エンディング
カーテンで外の世界を切り離した薄暗く冷たい部屋に、朝日が射し込む。
冷たい眠りから目を覚ました翔は、いつもより清々しく気持ちよく起きることができた。
しかし、いつもと何かが違う。
周りを見ても何も変わったことはないが、違和感があった。
頭を抱えながらリビングに向かおうと部屋を出た時に、その違和感が何か分かった。
……音がない。
いや、厳密に言うと生活音がしない。
聞こえるのは、自分の息遣いと歩く足音だけだ。
まるで、この世界に自分一人しかいないような感じだ。
リビングの扉を開けると、僕は言葉を失い驚愕する。
ダイニングチェアに座っている、全身黒に統一した服装している人物がいたのだ。
少し前かがみになり、ダイニングテーブルに両肘を付けて手を組んでいる。
被っている帽子を深く被っているのか上半分の顔が見えなかった。
「……ファントム?」
僕がそう言うと、その人物は少し顔を上げ口角を少し上げた。
「……あぁ、そうだ」
一言であるがファントムは答えた。
実際にファントムと対面して会話をするのは、これが初めてだ。
恐怖と好奇心が入り混じる気持ち悪さを抱きながら、ファントムと対面するようにダイニングチェアにゆっくりと腰掛ける。
「君が、私の名付け親であり操作していたんだな」
「……はい、そうです」
「これまで私の体を使って次々と君の願望で邪魔者を始末した。それについて感想を聞きたい」
ファントムの口調は優しいが、どこか冷たくて重い。
だが、唯一の理解者だ。
「僕の邪魔をする人がいなくなって、まるで人生が変わったような楽しい日々を暮らしてます。本当に感謝してます」
「……親友を始末した時もか?」
「あいつは、僕を罵ったんだ。だから親友ではない。自業自得だ」
僕の言葉を聞いたファントムは、不気味な笑いをした。
「あぁ、すまない。馬鹿にして笑ったわけではない。なるほど。君は面白い」
「そうですか?」
「あぁ、君はもうファントムだ。ただの名前ではない。そして私ではない。君の存在そのものだ」
僕がファントム?
少し驚いたが、喜んでいる自分がいた。
ファントムは左袖を少し上げると、銀色の腕時計が見える。
時間を確認しているのか、微かにファントムの頭が頷き袖を元に戻した。
「そろそろ時間だな。最後に1つだけ聞く。君は何人始末した?」
「……三人です」
「……そうか。やはり君は面白いよ。さぁ、そろそろ戻らないと行けない。真実が分かるはずだ。君との会話とても楽しかったよ」
僕は椅子から立ち上がり、リビングの扉へ向かう。
後ろから冷たい視線を感じながら、ゆっくりと扉を開けた。
どこからか、けたたましい音が聞こえる。
不快に思いながら、目を開けると自室だった。
どうやら、夢を見ていたようだ。
だが、いつもだとすぐに忘れてしまう夢が、今回は脳に焼き付いているかのように、鮮明に記憶している。
ファントムがなぜ笑い、そして別れ際に真実が分かると言っていた。
ただの夢か、それとも何かの警告なのか……。
ベッドから起き上がり、向かうは脱衣所。
学生服に着替え終わってリビングに行くと、父さんと母さんがいるいつもの光景。
今日の朝食は、白米と豆腐とねぎが入った味噌汁、そして、焼き鮭だ。
食べながらテレビを見ると、ニュースが流れていた。
あまり興味はないが何気なく見ていると、ある事件が報道された時、箸が止まる。
「合影町で発生した殺人事件。恋人である真壁麻美さんを殺害した容疑で村田淳容疑者を殺人の容疑で逮捕。青森県警の調べによると……」
……まさか、そんなはずはない。
僕が殺したはず。何かの間違いだ。
「どうしたの?」
