ムクタ
「なっ……」
サチさんが言葉に詰まった。
「今……刻限と、いったか?」
ヒロさんも動揺している。
「ムクタさん……あなたも、もしかして招かれた人?」
言葉は震えた。
***
場所を変えよう。そう言って招かれたムクタさんの家は他と変わらない簡素な作りだが、織物や小さな土器で飾られていた。
「子供達が練習で作るんだ。よく懐いてくれて、贈ってくれるんだよ」
ムクタさんは慈しむ様に土器に手を滑らせた。
「織物も花嫁道具の練習にと作っていた物を縁起物だからと譲ってくれた……長生きしてほしいそうだ」
伏目がちに微笑む様子に少しアヤさんが重なった。
人の暖かさが、そこに居なくてもある様な、暖かい小さな家だった。
「狭いがそこらに座ってくれ。さて、刻限の話だったね。多分君たちの刻限は――」
「いや、待て。待て待て」
サチさんが額を抑えて俯いた。
「あの……まずは刻限をなぜ知っているのかから……」
「あ、そうか、そっちね。うん。そうだね、確かにそっちが先だね」
「ムクタさん……意外とおちゃめですか?」
「カナエ、おちゃめとはなんだ?」
「お前ら、まずは止まれ」
サチさんが大きなため息を吐いた。
「ふふっ……仲が良さそうで何よりだよ。私たちの時は結構殺伐としていたからね」
「自分の時……か。じゃあやっぱりあんたは」
「あぁ、私は君たちと同じ様に――。あの間に招かれた」
アヤさんが言っていた……お前達が選べと。
ムクタさんは残ったのか……この世界に。
「アヤは……君たちの案内人はアヤなのかな?彼女は元気にしている?」
「はい!最初は距離を感じましたけど……心配してくれてるのも感じます。今はたまに笑ってくれたりしています」
「そうか……彼女が元気にしているなら、良かったよ」
なぜだかサチさんが少し緊張した様な気がした。
「私たちのグループは……なんと言うかな、主張の激しい者が多かったから。私は馴染めなくてね。この長閑な集落に居場所を見出したんだ。元の世界にも、……まぁ、あまり未練はなかったから」
ムクタさんの顔は複雑に歪んだ……。
聞いてはいけない気がして、何も言えなかった。
「最初に戻るが、君たちの刻限はおそらく一カ月後……大塩の時だ。祭りがある。それが終われば刻限だろう……私の時も、そうだったからね」
ムクタさんは息を一つ吐くと、切り替えた様に穏やかな顔で言った。
「……必要と必然、だったか。思うように過ごしてくれ」




