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幹の終わりに灯るもの――帰れなくなった少女の異世界旅――  作者: 河居


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お好きなものから……

ヒロさんといると調子が狂う。

良かったら……と夕飯に誘ったがヒロさんの小鉢を出し忘れてしまったり、小鉢を出したかと思ったらお箸が無かったり……。

サチさんには

『洒落た事しようとするからだろ、大皿で出せ、大皿で』

なんて言われてしまった……。

ヒロさんは

『気にしないでくれ』

と微笑まれた……。

作り物みたいな笑顔だった……気を使わせてしまったんだろうか。


「上手く行かないなー」


「何かあったのか?」


いつもの屋上で、ノートやペンを広げて唸っていたら後ろからヒロさんに声をかけられた。

――ぜんぜん気づかなかった。またしても恥ずかしい。

「えっと……勉強!上手く行かなくて……」

言って、ノートを避けて参考書を出す。クタクタになってるので……なんだかこれも恥ずかしい。

「よく使い込まれている……書いてある事はわからないが……」

そう言ってヒロさんは参考書を広げるが……純文学でも嗜んでる趣きだ……。様になりすぎる。

「お前らもいたのか」

サチさんもやってきた。

肩には雑巾が乗っている。

「サチさんはお散歩ですか?」

「ここは散歩するには狭いだろ。ほら!」

言ってサチさんが何かを投げる。

雑巾が飛び出してサチさんが投げた木のボールを乗せて戻ってきた。

「たまに遊んでやるんだ。じゃないと騒がしくってしょうがねぇ」

言ってサチさんはまたボールを投げる。

「それ、薪から作ったんですか?器用ですねー」

「薪そのまま投げたらささくれが痛いだろ」

「……サチさんも大概ですね」

「なんか言ったか?」

「サチは優しいんだな」

「「!!」」

ヒロさん直球です。

「ばっ!馬鹿野郎!そんなんじゃねぇ!だいたいカナエ!お前しけた面してんじゃねぇよ。飯が不味くなるだろ!」

あ!飯!

「サチさんそれだ!」




「今日はお鍋パーティーです!」


取り皿は多めに出した。ポン酢と胡麻だれもあるし、魚介の殻を捨てる事だってある。あればあるだけ便利だ。お箸は箸立てから各自とってもらうスタイルで、飲み物もセルフサービス。

出し忘れも作り漏れもおこらない!

何より――。

「ヒロさんの歓迎会っていうことで……いっぱい食べましょ!」

大きな土鍋には肉に魚介、野菜に豆腐などたっぷりの具材。締めにうどんもご飯も準備した。鍋パーティーだ!

「おい、カナエ。パーティーはいいが、なんで俺の隣はこいつなんだ」

サチさんがアヤさんを指差す。

「親睦会を兼ねてます」

「カナエ、これは?」

「アヤさんそれまだ生です。こっちがいいですよ」

「肉は半生くらいがうまいだろうが」

「ダメです。豚肉なんで、お腹壊しちゃいますよ」

なんだかんだと話しながら食べ始めるが、ヒロさんの箸がなかなか進まない――。

「ヒロさん、お鍋はじめてですか?」

「あ、あぁ、すまない。食べる順番がわからなくて……」

「特に順番は無いですよ?お好きな物から……って言っても難しいかな。お野菜からどうですか?」

「いやお前わかってねぇな男なら肉からだろ」

「お野菜も美味しいですよー!白菜なんてシャキシャキとクタクタと2回楽しめます」

「……なんだと……どれだそれ?」

「ふふ、これです。ヒロさんも。お肉と白菜から……迷ったらヒロさんの気になった物から食べてみたらいいですよ」

「気になったもの……」

「はい!あ!アヤさんエビの殻は捨てていいですよ!食べたら硬いです!」

「お前どんな顎してんだよ……」

「あ!ヒロさんこっちも美味しいですよ」

「いただくよ」

お鍋初体験の三人にあれやこれやと話しながら食べる夕飯は賑やかで、夕飯を一人で食べる事も多かったカナエにとっても楽しく、和やかな時間だった。



――だから、ヒロさんが進めた物以外手をつけない事に、その時は気づかなかった。


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