テレビに凝視していた僕を不思議に思ったのか母さんが聞いてきた。
「あ、いや。犯人逮捕されたんだな、と思っただけだよ」
「そうだね。こうやって見ると人間が一番怖いかもね」
止まってた手を再び動かし、食事を済ませた。
「ご馳走様でした。行ってくるよ」
「行ってらっしゃい。気をつけて」
玄関から外に出ると、眩しい朝日が迎える。
白い息を吐きながら歩くが、先程の犯人逮捕が頭から離れない。
あれは間違いだ、僕が殺したんだ。
あの村田淳って人は、偽物だ。
そんなことが頭の中で繰り返し語っている。
気づくと、校門前まで来ていた。
白い絨毯には幾つもの足跡が残っており、新たに僕の足跡を残しながら昇降口に入った。
校内は相変わらず冷えており、すぐに内履きに履き替え、教室へ向かう。
教室に入ると、昨日の出来事のせいか誰もが大人しく声すらない。
全員、自分の席に座って何か思い詰めているような雰囲気であった。
1つの席だけ、花瓶が添えられている。
あぁ、そうだった。
蒼太が死んだんだよな。
僕は、まるで興味がないような感じで自分の席に座る。
座ってしばらく窓から外を眺めているとチャイムが教室内に鳴り響いた。
このチャイムと裏腹に、教室内は未だに通夜のようだった。
チャイムが終わると同時に中村先生が教室に入ってくる。
どこか足取りが重く、暗い顔な中村先生は教卓に立つ。
僕たち生徒を一度眺めてから声を出した。
「皆さん、おはようございます」
誰も返答しない。まるで人形のようにうつむいている。
「……皆さんに、悲しいお知らせをしなければなりません」
中村先生が話した後、すすり泣く声が聞こえた。
「……隣のクラスの坂本正樹君が、昨夜自宅で発生した火事に巻き込まれ亡くなりました」
先程までの疑いが確信に変わった瞬間だった。
テレビで報道されてた犯人逮捕は嘘じゃないか。
正樹を殺したのも僕。蒼太を殺したのも僕。真壁っていう女を殺したのも僕だ。
あの犯人は、自分が目立つために嘘をつきやがった。
たしか名前は……村田淳だったか。
僕の邪魔をした嘘つきは始末しないと。
みんなが悲しんでいる中、僕はスマホを取り出し、机の下でその嘘つきを調べた。
下校時間になり、誰もが暗い顔をしながら帰宅した。
僕は次の標的が決まり、ほくそ笑みながら帰宅する。
家に着き中へ入ると、涙声で母さんが出迎えた。
「……翔。坂下君が……」
夕方の地方ニュースを見たか、近所から聞いたのだろう。
面倒だが、悲しんでいるように演じないとな。
「……学校で聞いたよ。正樹が火事で死んだって」
家の中は明るいのに、雰囲気はどこか淀んでいた。
リビングに行くと、父さんが複雑な顔してテレビを見ていた。
テレビには事故や行事など青森県内の今日の出来事が流れ、その中でも正樹の家が火災というニュースが詳しく報道されていた。
ダイニングチェアに腰掛け、僕もその詳細を見る。
「今日未明、青森県淡里市待原町で一軒の住宅火災が発生しました。この家に住む坂下昇さん、妻の由香さん、その息子である正樹さんが逃げ遅れて亡くなりました。警察の調べによると階段下収納が激しく燃えており、何らかの原因で出火したかと詳しく調べています。次は、お天気です。今日は全国的に……」
やはり間違いはなかった。
ただ、正樹の両親まで犠牲になったのは予想外だった。
まぁ仕方ないか。正樹が悪いからな。
「翔。あれってお前の友達じゃないか」
いつもは無口な父さんが、珍しく聞いてきた。
驚きのあまりに聞いてきたかと思う。
「うん……そうだよ。昨日は同級生の自殺の知らせがあって、今日は正樹が火事で死んだ。何がどうなっているのか……」
