第十八話「運も実力のうち」
——数日後、整備室にて。
「おー、ちゃんと綺麗になってる!あんなにビチャビチャでボロボロだったのに…」
二一型は修理されたユニットを抱えて言った。
そんな二一型を見て、少女がコツコツと近寄ってくる。
「感謝してよ、大変だったんだし。一一とユニットがほぼ同じでよかったね。」
「ちゃんと感謝してますよ〜、九六先輩。」
九六艦戦はそう言われると、そっけないまま飴を口に放り込む。
「…第一線を退いた私はこれくらいしかできないし、ちゃんと使ってよ?」
「はい、ありがとうございます!」
嬉しそうにスタスタと去っていく二一型の後ろ姿を九六艦戦はジッと見つめる。
「…いいなぁ、まだまだ戦えるって。」
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ユニット室でもう一度、二一型はユニットを背負う。
「おぉー…久々のユニット!」
二一型は滑走路に足を踏み出す。
ふと、何かを察したように二一型が振り向く。
「お、来た?改ちゃん。」
「はい、来させていただきました。」
紫電改が二一型の目を見てはっきり言った。
すると無線機から声が聞こえてくる。
『ちょっ、試験飛行とかしなくていいの?』
その声は、五二型の声だった。
『ユニットの不調とか…あるかもだしさ、せめてなんか…』
「ま、いいの。その時はその時、それくらい割り切ってないと。」
そう無線機に返すと、無線の通信を切る。
まだ五二型が何か言いたそうだったが、二一型は無視して元に戻す。
「さ、やろっか!」
「なんかダメな気がするんですけど…??」
紫電改は困惑を隠せなかったが、スッと二一型の隣に並ぶ。
二一型は思い出したように無線をもう一回取り出す。
「離陸準備完了、発進許可求ム。」
『離陸準備完了了解。発進許可。』
司令塔からお決まりの言葉が返ってくる。
二一型は紫電改に目配せをして先に滑走路へ足を踏み出す。
そのまま二一型は駆け出して飛び立つ。
紫電改はそれを見上げてから、一歩一歩と滑走路を踏み出して飛び出した。
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高度5,000mに到達すると、二人は十分に距離をとってから旋回を開始した。
旋回性能は二一型の方が上、一瞬で後ろにつくかと思ったがそうは行かない。
紫電改も自動空戦フラップがユニットに搭載されている。確かに二一型よりも旋回性能は下回っているが、そらむすめの中ではかなりよく回る方だ。
なかなか二一型は後ろにつくことができない。
旋回による負荷が微妙にユニットを軋ませる。
二一型が一瞬で旋回方向を切り返す。
「よし…感覚も取ってきた!」
紫電改と対面になると二一型は上へ上へ逃げていく。
それを捉えるように、紫電改がしたから突き上げていく。
しかし、紫電改は数発撃つとすぐに反転して降下して速度を付けてから離脱していく。
「流石に引っかからないか…さすが…!」
二一型が失速で反転して降下する。
紫電改に射線を合わせようとするが、速度ですぐに避けられる。
「射線に入ったら終わり、確実に背後を取らないと…」
二一型が紫電改の後ろにつこうとする。
だが、紫電改はその瞬間に二一型の目の前から姿を消した。
二一型は目を見開いた。
「っあ!?木の葉落とし…っ!」
紫電改が自動空戦フラップを切り、着陸位置までおろして一瞬で後ろに回り込む。
「成功した…もっと攻めないと…」
紫電改が二一型の旋回に追従する。
二一型は右往左往に旋回して振り切ろうとするがなかなかそうは行かなかった。
紫電改はよくよく狙い、20mm機関銃に装填された模擬弾を発射する。
二一型のユニットの端に掠ると、二一型は意を決したように降下し始める。
降下は紫電改の方が素早いが、それも構わず二一型は急降下で逃げる。
カタカタと、ユニットが発しかけたその時。
紫電改の視界から二一型が消える。
二一型は降下速度を利用して一気に急上昇する。
「しまっ…!?」
紫電改は降下に釣られてそのまま二一型の下へ行ってしまったのだ。
二一型が一瞬のうちに反転する。
エンジン付近に20mm模擬弾を発射すると、ブザーが鳴り響いた。
「あれ…?」
二一型は周りを見渡す。
「…降参です、参りました。」
紫電改は両手を上に上げて、降伏の意思を伝えた。
二一型はふぅっと息を吐き、隣に並ぶ。
紫電改は二一型へ呟いた。
「とても、強かったです。私は到底敵いませんでした…やっぱり実力なんですかね…」
「いいや、そんな事なかったよ。」
二一型は紫電改の言葉に首を振った。
その二一型に紫電改は首を傾げる。
紫電改の仕草を見て、二一型は微笑んで言う。
「改ちゃんに後ろつかれた時、本当に焦っちゃってさ。実はあの時、20mm掠ってたんだよ?翼の端っこだったからブザーはならなかったけど、もうちょっと内側だったら負けてたと思うよ。」
二一型がそういうと、少しだけクスッと笑う
「…今回ばかりは運、実力なんかじゃないよ。」
その言葉を聞いた紫電改が首を振った。
「違うと思いますよ、先輩。」
「えぇ…?そんな事ないと思うけどなぁ」
二一型が首元に手を当てて否定する。
だが、紫電改がそのまま言葉を続ける。
「“運も実力のうち”と言いますし…結果的に、勝ってるじゃないですか。」
「…そうかな。じゃあ…そうかもね。」
二一型は紫電改に笑うと、飛行場へ降下していった。
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二一型はそっと足を地面につける。
しっかりと踏みつけると、滑走路の上で止まる。
「ふぅ〜…久しぶりに模擬空戦したな…」
ユニット室に入ると、そこに九六艦戦と五二型が待っていた。
「あ、先輩と五二…」
先に九六艦戦が口を開く。
「…テンション上がるのはわかるけど、無茶させ過ぎ。ユニットちょっと撓んでるし…」
「というか、姉さんさ…試験飛行もせずに模擬空戦って…」
五二型が苦言を呈すると、二一型は苦笑いしか出なかった。
二人の視線が二一型に刺さる。
「…まぁ、何もないから今回だけはいいよ。」
九六艦戦の言葉に、二一型は安堵したように息を吐いた。
18話を見てくださりありがとうございます。作者です。
なんか…空戦もういいとか言っときながら普通に模擬空戦書いてますね…
あ、でもナイトメアの〜だからノーカンか…?まぁ、また見てください。




