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幹の終わりに灯るもの――帰れなくなった少女の異世界旅――  作者: 河居


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51/121

ククリ


***


この村には子供でも知ってる物語がある。

寝物語に聞かされて、そのうちソラで言える様になる話。



ある入江に小さな村がありました


海の幸は絶える事なく


暖かい風がふく


皆仲良く平和に暮らす村


人々は波の音を子守唄に


朝焼けを目覚ましに


この暮らしを続けていました――



***



「お前ら、何しに来たんだよ」

やって来たマレビトとタタラを睨みつけた。


俺の家は皆と同じ簡素な作りだが、書き物机だけは無理やり入れてある。

描き殴ったメモや設計図が机の上だけじゃ収まらず、床にまでつまれている。

それだけじゃ足りなくて、布壁にまで思いついた事を走り書きにした……。

男が3人も入れば、狭い。


マレビトの一人――いつもうるさいおっさんがずんずん近づいて来た。

何かと身構えると、いきなり脳天に思いっきりゲンコツをくらった。


「いっ!!何しやがる!」

「こっちのセリフだ馬鹿野郎が!」


おっさんは昨日布を巻かれたままの掌を乱暴につかむと布を解きながら怒鳴った。

「傷はちゃんと洗え!包帯を変えろ!腐ったら腕ごと切り落とす事になるんだぞ!」

「なっ!?」

俺も、タタラも言葉を飲んだ。


「ヒロ!水持ってこい!タタラは清潔な布だ!酒も……出来れば強いのがいい、行け!」

おっさんがタタラともう一人のマレビトに指示を飛ばし、マレビトに促されたタタラは慌てて外に飛び出して行った。



ヒロとタタラはすぐに戻って来た。

「もう傷が臭うな……よく洗った方がいい」

「抑えよう」

「自分もやります」

傷口をよく洗い、酒で丁寧に拭う。

掌が熱く脈うって、一拍毎に痛みが骨から伝わるみたいだ。

感じた事の無い痛みに身を捻って抗った。


「いってぇ!!もうやめろよ!ほっとけよ!」

そう言った瞬間、人も殺せそうな目でおっさんが俺を睨みつけた。


「俺の!寝覚めがわりぃつってんだろうが!ガキが!大人しくしてやがれ!!」


あまりの剣幕に体が硬直した。

そのまま、体を押さえつけられながら傷口を洗われ続けた。




「全く、雑巾の方がまだ大人しいぞ……」

布を新しい物に巻き終えて、おっさんはため息混じりにつぶやいた。

「ゾーキン?」

「こっちの話だ」

「……なんなんだよいったい」

思わず愚痴っぽく呟いた。

こっちは殴られるは怒鳴られるはで散々だ。


「あぁ、そうだった。俺はヒロだ。ククリに聞きたい事がある」

マレビトのもう一人――ヒロが俺に視線を合わせて言う。

「ムクタに島を作るように言われている。そのために大きめの石を切り出したいんだが、どこか崖の脆い所を知らないか?」

「お前、あの穴掘る時に島中の崖見てんじゃねぇのか?なんかわかるんじゃねぇか?」

おっさんは鼻で笑うみたいに言った。



「そんな所、あったら俺が知りたい。あの穴だって……10年はかかってる」



ぶっきらぼうに吐いた言葉に、誰も返事をしなかった――。

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