第八話「消え去る」
嫌な音が戦場に鳴り響く。
二一型はユニットにナイトメアの弾をモロに喰らったのだ。
直前に二一型は姿勢を変えたが、五二型なら正面からまともに喰らっていただろう。
「あ…あぁ…ッ!」
五二型の瞳孔が静かに揺れ動く。
「…五二、後はよろしく…」
そう言うと二一型は空中のバランスを崩して真っ逆さまに墜ちる。
ユニットの破片が大空に投げ出されていく。
「…生きては帰るよ…多分ね。」
二一型の影が厚い雲と蒼海に消える。
だが五二型と隼が後悔に浸る時間はなかった。
ここは戦場ゆえにどこから攻撃が来るかわからない状況だ。
すぐに二人は動き出した。
「っ…!」
五二型は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
目の前から向かってくるナイトメアから機銃弾が飛んでくる。
身体を捻らせて避けるが、1発だけが五二型の頬を掠めていく。
微細な傷、しかしそこから確かに赤いものがこぼれ落ちる。
ナイトメアを確実に仕留める五二型の瞳には水面が反射していた。
だがナイトメアは待ってくれない。
「くっ…数が…!!」
どんどんと数を減らしているはずなのに勢いが減らないのだ。
またもやナイトメアが接近してきた。
五二型は咄嗟に7.7mmで牽制しようと構えた。だが、すでに五二型は後ろにナイトメアがいることをわかっていたのだ。
「しまった…!援護は…」
しかし隼がくるのには時間がかかる。
少なくとも今この瞬間に届くような距離ではなかった。
上や下に行くにしても2機を同時に相手をするのは20mmが切れかけの五二型では厳しかった。ここで万事休すかと五二型は思った。
その瞬間、銃撃音が鳴った。
「なんとか間に合った…!」
そこには二二型の姿が見えたのだ。
二二型は五二型を見て口を開く。
「二一姉さんは!?」
「…ごめん。」
五二型はそれしか言えなかった。
「…謝らないで…二一姉さんもわかって行ったはずだし…!」
二二型は機銃を握りしめてナイトメアを迎え撃ち始める。
二二型の20mmが火を吹いた。
「手っ取り早くはあるけど…そこまで多く使えない…」
そんな愚痴を呟きながらも7.7mmで微かなダメージを蓄積させていく。
だがしかし、なかなか手強いものである。確実に7.7mmでは火力不足だ。
その瞬間に二二型の前にいるナイトメアがドンッと崩れ去る。
「くっ…!!」
高速で雷電の影が過ぎ去る。
稲妻のような1撃を喰らわせるとすぐに離脱した。
零戦ほどではないが素早くぐるりと回るとまたもやナイトメアに向かっていく。
ナイトメアの数が少なくなってきたからこそ素早く仕留めなければいけない。
なぜならこれ以上時間をかけると帰るまで体力とユニットが持たないからだ。
雷電はヘッドオンを敢行する。
「しまっ…!いや、いける!」
若干ユニットに掠ったが直接身体に当たったわけじゃないのでそのまま押し進める。
しかし仕留め損なってしまったのだ。
だがそのナイトメアに20mm機銃が降りかかってくる。
雷電が思わず振り返る。
そこには一一型の姿が見えた。
「遅れた…ヘマしたわね…」
一一型が独り言のように言った。
ナイトメアに一瞬で詰め寄るとさらに2〜3発の20mmで相手のバランスを崩す。
「もう逃げ始めてるのかな…まばら過ぎる…」
そう呟く一一型の目の前には逃げ始めるナイトメアたちが映っていた。
その言葉を聞いて五二型は同じ方向を向く。
「はぁ…っう…は…ぁ…」
終わった瞬間、五二型から力が抜けた。
「…っ…ふぅ……いっ…!?」
ズキっと痛みの下ほうを見ると、自分の腕の布が赤く染まっていた。
ついさっき掠った時の傷が空戦機動で開き始めていた。
だが痛みを押し殺して先に無線に向けて言葉を発する。
「…ぐ…こちら五二、敵ナイトメアの撤退を確認…」
その無線が司令部に届く。すぐに返事が返ってきた。
『了解。全員空戦やめ。帰還せよ。』
その言葉が指令として無線を通して皆に聞こえる。
その言葉を聞いて隼は腕をだらんと落とす。
「了解。…はぁ…」
そらむすめたちが高度を落としていく中で一一型は高度を落とさなかった。
「…一一姉さん?」
そう二二型が一一型に問いかける。
「少しね…二一をちょっとだけ探してみる。」
「えっ…だめだよ、またナイトメアが来るかも…」
二二型は一一型を止めようとする。
だが、一一型はその言葉を抑える。
「そうだけどね…私はまだ20mmもだいぶ残ってる。ちょっとだけ、私の頼みを聞いてくれないかな。」
その言葉を聞いて二二型は不安そうながら笑った。
「わかった。絶対帰って来てね?」
「当たり前よ。」
二二型は高度を下げていく。
そんな途中で五二型が視界に入った。
五二型は傷の痛みに少し目が眩む。
「…大丈夫?」
隼がそう問いかける。
「絶対…大丈夫だから…」
「…はい…」
隼の言葉にも五二型は不安な感情を隠せなかった。
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「…う…つめた…あそこから墜ちて生きてるんだ…いてて…」
二一型は極防から少し離れた海の上でそう呟いた。
「ユニットのかけらが浮きになってくれたけど…どうしよ…死ねないもんなぁ…」
ゆらゆらと動く水面では二一型のユニットのかけらが浮かんでいた。
だがそんなユニットのかけらもずっと浮いてるわけではない。
「いずれ沈むなら泳いで近くの島とかに行ったほうがいいのかな…でも、ちょーっと掠っちゃったし…どうしよ……」
そんな考えが思い浮かぶ中、静かに水面が揺れた。
「…大丈夫ですか?」
揺れた水面の上から声が聞こえた。
「…あ、あなたは…」
8話を見てくれてありがとうございます。作者です。
なんだかんだで登場人物が増えていってるので結構大変ですね。
また見てください。




