幸あれ
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あのネコを探した。
気になったから、それだけだ。
痩せっぽちの子猫は昨日と同じ場所でうずくまっていた。
ここで餌がもらえたと知ったからだ。
でもここに身を隠す場所は無い。昨日みたいにカラスに狙われたらおしまいだ。
子猫の首を掴んで、周りが見えるように運んでやる。路地裏の奥、雑多にゴミや木箱が積んであるあたりで下ろして、餌をやる。
次の日、ネコは昨日の場所で丸まっていた。ここなら安全だ。でも飯はねぇ。
また首を掴んで、周りが見えるように歩く。
魚のあらや、食べ残しのゴミが溜まっているあたりで下ろしてやる。ネコはしばらく食べていて、腹が膨れると擦り寄ったが、撫でる事はしなかった。また首を掴んで寝床に戻した。
また次の日、ゴミ溜めで餌を漁るネコを見た。
「賢いじゃねぇか」
はじめて撫でてやった。
「俺達は行っちまうからな……一人で、ちゃんと達者にやれよ」
「サチさん」
カナエの声が聞こえた。
ヒロと二人、静かに寄ってきてネコを見た。
ネコは覚えていたのか、礼を言うようにカナエに擦り付く。
「はじめて会った時より元気そうだね。………お別れだね」
ネコは一声鳴くと、振り返らずに路地裏の奥へ消えていった。
「サチさん、お母さんネコみたいですね」
言ったカナエの目は潤んでいた。
独り言が聞かれちまったみてぇで居心地が悪いが……まぁいいか。
「俺は……サチが優しいと思う」
それだけ言ったヒロはずっとネコの方を見ていた。
あぁ、幸あれ………だな。




