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幹の終わりに灯るもの――帰れなくなった少女の異世界旅――  作者: 河居


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ファーストシネマパラダイス

「やっぱりあると思ったんですよ!」

カナエは表情を明るくして言った。


ショッピングモールの奥には小さな映画館があった。チケット販売とフードの売店が併用された雑多なカウンターでは暇そうな店員が新聞を読んでいた。カウンターの奥には映画のポスターが何枚か貼られている。

今から見れる映画のチケットを買い、カナエに勧められるままポップコーンと飲み物を買って、劇場にはいった。



カナエは心なしか、ウキウキとチケットと一緒にもらったフライヤーを眺めていた。

「映画?が好きなのか?」

「あ!すみません。……舞い上がっちゃって」

「構わない。さっきは俺が真剣になっていたから……おあいこだ」

そう言って微笑めばカナエは少し安心したようだった。

「昔はよく行ってたんです。あの大きいスクリーンに物語の映像が流れるんですよ。音も大きいから、びっくりしちゃったりもするんです」


カナエが前方の白い幕を指さして話す。まだ上映まで時間がある館内の人はまばらだ。


「俺は初めてだ……少し緊張してしまうな」

カナエの隣で驚くのは…………少し恥ずかしい。


「大丈夫ですよ!ラブストーリーみたいでしたし。……男性には、少し退屈なくらいかもしれません」


「言ったろう?俺は初体験だ。退屈なんて事は、きっと無い」


カナエはクスッと笑って目を落とした。

「……最近は勉強頑張ってたんで」

少し照れたようにカナエは続けた。

「お母さんに誘われても、断っちゃってて」

その言葉のあと、カナエが少し固くなった気がした。


「なら、初体験と久しぶりの私たちだ。どんな映画でも楽しめるだろう」


そう言えば、カナエは緩んだ顔で小さくありがとうと言ってくれた。

彼女も、楽しめたらいいー。

ふと、そう思った。






始まった映画には本当に驚いた……。

観劇は経験があるが、それとはまた違った迫力があった。

美しい景色と音楽、登場人物の心が前よりずっとわかるのは映画だからだろうかー。



途中、女性の裸体がスクリーンに写り、思わず息を止めてしまった。何をしているかはサチの補講のおかげでわかったが……生々しく思えて、スクリーンを見れなかった。

そっと、カナエを伺って驚いた。


カナエは真剣にスクリーンを見ていた。

登場人物の心情の機微を逃すまいと見つめる目線はとても真摯で、自分がひどく幼く思えて背筋が伸びた。


それから、集中して物語を追った。

ストーリーは切なく、愛が溢れていて……エンドロールが終わっても涙が止まらなかった。

カナエも。



「ヒロさんがそんなにラブストーリー楽しんでくれるなんて思いませんでした。このチケット、宝物ですね」

カナエがチケットの半券を見せながら鼻を真っ赤にして見上げてくる。

「素晴らしい初体験だった。ありがとうカナエ」

カナエを見下ろす。

けれど……気持ちでは見上げていた。

「ヒロさん、鼻真っ赤ですよ」

「ッ……カナエだって!」



この日の事はきっと忘れないー。

宝物をしまうようにチケットを緩く握った。

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