第十五話「覇者フビライの真意」
**第十五話「覇者フビライの真意」**
**第一章:大都からの降伏勧告状**
至元十二年(1275年)春。九州全土を制圧し、平家の赤旗が久々に博多や錦江湾に翻る中、景明のもとへ大都(北京)からの使者が到着した。
使者がもたらしたのは、フビライ・ハーンの直筆印が捺された一枚の敕書であった。
「平景明よ。ハーンはお前の功績を大いに称えておられる。つきましては、征服した九州のすべての港と全兵力を直轄の元軍総督府へ移管し、お前自身は大都へ上り、ハーンに直接拝謁せよとの仰せだ」
使者の言葉に、景明の傍らに控えていた黒島の平家幹部たちが色めき立った。
「大都へ上れだと……? 実質的な人質ではないか!」
「九州を我ら平家に手渡すという約束はどうなったのだ!」
景明は手で制し、静かに使者を見据えた。
「ハーンのお考え、重々承知いたしました。されど、いまだ関門海峡の向こうには鎌倉幕府の巨大な追討軍が控えております。今、私がこの地を離れれば、九州の旧平家系豪族たちの統制が乱れましょう。いましばらくの猶予を」
使者は冷ややかな笑みを浮かべ、捨てゼリフを残して去っていった。
「断り切れぬ命とお忘れなきよう。ハーンの忍耐にも限界がございますぞ」
**第二章:ひび割れる同盟**
使者が去った後、景明は一人、博多の館の奥で海図を広げた。
フビライの狙いは明白であった。元軍の火砲と物量で博多から薩摩までを穿たせ、九州を「日本の不沈の要塞」としたところで、用済みとなった平家の末裔(景明)を排除し、完全な元の直轄地にすることだ。
フビライにとって、景明は単なる「便宜上の案内人」に過ぎず、九州の御家人や民の心を掌握しつつある景明の存在は、今や最大の危険分子となっていたのである。
「やはりな……狼の牙を借りて鎌倉を撃たせようとしたが、狼は最後に我らをも喰らい尽くす気だ」
景明は背の唐櫃に手を触れた。中には壇ノ浦の深淵より持ち出された神器が鎮座している。
「だが、フビライよ。我ら平家は蒙古の傀儡になるために八十年を耐え抜いたのではない」
景明は直ちに密使を放ち、九州各地に留まっている蒙古軍の配置、そして元軍総司令官・忽敦の動きを監視させ始めた。
鎌倉幕府(源氏)という表の敵、そして元軍(蒙古)という背後の毒蛇。二つの巨大な勢力に挟まれた景明の決断の刻が、刻一刻と迫っていた。
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**次回(第十六話)のご案内**
第十六話「鎌倉の激震」
九州完全喪失の報が鎌倉へ届く。執権・北条時宗の激動と、混乱する幕府内部。幕府は全総力を挙げた大遠征軍(追討軍)の編成に着手する!




