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幹の終わりに灯るもの――帰れなくなった少女の異世界旅――  作者: 河居


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潮溜り


***


「呼び止めて悪かったね」

ムクタが湯呑みにお茶を注ぎ直しながら言う

何で作った物かわからないが、毒や麻痺を誘う物でない事はわかった。


「……慎重なんだな」

「なんの事だ?」

「別に……君がどんな生き方をしてきたかは知らない。でも君は私と似てる」

ムクタは視線を合わせてくる。

俺は合わせるようで、何にも対応出来るように視線を散らした。

「ほら、そう言うところだ。訓練されている。ククリの石を弾いたが……本当は受け止めて投げ返す事だって出来ただろう?」

図星だった。殿下を守るために鍛えられた。

それはつまり――。

「投げ返したら、相手を殺すと思って弾いたんだろう?」

この老人は何者だ?

「私はただ歳を重ねただけの老体だ。……警戒しないでほしい」

言いながら拙い土器を撫でた。

「君は私と似ている。……良ければ用事を頼みたいのだよ。構わないかな?」





ムクタの用事は何の意味も無いように思える物だった。



『干潮の時に現れる道の奥に島を作って欲しい。

出来上がる必要は無い。

時間のかかる物だろうから……。

ただ、やった事実と、贅沢を言えば痕跡が残って欲しいんだ。

私では……時間が足りないのだよ』



なぜそれが必要なのかはわからなかった。

ただ、ムクタの顔を見ていると拒否する事も出来なかった。




ムクタの家を出れば、少年が控えていた。

「お話が終わったら、案内をするように言われています。自分はタタラと言います。……さっきは弟が失礼をしました」

言って、彼はムクタのようにしっかりと頭を下げた。

筋肉はあるが、まだ細い……ちょうど子供と大人の間のような少年だ。

落ち着いた口調は大人びて聞こえるが、顔を上げれば垂れた目尻が年相応にみえた。


――カナエと同い年くらいだろうか……。


……もしかしたら、彼の弟を殺していたかもしれない。今はそれがとても恐ろしく思えた。

「弟か……。彼はなぜあんな事を?」

「ムクタ様に育てていただきました。血の繋がりはありませんが、弟と思っています。……マレビト様が訪れた時の大塩と祭りは特別なんです。…………それが嫌だったんでしょう」

タタラの言葉はどこか歯切れが悪い。

でも、彼はそれ以上何も言わなかった。


小さな集落で、見たところ外と交易をしている様子も無い……。排他的な土地なのだろうか。

だとしたら、急に現れた我々に敵意を向ける事もあるのだろうか……。


「ここです。今引き潮なので道も少し見えていますよ」


タタラの指す先で、透明な海面の下に白い道が見えた。沖に向かって青に飲まれている。


「干潮の間は道の先が少し広くなっているので、そこを島にして欲しいんだと思います」

「ムクタはなぜそんな事を頼むんだ?」



「さぁ……ただ、思い出なんだと言ってました」


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