僕は、悲しみを演じるため声を少し低くして話した。
「そうか。世の中どうなるかわからないな。最後のあいさつで葬式かお別れ会があると思うから、必ず行くんだぞ」
「……わかった」
僕は椅子から立ち上がり、風呂に行こうとしたら母さんが声をかけてきた。
「翔。ご飯食べることできる?もし無理なら無理に食べなくてもいいよ」
傷心となった僕を気遣った母さんが心配そうに聞いてきた。
「ありがとう。なんか食欲がないから今日は食べない。風呂から上がったら休むよ」
「そう……わかった」
リビングの扉を開けると、廊下の冷たい空気が体を襲う。
まるで冷たい両手で包み込まれ引っ張られるかのように、ゆっくりと廊下に出てリビングの扉を閉めた。
脱衣所も凍えるような寒さだった。
冷えきってしまった体を温めるため、急いで浴室の扉を開ける。
中は霧状になっており、湿った空気が僕の体にまとわりつく。
温かい両手で、まるで包まれるかのように浴室に入る。
体を洗い、湯気が立ち込める湯船に入ると、冷たくなった体の芯から徐々に温まってくるのを感じる。
悲しみを演じて気疲れした精神も緩和され、ようやくまともな考えができる。
「村田淳を探さないとな……」
腕を組みながら頭を抱えた。
時折、湿気で水滴ができた天井を見上げながら唸る。
ふと、ある事に気付く。
「ファントムが降り立つ町は、次の標的がいるという意味なんじゃないか?」
今思い返せばそうだった。
最初の町、丘上町では女性を始末。次に地下鉄を使い泉伝町に着き、蒼太を始末。最後にまた地下鉄を使い八馬羅町に着き、正樹を始末した。
そうなると、これからゲーム開始してファントムが訪れた町には必ず標的がいる、となるはずだ。
善は急げだ。
風呂から上がり、濡れた体をバスタオルで雑に拭き取る。
急がないと、機会を逃してしまう。
寝間着に着替え、すぐに自室へ行く。
風呂上がりのお陰で寒さは感じず、部屋の照明をつけて早速ノートパソコンを起動させる。
ノートパソコンが立ち上がるまでの間、部屋の壁掛け時計を見ると時刻は19時22分。
今日中に見つけて始末する。
自分の中に今日というタイムリミットを作動させ、ホーム画面が映るノートパソコンをマウスで操作し、ゲームを起動させる。
セーブデータをクリックし、ロード画面が映る。
「……早く、早くしろ!時間がないんだ!」
焦りと嘘つきに対する憤りで、思わず口にしてしまった。
ようやくロードが終わり、ゲームが始まる。
暗闇の画面から電車が走る音とブレーキ音がなる。
電車が完全に停車したのか、空気の抜ける音が響く。扉が開くのと同時に、画面はフェードインする。
地下鉄から降りたファントムが映り、駅には人が少なかった。
聞こえてくるのは、ファントムが乗ってきた電車が走り出す音。
出口はどこかわからず彷徨っていたら、奥に切れかけの照明が照らしている階段を見つけた。
階段に近づき上を見上げると、夜空が見える。
雪とともに吹き込む風は、どこか寂しく悲しい音が耳に響く。
地上に着き辺りを見渡すと、行き交う人々はどこかに向かって歩いている。
家に帰る人もいれば、どこか遊びに行く人が入り交じり、まるで現実のような光景だった。
ファントムを後ろに振り向かせ、ここはなんという町なのか階段上に付いている屋根に駅名を見る。
羽地皆駅……、相変わらず読めないな。
駅名の横に書いてあるローマ字を読む。
ウチ……ミナ……エキ。
なるほど。つまり、この町は羽地皆町か。
僕は何か違和感を感じた。
これまでの駅名が、実際の町の名前が文字の入れ替えで構成されていた。
