え込んだ。あたりに鍋を混ぜる音と、小さくはぜる焚き火の音だけがしばらくひびいた。


「島というか……自分で、何か残したかったのかもしれない」



「自分で、考えて、汗を流して――作ったもの。それが残るなら、嬉しいと思えたんだ」


ヒロさんの目は虚空に飛んでいたけれど、とても綺麗な目をしてた。


「それ、みんなでできたら、もっと素敵ですね」

私も何か手伝いたいな、サチさんも一緒に――。



「あ!!おいカナエ!」

サチさんが急に声を上げた。

慌ててヒロさんと鍋を覗き込む。

煮詰めた搾り汁は茶色いけれど一混ぜする事に濁りを無くして透明になっていく。

「わ!すごい!水飴みたい。こんなふうになるんですね」

「お前しらねぇでやってんのかよ」


サチさんが慎重に鍋を火からおろす。

しゃもじで掬うと、琥珀色の向こうにヒロさんの顔が見れた。


「粉になるかとおもったんですが……流石にそこまでは無理そうですね」

「何日煮込むつもりだったんだお前……」

サチさんは呆れているけど。

ははは……と、誤魔化し笑い。

「いいじゃないですか、完璧でなくても。きっと美味しいです」


「……そうか!」

ヒロさんがガバッと立ち上がった。

「全部を石でやる必要は無い……」

ヒロさんが何かぶつぶつ言いながらうろうろするのをサチさんと二人で目で追う。


行ったり来たりを何周かして、搾り汁の粗熱が取れた頃、ヒロさんはこちらに向き直った。

「カナエ!ありがとう!なんとかなるかもしれない!」

晴れ晴れとした顔にこっちまで笑ってしまった。

「なら良かった!味見しましょ!」



水飴を木の枝にとって3人で並んで食べた。

優しい甘みとほんの少しのほろ苦さが3人の頬を緩めた。

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