第七話「神鳴る。」
夜が明けそうな中、極防では焦りが見えていた。
ナイトメアが日本の防空識別圏に接近していると哨戒班から連絡が来たのだ。
『現在出撃可能なそらむすめは警戒体制に入れ。』
そう司令部からの指令が無線に飛んだ。
その指令を真っ先に受け取った隼はユニット室に飛び込んだ。
目の前には、零戦姉妹や米軍機のようではない一人の少女がいた。
「…来たの?もちろん行けるよね?海軍は陸軍より優秀なんでしょ?」
隼は少しだけ、見極めるかのように目を細める。
「…ふふっ。」
そんな中、少女は少しクスリと笑ってからカチャリとユニットを背負った。
「はい、行けますよ。隼さん?」
少女のユニットには日の丸、そして服には稲妻を模したマークが入っていた。
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「っあ…!?何事!?」
司令部からの無線で五二型はベッドから飛び起きる。
寝ぼけた頭を叩き起こすかのように自分の頬をビダンと叩くと無線に耳を当てる。
「…ナイトメア…っ!?マズい、早く行かなきゃ…!!」
まだ識別圏に完全に入ってはいないが、余裕は雀の涙ほどしかない。
すぐに着替えをするとまだ朝日が登り切っていない廊下を駆け出そうとする。
「早く行かないと…っ!?」
しかし寝起きの身体ですぐに走ろうとしたためにふらついて崩れそうになる。
だが足で踏ん張って立て直し、急いでユニット室に駆け込む。
「あっ五二!大丈夫?」
ユニット室に入ると二一型の姿が五二型の瞳に飛び込んでくる。
「もちろんだよ二一姉さん!」
五二型はすぐに返事をするが、少しの焦りを隠せなかった。
だが焦りを抑える時間の余裕すら今はない。
すぐにユニットを装着すると滑走路に急ぐ。
滑走路から司令塔を見上げると無線が入る。
『準備出来次第に順次発進せよ。』
その指令を聞いて二人はすぐに滑走路を飛び出した。
零戦特有の失速速度の低さが作用して一瞬で脚が地面を離れる。
微かに日が出ている最中、そんなことも気にする暇もなく海側に進路をとる。
遥か遠くのナイトメアたちを狙うように1秒ごとに上昇していく。
ユニットが零戦の華奢な身体を重力に反するようにどんどん押し上げていく。
雲は厚く視界は遮られども。
時間が過ぎていくごとに雲を掻き分ける。
日もまたはっきり明けた。
そうすると二人の視界がどんどんと開けてくる。
その瞬間に圧倒的に自軍より多いナイトメアの影が見える。
「っ…!!」
五二型の手が思わず震える。
だが、二一型には見えていたのだ。
上空にはまた違う影が、ナイトメアを狙っているのを。
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上には、隼とあの少女がいた。
「早めに上がってきておいて正解だったわね…ねぇ雷電?」
隼が下を眺めてそう呟いた。
「そうですねぇ…一撃離脱の方が得意だし、固まってくれてると助かるなぁ。」
少女、局地戦闘機“雷電”は答えるように呟いた。
その言葉を聞いて隼はフッと笑う。
「じゃ、ここからはご自由にって感じ?」
「そうしましょうか。」
そう二人が会話した直後、雷電が後ろから水に飛び込むように急降下し始めた。
どんどんと速度を増していったその瞬間にナイトメアの影が見える。
「あともうちょっと…!」
雷電が静かに機銃を構え、狙いを定める。
そして、一気に打ち込んでいく。
大きな音を立てて1機のナイトメアがドンっと崩れる。
雷電はその勢いのままでまた上昇を始める。
その光景を横目に隼はすれ違いざまに12.7mmをナイトメアに打ち込んでいく。
ナイトメアが後ろを向こうとした時には、隼はもう後ろに回り込んでいた。
「…遅いよ。」
12.7mmを打ち込んだら降下して一気に加速して振り切る。
だがナイトメアからは執拗に機銃弾が飛んでくる。
隼を追おうとして機首を下げたその瞬間、12.7mmの弾が炸裂した。
「OK間に合った!」
F6Fがナイトメアの編隊に飛び込んでくると、さらにナイトメアに弾が刺さる。
空戦範囲外からスピードを上げた二人が突っ込んでくる。
「これからはこっちの番!」
五二型が20mm機銃弾を身体を翻しながら打ち込んでいく。
「お〜!ZEROやるじゃん?じゃ…負けてられないね!」
F6Fはそう意気込んで先陣を切る。
ナイトメアの真正面に出たと思うと機銃を発射。すると一気に爆炎を上げて墜ちていく。
そんなF6Fを見て感化されたのか、F4Uが敵機編隊の後ろに回り込む。
「Checkmate。墜ちてください。」
ナイトメアはよけきれず被弾するとバランスを崩して墜ちて行った。
そんなF4Uの後ろに一機、ナイトメアが迫る。
だが、油断とはふとした瞬間に訪れるものなのだ。
ナイトメアの横っ腹に20mmと12.7mmがドカンと打ち込まれる。
「よーし、行っちゃおっか?」
「もー…調子いいんだから…」
二一型はF4Fの言葉に呆れ混じりだが返事をした。
そんな中でも、雷電はまたもや上から襲いかかり逃さない。
一撃離脱を徹底して行うことで追い付かせないのだ。
大きな爆撃機はどんどんと墜ちていくが、戦闘機はそうもいかない。
五二型は3機のナイトメアを引きつけてた。
背後からたくさんの機銃弾が放たれてくる。
「っ…!!」
ナイトメアの機銃弾が五二型の腕を掠める。五二型の顔が歪む。
だがその一瞬で五二型はフラップを広げて空気抵抗を上げると一気に減速。
ひらひらと身体が勝手に捻るのを抑えながらすぐに体勢を整えると20mmをナイトメアに叩き込んでいく。
F6Fとの模擬戦で見せた木の葉落としを実際に使って見せたのだ。
それを見た隼はぐるりと回って牽制がてら機銃を撃つ。
「もう、無茶なことして…!」
上昇してから隼が援護につく。
「っ…すみません隼さん…」
五二型が軽く謝る。
「いい、そんなこと後で言ってもらえるから…」
隼がそう言うと五二型と隼は並んで飛ぶ。
そんな中でもナイトメアが機銃弾を打ち込んでくる。
隼は機銃を構えたが、明らかに二人は避けきれない距離だった。
だがそこに一つ、誰かの影があったのだ。
「っ…危ない!」
五二型の目の前には、二一型が庇うように割り込んでいた。
「姉さん!!」
7話を見てくれてありがとうございます。作者です。
今まで公開されてるやつは週2投稿だったんですけど、今回から週1になります。本来これがデフォルトなんですよね。
また見てください。