「これ……僕が住んでいる涙打町をアナグラムしているのか」
よく目を凝らして、駅前の景色を見る。
目の前には噴水、右側には神社、そして左側はネオンが煌めく飲み屋街。
間違いない。ここは現実の涙打町だ。
この町のどこかに村田淳がいる。
忘れもしない憎き顔は覚えている。だが、どこに潜伏しているかわからない。
現実の逮捕された村田淳は警察署内の留置所に連行されるはずだが、仮にこの町が浪打町のモデルだとしたら警察署はなく、あるのは交番だ。
だが、ファントムはここにいる。
つまり、この町のどこかに潜伏しているはずだ。
長い夜になりそうだが、必ず見つけると自分の心に誓いファントムを操作する。
あれからどのくらい時間が経ったのだろうか。
画面から目を離し、部屋の壁掛けの時計を見ると時刻は21時41分。
もう2時間以上も探し続けてはいるが、どこを探しても村田淳らしき人物が見つからない。
ネオンが輝く飲み屋街周辺で探してはいたが、この時間帯だと外にいる人が少なく、すれ違う人は酔っぱらいか、夜の仕事している与太郎風な人ばかり。
「ちくしょう……どこにいるんだよ!」
あまりの苛立ちで、思わず暴言が出る。
たかがゲームで感情むき出しになるのは情けない。我に返り平常心を保つように心掛けながらファントムを操作する。
ゲームの中で絡まれるのも嫌だし、これ以上この場所を探してもいないと判断して別の場所に移動する。
来た道を戻り歩き続けると、黒に染まった空から無垢なる雪が降ってきた。
地面に落ちてすぐに消えていく。その光景を見つめながら、僕は今まで始末した人たちのことを考えていた。あいつらも、この泡雪のようにあっけなかった。
操作しているファントムはどう思っているかわからない。
僕と同じ気持ちなのか、それとも何も思っていないのか……。
歩き続けると、再び駅前にたどり着いた。
前に見た光景と違うのは、深々と降りしきる雪がこの町を白く染めていた。
そして黒いロングコートを羽織っているファントムの体にも雪がつき、体温で溶ける。
黒に染まったファントムには白に染まることはなかった。
次に向かうは、人々が今、深い眠りについている住宅街へと足を運ぶ。
ファントムはゆっくりとアスファルトに積もった淡雪を踏みながら、一歩ずつ確実に足跡を付けて歩き出す。
誰ともすれ違うこともなく、住宅街に着いた。
辺りを見渡すと、やはり現実の町と似ており僕は感心する。
左のアパート専用駐車場の中に、車は違うが指定されている場所に止まっており、空いている駐車スペースも現実と同じだ。
僕が学校から帰宅するときに、この似ている道を使っているが、この駐車場の車の配置は覚えている。
そうなると、この道を歩き一本目の十字路を右に曲がるとコンビニがあるはずだ。
ファントムを操作し歩かせて、十字路の右を覗き込むように見ると、光が見えた。
近づいてみると、手前に駐車場、その奥にはコンビニがあった。
やはり間違いなかった。
たしかにここは、僕が住んでいる家から近い住宅街だ。
今の場所から三本目の十字路を右に曲がり、次に左に曲がると自宅であるはずだ。
この世界の自宅がどういう感じか気になり降りしきる雪の中、再び歩き出す。
歩き続けて三本目の十字路を右に曲がる。
ここの景色も現実と似ていた。
確信を持ちながら、左に曲がると僕の自宅に似ている建物が見えた。
念の為、塀に付いている表札を見て見ると、黒川と書かれており、間違いなく僕の家だった。
顔を上げ自宅全体を見渡してみると、背筋が凍る。
「……え」
見ると、2階の自分の部屋から明かりが漏れている。
誰かが僕の部屋にいるのか?
