団欒
「お前ら……どうした?カツアゲにでもあったのか?」
サチさんがコワモテのお父さんみたいな迫力で覗き込んできた。
店に戻るとサチさんはすでに戻っていた。ちゃっかり異世界の酒を買い込んで来ていてアヤさんと晩酌をはじめていた。
……そこに鼻を真っ赤にして二人で帰って来たので、この有様である。
「ヒロ、お前がついていてどういう事だ?何があった?」
サチさんが真剣に怖い。
「サチ……違うんだ。初体験に、感動し過ぎてしまって」
ヒロさんの言葉にサチさんは雷に打たれたように固まってしまった。
アヤさんは向こうを向いて肩を震わせていた……。
サチさんが何をどう勘違いしたかわからないけど、二人で映画を見て感動したのだと説明したら、キョトンとしていた。アヤさんは盛大に吹き出した。
サチさんは
「ならいい……ならいい?…………??」
と、宇宙を背負ったネコみたいな顔をしていた。
「そうそう、…カナエ」
アヤさんが手招くと、映画の半券が光って、胸に溶けて消えた。
――縁だったんだ。
なんだか、少し苦い。
「俺も同じ物を持っているが?」
光に目を奪わていたヒロさんが思い出したように呟く。
「必要と必然だ……お前の必然ではなかったんだろう」
アヤさんが静かにそう言った。
それもそうか、と納得したヒロさんは少し大人びた顔をしていた。
「……で、これはなんだ?」
お土産です!と、出したぬいぐるみにサチさんが意義ありとばかりに声をあげる。
みんなネコのデフォルメでサチさんのはビール瓶を抱えてさやさぐれているのにどこか可愛い。
「似てません?ほら、すごくやさぐれてるのに優しそう」
「……俺はハードボイルドのつもりだ」
私は聞かなかった事にした。
「アヤさんはこれ!艶っぽい感じが似てるよねってヒロさんと言ってたんです!」
黒ネコだけど目尻と唇に朱の入ったやけに色っぽいネコだ。
「こんなふうに見えるんだな……ありがとう」
アヤさんが微笑んでくれるのが嬉しい。
「そして……これはヒロさんです!」
ヒロさんのはまんまるの白猫で目が三日月の線になっている。
「俺はこんなぼんやりして見えるのか?」
サチさんが向こうで似てる似てると笑っている。
「カナエはこれだな」
言ってヒロさんがポケットから取り出したのは若草色の毛並みでうるうるした瞳がかわいいネコだった。
「え、かわいい!……私、こんなに可愛くないですよ」
「いや、かわいいと思う」
私がボッと赤くなるのと、サチさんが大笑いするのは同時だった……。




