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幹の終わりに灯るもの――帰れなくなった少女の異世界旅――  作者: 河居


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紙飛行機

ムクタさんの家を出て、集落を歩いた。

ヒロさんはムクタさんに呼び止められたので不在だ。

心配はあったけれど、サチさんと二人でヒロさんなら大丈夫だろうと結論をだした。



「ちょっと崖の方見にいってもいいか?」

そう言うサチさんについて歩いた。

そこまで広くない集落だが、崖まで行くあいだに村人達ともすれ違った。

「おねーちゃん、マレビトさまらのー?」

小さな女の子が、話しかけてきた。

あ!そう言えばマレビトってなんだろ?

ムクタさんから聞いてない!

ドギマギしているとサチさんが女の子のそばにしゃがんで目線を合わせた

「お嬢ちゃんは賢いなぁ。

このおねーさんはマレビトなんだそうだ。

“様“なんてつけねぇでおねーちゃんでいいぞ!」

ニコっと笑って女の子の頬っぺたを緩く摘んでくすぐった。女の子はきゃらきゃらと笑っている。

「サチさん凄い、強面なのに……」

「いい男に、女は夢中になるもんだ。大人も子供もねぇ」

さらには女の子を高い高いしている。父性が溢れすぎている。

私も負けていられないと思って、何か無いかと思えば私たちはバックパッカースタイルだ。リュックからメモ帳を取り出して端からビリビリと破いた。

「ほら見て!」

簡単な紙飛行機だ。海風に乗って、驚くほど遠くまで飛んでいった。

「おねーちゃん凄い凄い!どうやるの!?」

これには女の子も隠れて見ていた子供達もわらわらとやってきた。

「おー!大人気じゃねぇか。俺はちょっと見てくるからその辺にいろよ」

サチさんの言葉にみんなで元気よく返事をした。有り合わせの文房具で模様を書いたり、それぞれに工夫をしたり……楽しい工作が始まった。


***


サチは崖の麓まで来ていた。

集落からすぐだ。ここからでも、カナエや子供達がはしゃぐ声が聞こえる。

大人はそれぞれ仕事をし、子供だけで置いておける程ここは安全なのだろう。

そうでなくても、さっき集まった奴らは飢えても凍えてもいない。

だとしたら、ここは狭い。

広げようとしなかったのはなぜだ。

崖に手を触れると微かな振動が届いた。

探っていくと横穴が空いていた。

「これは……」

「誰だ!?」

奥から鋭い声がする。

木に石をくくりつけた道具――ツルハシ、というよりは手斧に近い。

石を投げたガキ――ククリがやってきた。

カナエと同い年くらいか……ガタイは悪くねぇがまだ背が低い。

太い眉に、吊り目がちな瞳は気が強そうだ。

外の光と対比されて、穴は暗いがそこまで深さは無い。掘っていたのだろう。ただ……石をくくりつけた手斧で掘れる深さではない。

「お前、ククリだったか」

「マレビトか……なんの用だ。言っておくが俺は謝るつもりはないからな」

歳にすれば17、8かそこらだろうか

……そんな子供に凄まれてもサチはびくともしないで穴を見た。

「おい坊主」

「ククリだ!」

「うるせぇ坊主。よく聞け。この掘り方はダメだ。俺は穴を掘る街にいた。このまま掘り進めたら死ぬ」

死ぬーそう言えば坊主は黙った。

「真四角に掘るな。天井は三角にしろ。それだけで強度は上がる。お前が何をしてるのか知らねぇが……見ちまったもんは仕方ねぇ。このまま死なれたら寝覚めがわりぃからな。大人の忠告は聞いておけ」

ヤマネコのように警戒した坊主に一息に言って、踵を返した。


この崖の地層は硬い。とても広げられるもんじゃねぇ……あのガキ何がしたいのか知らねぇが、なかなか根性あるじゃねぇか。


サチの視線の先では不恰好な紙飛行機がいくつも飛んでいた。


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