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【歴史if小説】元寇は、壇ノ浦の戦いで滅んだ平家の残党の陰謀だった  作者: 松本 俊介


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第九話「熊本平野の合戦」


**第九話「熊本平野の合戦」**


**第一章:阿蘇の咆哮と白川の血戦**


至元十一年(1274年)十一月初旬。肥後・熊本平野。


白川を挟み、南北に二つの巨大な軍勢が対峙していた。


北には、博多を呑み込み勢いに乗る元軍の蒙古鉄騎兵と、平景明率いる平家水軍・裏切った肥後豪族の連合軍。南には、菊池武房や阿蘇氏ら、鎌倉幕府への忠誠を貫く肥後御家人の精鋭たちが陣を張っていた。


「肥後武士の意地を見せよ! 異国と裏切り者どもを白川の藻屑となせ!」


阿蘇氏の旗頭が叫び、剛勇で知られる肥後武士たちが馬を躍らせて激流を渡り始める。史実において「弓矢の道」に長けた肥後武士の突撃は凄まじく、白川の水面を蹴立てて元軍の先鋒へ肉薄した。


しかし、前話で景明が打ち込んだ「心理戦の楔」が、致命的な暗雲となって御家人たちを襲う。


突撃の最中、御家人軍の東翼を守っていた豪族の一群が突如として脚を止め、自軍に向かって弓を引いたのだ。


「裏切りだ! 身内に平家の寝返り者が混じっているぞ!」


御家人たちの足並みが一瞬にして乱れた。一騎討ちの武勇を誇る肥後武士たちにとって、隣に立つ味方がいつ背後から斬りかかってくるか分からない恐怖は、どのような大軍よりも恐ろしい毒となった。


**第二章:熊本陥落**


乱れる御家人軍に対し、景明は容赦なく合図を送った。


「全軍、一斉射撃。てつはうを解き放て」


白川の対岸から、轟音とともに黒煙と殺傷力の高い鉄片が降り注ぐ。混乱する御家人たちの陣列へ、蒙古の重装騎兵が集団で雪崩れ込み、左右から包囲してすり潰していった。


「ぐぬぬ……もはやこれまでか……!」


殿(しんがり)を務めた菊池武房は激戦の末、手傷を負いながら山間部へと脱出。熊本平野の防衛線は完全に崩壊した。


夕刻、景明は元の将軍たちとともに、熊本の要衝であった坪井川沿いの館へと入った。


かつて清盛の時代、平家の庇護を受けて栄えた肥後。落城した街を見下ろしながら、景明は静かに背の唐櫃に手を当てた。


「肥後は落ちた。これで九州の中央を穿ち、幕府の補給路と連携を完全に断ち切った……」


元の総司令官・忽敦(クドゥン)は、肥後攻略のあまりの速さに興奮を隠せない。


「素晴らしい手際だ、景明! この勢いで東へ折れ、豊後(大友氏)を叩くか?」


「いえ」景明は首を振ると、地図の南端——薩摩(鹿児島)を指し示した。


「豊後の大友は動けずにおります。今叩くべきは、南九州に君臨する最後の巨頭・島津です。薩摩の港を押さえ、錦江湾を手にすれば、九州全土は完全に我らのものとなります」


肥後を血で染めた赤き風は、九州最南端・薩摩の地を目指し、さらに強さを増して吹き荒れようとしていた。


---


**次回(第十話)のご案内**


第十話「虎と狼の均衡」

熊本を制圧した元軍。しかし、過酷な略奪を行おうとする蒙古の将兵と、「九州の民と平家の領土」を守ろうとする景明の間で激しい対立が勃発する。景明が抱える「悪魔の力を利用する者」としての葛藤とは?

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