第十六話「紫電一閃」
ヒュンと過ぎる、紫の稲妻のような瞳が過ぎていく。
その少女は魔法のように一瞬で曲がると、ドドンと機銃弾を撃ち込んでいく。
1機、また1機を仕留めていく。すると離脱していく。
上昇していって爆撃機の上に陣取ると急降下し始めた。
「800、750、700、650…600!!」
爆撃機との距離600メートル。機関銃弾が丁度交差する距離。
照準の真ん中にとらえたナイトメアを目掛けて、少女は引き金を引いた。
銃座、爆弾倉、左翼と左エンジンをなぞるように穴だらけにし、左翼の後ろギリギリを高速で下に通り抜ける。
そのまま降下の勢いでナイトメアを振り切る。
ユニットの機関銃には、20mm弾が装填されていた。
一瞬の間に2機のナイトメアの後ろについてから1機を銃で穿つと、大振りに旋回を仕掛けて、もう1機のナイトメアを引き付ける。
ユニットのフラップが瞬時に展開されると風に乗るようにナイトメアの射程から消える。
まじまじと引きつけてから一瞬で後ろへ回ってナイトメアを撃ち抜いていく。
ナイトメアはモロに20mm機銃弾を喰らってしまって垂直尾翼が泣き別れとなり、黒煙を吹きながら墜ちていった。
「ここからどうやったら極防を守れるでしょうか…」
その少女がそんなことを考えながらもやるしかないと身体を旋回させたときだった。
少女の真後ろに敵機がつこうとしていた。
「しまっ…!?」
そう思った瞬間、少女はユニットのフラップを展開したかと思うと、いきなり少女が急旋回で曲がって消える。
一瞬で後ろに陣取るとナイトメアに機銃弾が飛んで行く。
そのナイトメアは金属片と煙をまき散らしながら墜ちて行った。
「ふぅ…っと、危ないところだった……」
一息吐くように言葉を紡ぐと、すぐに周りを警戒するように旋回し始める。
すると、敵機の影が見当たらないと少女は理解した。
「いない…逃げたのか…どうなんだろう…?」
その瞬間に、無線機に司令部からの通信が入った。
『こちら極東防衛総合学園司令部。敵編隊の撤退を確認した、こちらも撤退せよ。要救助者は救助完了したとのこと、可能なものは哨戒後帰還せよ。』
その言葉を聞いて、少女は無線機に呟く。
「了解しました。こちら紫電二一型、帰還します。」
紫の瞳の少女——紫電二一型こと局地戦闘機“紫電改”は、司令部の無線へ言葉を返した。
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疾風はふと、どこかで目を覚ました。
「…あれ…?ここどこ…?」
見慣れない天井に困惑して、キョロキョロと左右を見渡す。
「あ、起きた〜。ここは医務室だよ?」
その声がした方向へグンっと振り向くと、そこにはF6Fの姿があった。
「初めましてだね、Frank!」
「ヘ、ヘルキャット…!?」
疾風は少しだけ自分の身をF6Fから遠ざけた。
「え〜ひどいなぁ…そんなに私のこと嫌い〜?」
F6Fがおちょくるように少し笑う。
その表情に、疾風の顔が少しだけ緩む。
「…ごめん。…ね、ねぇ。アンタも、撃墜されたの?」
「ん〜いや…まぁ撃墜されかけというかなんというか…難しいなぁ。」
F6Fが悩むように手を顎に当てた。
その動作と言葉に疾風は首を傾げる。
「撃墜されかけって…どう言う感じなの?」
その疾風の疑問にF6Fは答える。
「いや〜…まぁナイトメアを倒してたんだけどさ、ユニット目掛けていきなり突っ込んできたナイトメアがいてね、それを喰らっちゃって。パラシュートも開かないって時にZEROとお姉ちゃんに助けて貰ったんだ〜」
その説明を聞いて疾風は意外そうな顔をする。
「…ん?その言い方じゃ自分は怪我してないみたいに聞こえるけど…」
疾風の言葉にF6Fはこくりと頷いた。
「うん。私は一切怪我してないよ。ユニットが壊れちゃっただけだよ〜?」
「え、じゃあなんで医務室に…」
F6Fのその言い方に困惑した疾風は思わず聞き返す。
そんな疾風の声にF6Fは呆れたように言い返す。
「いやさぁ〜?ZEROに医務室に連れてかれて、しかも私ちゃんと大丈夫って言ったのに言い包められてさ…ちゃんと確認させたのにさ。あ〜も〜exaggerating!」
F6Fの言葉に反応するように、医務室の扉が開いた。
「もう。あんまり騒いではいけませんよ、ヘルキャットさん?」
二式大艇が優しい口調でF6Fを収める。
F6Fはその言葉に口を尖らせて静かに言う。
「む〜〜…わかってるけどさぁ…」
「確かに見た目上の怪我はないですけど…でも、それだけ心配されてるんじゃないでしょうか?じゃなきゃ、あんな無茶なことをして助けたりしないと思いますよ?」
二式大艇がにこりと微笑んでそう言った。
F6Fが二式大艇の言葉を聞いて照れくさそうに頭を掻く。
「…そうかなぁ…そういうものなのかな…」
「えぇ。そういうものなんだと思いますよ?」
F6Fの言葉に二式大艇が頷き返す。
そしてふと思い出したように、F6Fが二人に問う。
「って、そういえばさぁ〜…あの子誰なの?」
「あの子…とは?」
二式大艇が首を傾げて聞き返す。
「あのーあの子!ZEROの隣を通り過ぎていった瞳が紫の子!」
F6Fが記憶の中から引っ張り出してきたであろう、少女の特徴を伝える。
「うーん…紫の瞳…?」
疾風は頭にハテナを浮かべて何かを思い出そうとする。
すると、医務室の中に紫電が入ってくる。
「こんにちは〜、体調は大丈夫ですか?」
「あ、紫の瞳といえば紫電さんですけど…」
紫電の顔を見て二式大艇が答える。
しかし、F6Fは紫電の顔をまじまじと見て目を細める。
「いや〜…Georgeじゃないと思うんだよなぁ。確かに紫だけど、私が見た瞳の紫はもっと濃い紫だったような…」
その言葉を聞いて、紫電が口を開く。
「私と似たような紫の目なら、改ちゃんかもしれませんよ〜?」
「…カイちゃん?」
紫電のいったことに疾風が聞き返す。
紫電は頷いてから話し始める。
「私の妹なんですよ〜。紫電改、って言われてるので〜改ちゃんって呼んでるんです。」
「あ、多分その子だよ!」
F6Fが目を見開いて紫電に返答した。
紫電は嬉しそうに笑って言う。
「やっぱりですか?よかったぁ…」
すると、不意に医務室の扉が開く。
「撃墜されたって聞いたので、少し覗いてみましたが…意外と元気そうですね。」
F4Uが踏み入れると、F6Fが答える。
「お、コルセアー!って、別に撃墜されてないよーだ!」
F6FはF4Uへムッとして言い返した。
ども。十六話を見てくれてありがとうございます、作者です。
五話分の戦闘シーンをしたいだけで始まった話たちがようやっと収まりました。
紫電改も出したことだし、しばらく空戦はいいや本当に…また読んでください。