それ以外の部屋は暗く、物音もしない。
「確かめないといけないな。村田淳の前に不審者を先に始末しないと」
確認のためインターホンを押し、身を隠す。
しばらく待っても誰も来ない。
……おかしい。
この時間にインターホン鳴ると、1階の照明がつき父さんか母さんが見に来るはずだ。
それがない。
不審に思い、物は試しに玄関ドア引いてみると開いた。
施錠されていない。かけ忘れか……。
中に入ると闇に包まれた空間が広がっていた。
しばらくして、目が暗闇に慣れて若干目視できるようになった。
足元を見ると、土間に知らない靴が一足あった。
多分これは……男性の靴だ。
だったら尚更おかしい。
なぜ、インターホンに反応しないんだ。
家の中は、現実で僕が住んでいる間取りと同じだった。
玄関上がってすぐ右が二階に続く階段。左の扉を開けると脱衣所。同じだな。
その隣がトイレになっているはずだ。
ゆっくりと扉を開けてみると目の前に便座がある。ここも同じだ。
そして廊下の奥の扉を開けてみると、リビング。
間違いない、僕の家だ。
間取りの確認を終わった僕は忍び足でリビングに行き、台所から包丁を一本取り出す。
二階にいる人物は何者か分からない。これは護身用だ。万が一のために。
右手に包丁を握ったまま、ゆっくりと2階へ向かう。
踏み板が軋まないように、慎重に一歩ずつ二階へ上がる。
上がりきって右の扉は父さんの部屋だ。
扉の下の隙間からは明かりが見えない。
寝ているか、あるいは現実とは違い居ないのか。
そして正面は母さんの部屋。ここも父さんの部屋と同じく明かりが漏れてない。
右の突き当りが僕の部屋になる。
右に曲がると、扉の下から明かりが漏れていた。
明らかに誰かがいる。
包丁を強く握り、ゆっくりと近づく。
扉に耳を当ててみるが、音がしない。
……もしかして、ただ消し忘れただけなのか。
確認するために、空いている左手でドアノブに手をかけ回す。
音が鳴らないように、慎重に回し手前にゆっくりと引く。
少しずつ、中の明かりが大きく広がっていく。
緊張と恐怖で心臓の鼓動が止まらない。
冷たい汗が額から流れ落ちる。
頼む……照明の消し忘れであってほしい。
僕は無意識に唇を嚙み締めていたのが、血が出てくる。
ついに扉は完全に開かれた。
真実とは残酷なものだ。
目の前の光景を受け止めなければならない。
ノートパソコンが置かれている机に向かい、椅子に座っている人物の背中が見える。
この不審者、僕の部屋で何やっているんだ。
今すぐ始末しないといけない。
持っている包丁を両手で強く握り、画面の中の不審者が晒す無防備な背中上部へ、思いっきり突き刺した。
マウスをクリックした、その刹那。
「うっ……!」
凄まじい衝撃が、僕自身の背中の中心を貫いた。
右手に伝わったはずの、肉を両断する生々しい手応え。それが、まったく同じ質量と殺気を持って、僕の肉体へと突き返されている。
痛い。あり得ない。刃物などどこにもない。自室のノートパソコンの前で、僕はただマウスを握ているだけだ。
「やはり君は面白い人だ」
背後から聞き覚えのある声がした。
まさか……あり得ない。
ここは現実だ。現れるはずがない。
僕の脳が誤作動を起こし、幻聴が聞こえているのか。
「おや?あまりの痛さに声が出ないのかね?」
「ファン……トム?」
「そうだ。私だよ。君が答えたように三人目を始末しに来たんだ」
「え……何を言って……」
痛みと混乱で頭が追いつかない。本当にファントムなのか?
突然、心臓の鼓動が激しくなり、あまりの痛さに胸を押さえる。
息もできないほど呼吸は浅くなり、意識が朦朧とする。
「君は最初の犠牲者である女性をカウントに入れた。だが、それは違う。真実を目の当たりにしただろ?」
……真実?村田淳の事を言っているのか?
あれは偽物だ。僕は認めない。
「もう長くないようだな。村田淳って男が真壁麻美を殺害し逮捕。これが真実だ。君は関係ないのだよ。自分が始末したと勘違いしたまま、君は狂いだし同級生を始末した」
「……違う。あいつは……偽物だ」
痛みに耐えながら反論する。
「残念だが、これが真実。君が答えた三人目は君自身なんだよ」
突然、心臓が痛くなり息苦しくなる。
意識が薄れていく中、画面を見るとエンドロールが流れていた。
そしてエンディングテーマ曲がG線上のアリアだった。
「素晴らしい。君に対する手向けのようだ」
薄れゆく意識の中、壁掛け時計を見ると時刻は0時4分。
あまりの皮肉に笑ってしまう。
「……生まれた日に銀幕が下がる……か」
それが僕の最期の言葉で、まるで糸の切られた傀儡人形のように椅子に座ったまま意識を失う。
「君は最高に面白く哀れ人間だったよ」
ファントムは静かにその場を去った。
誰も見ていない画面にはエンドロールが終わり、最後にこう書かれてた。
——セーブインサニティ——
作者 古鳥居日影




